2013年8月26日月曜日

減塩レシピ

 国立循環器病研究センターの病院食が大変な評判になっているようです。一食あたりの塩分が2グラム程度で、1日合計しても6グラム未満と厚労省が勧める摂取量(1日10グラム以下)を十分に満たしているうえに、素材の旨みを引き出す京料理の手法を取り入れた食事は、入院患者さん達の高い評価を受け、退院後もぜひ食べたいという要望が強く、それが減塩レシピ(かるしおレシピ)の本となり、一般家庭用・業務用レシピの配信サービスとなり、百貨店での弁当販売になったと云います。病院側もこれを一過性のブームに終わらせないため、地域の特産品を使った「ご当地かるしおレシピ」のコンテストを催すと云いますから、スゴイ熱気です。
 こうした減塩の話しを聞くとき、私自身はいつも非常に複雑な気持ちになります。上杉謙信が武田信玄に送った塩の話しを持ち出すまでもなく、塩は我々が生きるうえで絶対に必要不可欠のものであり、昔の日本人は味噌・しょうゆ・漬けものなどから、一日に30グラム以上もの塩分を摂っていたと云われ、減塩を勧める現代医学に何か割り切れないものを感じるからです。病院で点滴に使われるリンゲル液は、カエルから摘出した心臓を塩化ナトリウム単独の液に漬けると拍動が直ぐ止まるのに対し、塩化カルシウムや塩化カリウムを加えた液に漬けると、長く活動を続けることから発見されたと云います。つまり塩化ナトリウム単独では有害でも、複数の塩類が混ざるとお互いの拮抗作用が働き、有益に働くようになるのです。また、植物は塩化ナトリウム単独の溶液中では成長できませんが、この溶液に塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化マグネシウムなどを加えてゆくと、段々と成長が良くなり、海水を麦、エンドウ、ハクサイ、玉ねぎなどにかけた実験では、どれも枯れるどころか健全な成長を示し、甘みがぐっと増したと云います。こうした事実は植物にしろ動物にしろ、海から上陸した歴史を考えれば当然のことかもしれません。しかしいま店頭で売られている「食塩」は、イオン交換膜を使って精製した純度99%以上の「塩化ナトリウム」という化学物質であり、「天然の塩」とは全く異質のものでありながら、同じ「塩」という言葉で呼ぶところに問題があるように思います。桜沢如一が世界に広めたマクロビオティック(食事療法)の流れをくむ人たちは、みな健康維持のために塩(自然塩)を十分に摂ることを勧めています。塩は身体の生理機能を高めるもので、十分に摂らないと脳神経系や各臓器が十分に働かないため活力が生まれず、貧血、低体温、便秘症などになるからです。
そもそも「塩分過多」を云い始めたのは欧米の研究者たちだったそうです。というのは肉はナトリウムの塊りであり、肉食の欧米人は塩分過多、高血圧になりやすいからです。したがって肉食を控えるかカリウムの多い野菜を多く食べれば、むしろナトリウムは不足がちになり、塩分(自然塩)をしっかり補給する必要があるのです。自然塩は高価という問題はありますが、医療の立場からはいま販売されている「食塩」を問題視するべきであり、減塩レシピを考えるより野菜を中心にした食事で、自然塩をしっかり摂るレシピを考えるべきではないでしょうか。結局その方が医療費も安上がりになると思うのですが。

2013年8月17日土曜日

複合汚染

 いま私たちの身の周りには、プラスティックや洗剤、医薬品など化学製品があふれています。また、農作物、食べ物に関しても、化学肥料や農薬、あるいは食品添加物といった化学物質が非常に多く使用されています。もちろんこれら化学物質に対しては環境や健康を守るため、それぞれの法律で特定の化学物質ごとに安全基準が設けられています。しかし規制の数には当然限りがあり、しかも出回る化学物質は100,000種類にも及ぶと云われ、それぞれの相互作用もよく分からないなか、果たしてこれで我々の環境や健康が守れるのか、かねがね心配していましたが、新聞報道によるといま工場などから出る排水に対し、それが生態系にとって安全かどうか、生き物(ミジンコ、藻類、魚類など)を使って調べる手法「WET」(Whole Effluent Toxicity;全排水毒性)が広がりつつあるのだそうです。排水のサンプル瓶の中にミジンコを入れ、それを毎日観察してミジンコが死んでいないか、あるいは何匹子を産んだかを調べることで、排水が安全かどうか、どの程度の濃度で影響が出るかが分かるのだそうです。これなら現在排出規制のない化学物質の影響や、化学物質同士の相互作用、未知の化学物質の影響なども早期に検出でき、環境汚染に対し極めて直接的な検査結果が得られると期待されます。
化学物質の非常に怖い問題点の一つに、製造時に派生する不純物があります。不純物は量が少ないためほとんど注目されず、それがどんなに危険かは問題が起きてからでないと分からないからです。丁度枯葉剤に混じっていたダイオキシンのようなものです。だからこうした手法による検査は非常に有効と云えます。できればこのWET法が食品添加物の検査にも早期に導入できないものかと考えます。いまや食品添加物はほとんどの食品に添加され、我々の健康にとってもっとも直接的影響のある化学物質だからであり、法律では個々の化学物質の規制はできても、その複合汚染(相互作用)となるとまったく影響が分かっていないからです。

