2019年4月27日土曜日

「エコの環」で温暖化対策?

 先日ある会合に出席したとき、会場にあった農水省のパンフレットが目に留まりました。「地球規模で考える気候変動と農山漁村」という国際シンポジウムの開催を告げるものでした。

 パンフレットを手にした時、裏面に書かれた「気候変動の下での持続的な食料生産は人類共通の課題です。気候変動に適応して生産量を増大し、かつ温室効果ガスを減らさなければなりません。どうやって?」という文面、また分科会のテーマの「土壌への炭素貯留」といった言葉が非常に気にかかりました。

 そこで帰って早速、インターネットでそうしたキーワードについて調べ、以下のようなことを知りました。

🔻地球を取り巻く大気の厚さは10km、対して土(土壌)の厚さは0~1mしかない。しかしそこにある炭素(CO2)の量は、それぞれ7,500億トン、1兆5,000億トンと、土壌中の炭素量が圧倒的に多く、だからそのわずかな増減が大気中の炭素量(CO2)に大きな影響を及ぼす。

🔻もともと土壌中には2兆トンの炭素があったが、人類が作物生産のために森林を切り拓いたり、構造物を作るために草地を無くしたりして、5,000億トンもの土壌炭素を失った。この量は産業革命後、化石燃料の使用で増えた炭素量2,500億トンよりも大きい。だから適切な土壌管理をすれば元に戻せる可能性がある。

🔻方法としてたい肥などの有機物を土壌中に投入し、不耕起、省耕起栽培などで土壌からの分解損失を減らせば、土壌は炭素の大きな吸収源として気候変動を緩和する大きな可能性を持つ。

🔻「4パーミルイニシアチブ」というプロジェクトがフランスから始まっている。これは全世界の土壌中の炭素量を毎年、0.4%ずつ増加させれば、化石燃料使用による大気中のCO2の上昇をゼロに抑えられるという計算に基ずく運動である。


 私たちは高齢者事業「エコの環」で、生ごみたい肥を使って野菜作りを行っていますが、たい肥を畑に投入し始めて1~2年すると、畑の土がだんだんと黒く変色するのが分かります。生ごみの中の食物繊維(セルロース)は微生物に分解されづらく、それが地力を増進させる黒い「腐食」というものに変わるからです。そして土壌はだんだんと肥沃で、健全なものに生まれ変わっていくのですが、この腐食が大気中のCO2を固定化(黒い炭素)して、温暖化対策、気候変動対策になっているとは思いもしませんでした。

 日本の農業は化学肥料の多投入で、農地の大半が有機物の消耗や肥沃度低下(土壌炭素喪失)の問題を抱えているそうです。一方で日本の食料廃棄量は世界のトップクラスで、しかもそのほとんどを焼却処理しているため(たい肥化率;先進34ヶ国中29位)、せっかくの有機物を土に戻すことなく大気中に放出しています。その結果として、かつて環境先進国を自負していた日本の現状は、

       環境対策順位 (60ヶ国中)     CO2削減率 (主要国)
       温室効果ガス対策  ;47位       イギリス;27%
       再生可能エネルギー;48位        ドイツ   ;13%
       省エネ      ;36位       アメリカ ; 8%
       気候変動政策     ;44位           日本  ;4.8%

と環境後進国に陥っています。やはり生ごみは私たちが進める「エコの環」のように、土に戻してやるべきではないでしょうか。そうすれば失われた農地の地力は回復し、温暖化対策、気候変動対策として地球を救うことができます。そして日本は再び環境先進国になれるのです。すごく勇気をもらった気がします。