2017年8月29日火曜日

新たなヒートポンプ実験装置

 阿蘇海のへどろのすばらしい吸湿力を使ってヒートポンプ(熱の汲出し/移動ポンプ)が作れることは、これまで何度も述べてきました。

 そのヒートポンプの新たな実験装置(兼展示用デモ機)作りに対し、この春、夏原グラントの助成金が得られ、以来、装置作りに没頭してきました。装置そのものは下の写真のように、太陽熱集熱板とへどろ容器をつないだだけの極めて単純なものですが、ただ真空状態で稼働させるため、そこに装置作りの難しさがあり、すったもんだの末に8月の初め、やっと装置を完成させることが出来ました。真空技術というのは経験を積まないとかなりハードルが高く、しかも加工には業者の力を借りなければならないところがあり、そうした業者をこの丹後地域で探すのに苦労したからです。
ヒートポンプの装置

 実験は8月中頃からスタートさせました。しかし肝心の温度計の液晶が壊れていて温度測定が不可能で、頭を抱えてしまいました。実験費が底をつき、温度計を買うゆとりなど全くなかったからです。たまたま海洋高校の先生と別件で話をしていたところ、学校に使用していない温度計のあることが分かり、急きょその温度計を借りることで実験を始めることが出来ました。

 いざ実験を始めると、なかなか思うようなデータが得られません。以前の装置であれば、コックを開いて太陽熱集熱板の蒸気をへどろ吸着材に導いてやれば、集熱板の温度がみるみる10~20℃下がったのが、ほとんど変わらないか、下がっても5℃程度しか下がらないのです。しかし実験とはそうしたもので、装置が変わると(実験の切り口が変わると)様相が一変し、逆にそうしたことが新たな発見につながるのです。そこで辛抱強く何度も実験を繰り返すなかで、新たに作った太陽熱集熱板に不具合がありそうなことに気がつきました。詳しいことは省きますが、いまはその不具合を直すため必死に業者を探しているところです。
真空吸引装置

 ところでいまヒートポンプといえば、エアコンとか冷蔵庫に使われているものが一般的です。非常に効率が良いとはいっても多くの電気を使用します。一方、私たちが開発を進めている「へどろヒートポンプ」は、例えばビルディングや家の屋根、壁に注がれる太陽熱をお湯として回収しようとするもので、電気をほとんど使いません。しかも建物そのものの温度を下げればエアコンは不要になり、ヒートアイランド現象の解消につながります。また、各家庭の消費エネルギーの1/3を占める給湯用エネルギーの大幅な削減につながります。

 こうした発想は全く新しい概念で、なかなか理解してもらえません。しかし今回作った装置は真空状態がばっちり確保でき、しかもコンパクトで持ち運びが簡単なので、一刻も早く本来のデータが得られるようにし、新たな概念のヒートポンプデモ機として多くの人に知っていただきたいと考えています。