2020年6月14日日曜日

トマトの赤色

 先日の朝日新聞の天声人語に、トマトが赤く熟すことについて次のように書いてありました。

 あの鮮やかな色は、トマトにとっては紫外線対策なのだと、田中修著「植物はすごい 七不思議篇」で学んだ。紫外線は活性酵素を生み、植物の体にも悪さをする。そんな酵素を消すため、皮や果肉にリコピンとカロテンという色素を作ることが彩りをもたらすのだという。あの健康的な赤は、強い太陽の日差しとたたかっている証なのか。そう思うと、いじらしくなる。

 読んでいる途中、「えッ! 活性酵素(かっせいこうそ)? なんだそりゃ?」 と思いつつ、「ファイトケミカルの話だな。」とそちらに関心がいき、読み進めながら「なぜファイトケミカルという言葉を出さないのだろ? 私たちの身体にとっても、とても有用な物質だとなぜ書かないのだろ?」と内容にいささか不満を感じながら、活性酵素のことは忘れてしまいました。
 
 すると翌日の新聞だったか修正記事が載り、「「活性酵素」は「活性酸素」の誤りで、著者が参考著書から誤って転記しました。」とありました。天声人語を書くような博覧、多識な人でも、こんな誤りをするのだと少し安心しました。


 ファイトケミカルについてはこれまでも何度か触れました。植物は動物のように逃げることができないため、過酷な自然環境のなか自己防衛のため、色とか臭い、アク、渋み、苦みといった植物化合物で身を守るようになったといわれます。
 
 私たちの体内では、細菌やウィルスが侵入すると活性酸素が発生し、これら外敵をやっつけてくれます。活性酸素はこの他にも、体内に化学物質が入った場合でも発生します。農薬、食品添加物、タバコの煙、クスリ、排気ガス、大気汚染物質などです。過度なストレスによっても発生するといわれます。仕事・人間関係のストレス、激しい運動などです。また、紫外線や放射線を浴びた場合にも発生します。晴れた日に布団を干したり衣類の虫干しをするのは、雑菌、ダニに活性酸素を発生させ、自滅させるためです。がんの放射線治療はがん組織に活性酸素を発生させ、それでがん細胞を退治する治療法です。


 このようにいろいろな時に体内に発生する活性酸素ですが、一方でその毒性を消す酵素(SOD)も体内には存在し、活性酸素の発生量が適度であれば余剰分をその酵素が消去してくれるそうです。しかし活性酸素が必要量以上に作られたり、酵素を作る能力が年齢とともに衰えてくると、余剰の活性酸素が正常な細胞や遺伝子を傷つけるようになり、老化や万病の元になるといいます。

 ここで救いとなるのが、野菜や果物が有するファイトケミカル(抗酸化物質)です。政府も健康維持のため、一日350グラム以上の野菜と200グラム以上の果物を食べることを推奨していますが、熊本大の前田名誉教授は、「旬の野菜を4~5種類、毎日煮込んで食べておれば、確実にがんの予防になり、新型コロナウィルスに感染しても軽傷ですむ。」と言い切っておられます。