2016年8月30日火曜日

宮津方式

 いまから6~7年前になりますが、京都府の委託事業「宮津エコの環構築研究事業」に取り組みました。丁度、ゼオライトを使った生ごみ発酵処理法(宮津方式)を開発したばかりのころで、「たいぞう君」という生ごみ処理機を全部で22台作成し、市内の旅館、料理屋、農家などに置かせてもらい、月に2トン近い生ごみを処理しました。そしてできた発酵肥料を集めてある専業農家で野菜を作ってもらい、その野菜を市内で販売消費する「エコの環」を検討しました。
 
撹拌機をつけたたいぞう君
しかし①生ごみ処理は個人差が大きく、また継続的な処理が難しいこと、②専業農家による無農薬野菜の栽培は難しいこと、③「エコの環」は小さな環の方が回しやすいことなどが分かり、事業終了後の2012年度からは、いまのような地域の高齢者の力を借りた「エコの環」づくりに取り組み始めました。そして22台のたいぞう君の内、その後使われなくなったもの(約14台)を少しづつ引き上げ、それに耕運機の羽根で撹拌機を装着し、再利用するようにしてきました。

 今年も放置されていた2台を引き上げて改造し、たいぞう君は全部で7台になりました。するとそれを納める小屋の拡張が必要となり、盆明けの暑いさなかに汗でドロドロになりながら、その拡張工事をしました。
小屋の拡張作業

 ところで私たちの生ごみ発酵処理法(宮津方式)では、発酵に「ゼオライト」を使います。ゼオライトってなに? なぜゼオライトを使うの? と疑問に思われる方も多いので、簡単にゼオライトについて説明させて頂きます。

 ゼオライトというのは粘土の一種で、その埋蔵量と質において日本は、世界でも抜群の国といえます。ゼオライトの優れた性質としては表面が強くマイナスに帯電していて、プラスイオンを非常に吸着し易いことと、多孔質で臭気性ガスや水蒸気、空気などを吸着し易いことがあります。福島第一原発事故ではセシウム(Cs+)の吸着除去に利用されました。こうした性質は土壌微生物が繁殖しやすい、肥料成分を吸着しやすいといったことにも威力を発揮するため、発酵材としては最高の資材と考えられ、私たちが生ごみの発酵に利用する理由であります。実際、ゼオライトを畑に入れると、化学肥料や農薬で傷んだ畑の土が土壌微生物が繁殖しやすい生きた土に若返り、肥料成分の雨や風による流失が抑えられることから、政令指定の土壌改良資材にもなっています。しかし生ごみの発酵処理に利用しているのは多分私たちだけであり、「宮津方式」と呼んでいる理由であります。

 私たちの「エコの環」野菜は甘くておいしいとよくいわれます。植物は根から栄養分を吸収して成長しますが、実はそのとき根の先にいる土壌微生物の働き(栄養分の橋渡し)が重要で、土壌微生物がいっぱいいる生きた土でこそ、元気で美味しい野菜は育つのです。ゼオライトにより「エコの環」野菜の畑には土壌微生物と生ごみからのミネラル分がいっぱいあり、これが野菜がおいしい理由だと考えています。なお、このゼオライトは阿蘇海のへどろから作ることが可能であり、そもそもはそれが生ごみの発酵にゼオライトを使い始めた第一の理由です。





2016年8月22日月曜日

またまた獣害事件!