2013年8月2日金曜日

お墓掃除

 お盆が近づき家内と7月末から、家内のオヤジさんの墓掃除に出かけています。田舎とはいえオヤジさんの墓は大きく草取りが大変で、毎回1.5時間ほどの時間をかけ4~5日かかるのと、お盆には二つの親戚筋(これを巻(マキ)と云います)の集合墓地の一斉清掃が入ることから、7月末から掃除にかからないと間に合わないのです。お墓には中央の墓石を囲むように10mm径ほどの砕石が、またその一段下にそれを囲むようにやはり10mm径ほどの玉石が敷き詰められており、お墓を建立したころ(いまから30年前)は、草取りはほとんどする必要がなかったように覚えています。それがいつのころからか敷石の下に土が増え、墓掃除と云えば草取りを意味するようになり、彼岸・お盆と雑草との戦いを続けています。
 草取りにかかると家内とはほとんど口を利くこともなく、草取りに集中します。というのは乱雑に雑草を引き抜くと、根っこが大量の敷石を抱き込み、そのまま捨てたのでは敷石が直ぐになくなってしまうからです。家内は手鍬を使って草抜きをします。この方がスピードは速いのですが土が飛び散って敷石を汚し、石のロスも大きくなります(注意しますが聞きません)。そこで一本一本注意しながら草を抜くのですが、それでも根っこが敷石を巻き込むことがあり、そのときは土を落とさないように石だけを指で揉み落とします。石には原形に近いものもありますが、大半は5mm径かそれ以下になっており、揉み落とすときの判断・気分が石のロスに影響します。
根が巻き込んだ石
こうした作業をやっていると、雑草は石から栄養分を吸収して成長・繁茂すること、逆に石は栄養を取られ、割れたりやせ細っていくことがよくわかります。また、お墓の横には竹藪があり、毎回お墓には大量の笹の葉が落ちています。そこで階段をほうきで掃くのですが、そのとき笹の葉の下に黒い土がわずかにできています。これらの現象はまさに地球上で進む土つくりを具現化していると云えます。我々が住むこの地球はもともとは岩石からできていて、植物が成長できる環境にはありません。しかし最初にコケが岩石に取り付いてそれを浸食し、やがてそのコケが枯死して微生物に分解されわづかな土(粘土)に変わると、次にシダ類などの低級植物から始まって順次高等植物が現れ、それらが岩石を砕き浸食しながら繁茂し、枯死しては微生物分解され、気の遠くなるような歳月をかけ、地球上の岩石は土に変わっていくと云われます(生成速度;0.01mm/年)。つまり土は地上の生物が長い時間をかけ残してくれた貴重な遺産であり、だから生物のいない月には土(粘土)はないのです。墓掃除をしながらこうした大自然の壮大な営みを体感し、いろいろ考えを巡らせていると、墓掃除もあっという間に時間が過ぎるから不思議です。
 このように植物(現実には動物も)が関与して作られた土は、微生物や腐食に富んだ肥沃な土で、こうした肥沃な土と豊富な水に恵まれた大きな河川の周りには、太古から主要文明が勃興しました。しかし農耕は生きた土に人為の手を加え、土(微生物や腐食)を消耗する行為でもあり、すべての文明は土の劣化と、それに伴う土の雨・風による流出により滅んでいます。いま世界ではこの数十年間に、過去数千年間にもなかった量の土の劣化と流出が進んでいると云います。世界の穀物市場を牛耳っているあのアメリカでさえ、穀物1トンを作るときに貴重な表土2トンを失っていると云い、深刻な砂漠化が進みつつあるのです。やはり農業は身土不二、自給自足が原則であり、生ごみの循環により土の劣化を防ぎ、持続可能な農業を目指したいと考えています。