へどろから見た持続可能な世界ー温暖化に及ぼす農業の影響
パキスタンでは今夏、例年の8倍強もの雨が降り、国土の1/3が水没したといわれます。海抜が低く平地が広がっているため、排水したくても排水する場所がなく、未だに雨水が溜まったままの状態が続いているそうです。こうした大規模な浸水被害は他の東南アジア、南米諸国でも起きています。日本も例外ではなく、最近は「線状降水帯」という聞きなれない現象が頻発するようになり、浸水、土砂崩れなどがあちこちで起きるようになっています。
こうした異常気象には温暖化の影響が大きいとされ、化石燃料の削減、再生可能エネルギーへの転換が官民挙げて進められていますが、ロシアのウクライナ侵攻の影響もあり、なかなか思うようにことは進まず、原子力依存にまた拍車がかかりそうです。
ところで温暖化ガスの発生に、農業が大きく関わっていることをご存じでしょうか? 実は人類が農業を始める前は、土壌中に2兆トンもの炭素が貯蔵されていたそうです。草木が生え、成長し、枯死することを繰り返すなかで、空気中の炭素が土壌中に蓄えられていったのです。つまり温暖化の逆の現象です。しかし人類が農業を始め、土地を耕すようになると、土壌中の炭素は酸化され、大気中に放出されるようになり、これまでに5,000億トンもの炭素が土壌中から失われてしまったそうです。この量は人類がこれまでに燃やした化石燃料(温暖化ガスの主要発生源)の炭素量2,500億トンの2倍、はるかに多い量なのです。
ゼオライトによる生ごみの発酵分解では、写真(上)に示すような細かく分解した部分と、(下)に示すような分解されづらい食物繊維(セルロースという炭水化物)の多い部分に分かれます。私たちはこの食物繊維の多い部分を元肥として大切に使っていますが、これは実は前述の炭素を土壌中に戻す、温暖化対策につながる行為でもあります。ただし作物を育てるごとに耕したのでは、いずれこの食物繊維も酸化され、炭素を大気中に放出することになります。いま世界では不耕起栽培が注目されていますが、私たちも畑を耕さず、炭素を土壌中に留めるようにすることで、温暖化対策に貢献する農業を志向せざるを得ないところにきているといえます。
細かく分解した部分 |
分解しづらい部分 |