ニンジン畑
栽培者から出荷された「エコの環」野菜の販売準備をしていると、一緒に畑仕事をしている人から、「また、畑がやられた。」と連絡がありました。あとで出かけてみると、出荷できるばかりに成長していたニンジンが、見事なほどに全部食べられていました。私たちの畑のニンジンは甘くておいしいと好評であり、出荷を楽しみにしていただけに、ショックというか強い脱力感に襲われました。この畑はこれまでにも3度ほど獣に荒らされ、その都度いろいろ防御対策をしてきたのですが、まさにイタチごっこというか、これだけ何度も荒らされると、気力も失せてしまいます。


害にあったニンジン畑
これまでは相手をシカと見て、もっぱらネットやビニール紐・針金を高く張る対策をしてきました。しかし今回の荒らされようはどうもシカではなく、そこで畑の周りを注意して調べると、一か所、鉄筋防御柵の下の方が折り曲げられ、すき間の出きている所が見つかりました。どうもそこから潜って入ったようで、そうなるとイノシシということになりますが、つい1ヶ月ほど前、近所に小熊が現れたこともあり、小熊の可能性も否定できません。いずれにしてもイノシシやクマが相手では、鉄筋防御柵もあまり役に立たず、どうしたものかと思案していると、すぐ横をサルがゆうゆうと通っていきました。我が家から200mも離れていない場所ですが、まるで野生動物園さながらの状況で、人口減少の影響か、野生動物がジワリジワリと私たちの周りに、押しよせて来つつあるのを感じます。
壊された鉄筋防御柵




2016年8月1日月曜日

50℃洗い

 最近、新聞やテレビで「酵素」に関する話題や広告をよく目にします。酵素というと私たちはすぐに「消化酵素」を思い浮かべます。しかし酵素には「代謝酵素」というものもあり、吸収した栄養を細胞内で有効活用したり、毒素を排出したり、身体の悪い部分を修復したり、免疫力を高めたり、まるで身体の中の小人のように、あらゆる生命維持活動に関わっています。しかしこの酵素も病気になったり歳を取ると、体内で作る力が弱まり、身体の活動に対し酵素を作るのが追いつかなくなります。病気になると少食になったり、消化しやすいものしか食べられないのは、体内で作る酵素を免疫力や自然治癒力の方に回そうとして、消化酵素が不足するからなのだそうです。だから体外から酵素が補給できれば、その分体内で作る仕事が軽減され、元気に活動できるというわけです。
 
 では酵素は何に含まれているかというと、生野菜や果物、生の肉や魚など、「新鮮な生の食べもの」と「発酵食品」です。これらには動・植物が生きるのに必要な酵素がいっぱい詰まっているのです。しかし酵素はタンパク質からできており、タンパク質は熱に弱く変質しやすいので、加熱した食べ物ばかりでは酵素は補給できません。だから毎朝の野菜・果物のジュースなどが、酵素を摂るのに非常に効果的と言えるのです。

ある酵素の活性変化
ところで右図はある酵素の活性変化を示しています。酵素の活性は温度と共に大きく上昇し、しかしある温度を過ぎるとタンパク質が壊れ、失活することが分かります。こうした酵素の性質を上手く利用したものに、「50℃洗い」というのがあるそうです。活性限界ギリギリの50℃ほどのお湯に、しおれた野菜を1~2分浸けて出しておくと、酵素の働きでみるみるシャキシャキした状態になり、美味しくなるそうです。私も一度試してみましたが、そのときは使用したレタスがまだ元気が良かったせいか、はっきりした違いは認められませんでした。今度、もっと萎れた野菜を使って実験してみようと思っています。こうした効果は魚や肉にもあるそうです。
 
 また、健康のためには身体は冷やさないように、常に温めるようにと言いますが、この図を見れば高体温の方が酵素の活性が高まり、病気に対する自然治癒力が増すことが分かります。特に「がん細胞」は低温を好むそうですから、運動、食事、お風呂などで体温を上げることは、がんを防ぐのに非常に効果的だと言えます。

 根菜を中心とした野菜のうまみを引き出すには、やはりこの酵素の働きをうまく利用するのがコツだそうです。野菜を水から煮立てると、お湯の温度が37~40℃の間に酵素が働き、野菜のでんぷん質を糖に変化させるので甘みがすごく出るそうです。こうした調理法は味噌汁を始め、多くの料理に利用できそうです。

滝野清;酵素と熱の関係、奈良からの便りNo.181、2016
南雲吉則;空腹が生き方を教えてくれる、サンマーク出版、2013