2025年7月7日月曜日

へどろから見た持続可能な世界ー精白した食べ物

 今回の「令和の米騒動」では、小泉農水大臣による思い切った備蓄米の放出が行われました。しかしお米の流通にはかなりの時間がかかり、値段もなかなか下がらず、コメ不足の問題はかなり深刻なようです。背景には政府の減反政策があるようですが、温暖化による影響もかなり大きいといわれます。


この騒動で「エッ!」と思ったのは、お米の流通に「精米作業」が非常に大きなネックになっていることでした。家に精米機があったり、アチコチに精米所があるなか、なぜ玄米のまま放出しないのだろうと思ったりしましたが、今はそれほど「コメ=精白」が当たり前になっているのでしょう。しかし精白するとお米が有する栄養素(ビタミン、ミネラル、食物繊維、ファイトケミカルなど)はほとんどが失われてしまいます。食物繊維は血糖値の急上昇を抑えてくれる大切な栄養素です。それを取り除いておいて、一方で糖質制限をするのも可笑しな話です。


ところで豊臣秀吉の死因は「脚気」だったというのが、最近の新説だそうです。脚気はビタミンB1の不足から発症する病気で、「江戸患い」としても有名です。第14代将軍徳川家茂は脚気が原因で21歳という若さで亡くなっています。白米中心の食生活が引き起した病気です。秀吉といえば足軽から身を立てた人物で、前半生は玄米や雑穀を食べていたはずです。しかし天下を統一して地位と名声を手に入れると、生活がすっかり貴族化し、当時としては非常に贅沢な白米ばかりを食べるようになり、それが原因で脚気になったというのです。


晩年の秀吉といえば下痢や失禁に悩まされていたようですが、これらはビタミンB1の欠乏から起こりえる症状だそうです。また、ビタミンB1の欠乏状態が長く続くと脳が委縮する脳症にかかる場合があり、それが原因で精神が錯乱状態になり、突如、身内の秀次や千利休に切腹を命じたり、朝鮮出兵といった暴挙に出たりしたというのも、可能性として十分にあり得る話だそうです*


いずれにしても精白した食べ物はあまり身体に良くなく、とくに育ち盛りの子供の場合は学業にも影響します。しっかり野菜を食べて栄養を補うようにしましょう。


*  一石英一郎;すごい野菜の話、飛鳥新社、2024

2025年6月12日木曜日

へどろから見た持続可能な世界ー農業体験ツアー

  「エコの環」事業を知ってもらうための農業体験ツアーを、5/10(土)に実施しました。今回のツアーには、綾部市にある農業大学校の生徒さんも一人参加してくれ、大変嬉しく思いました。私たちのやっていることをとくに若い就農希望者に伝え、引き継いで貰いたいと願っているからです。

 最初の座学ではまず、生ごみの発酵にゼオライトを使う理由について詳しくお話ししました。「エコの環」の最大の特徴であり、独自の技術だからです。ゼオライトは肥料成分を吸着して畑での揮散や流失を抑えてくれること、土壌微生物が棲みやすく生ごみの発酵を促進してくれることを説明後、非常に優秀なゼオライトが阿蘇海のへどろから作れること、将来、へどろから作りたいことをお伝えすると、皆さんびっくりされていました。


 次に、天然ゼオライトを使った生ごみ処理法を、実機を使って説明しました。これも全く独自の技術(宮津方式)で、処理機の構造や扱い方、発酵肥料の取り出し方などを説明すると、皆さん大変熱心に聞いて下さいました。


 その後、実際に野菜を栽培している畑に移動し、まず私たち独自の農法である、生ごみ肥料の使い方を学んで頂きました。そして23の野菜の種まき、苗植えを行った後、キャベツ、大根などの収穫を体験し、それをお土産に持って帰って頂きました。


 最初、座学の前にお互いの自己紹介をしたときは、かなり緊張した雰囲気でしたが、最後の交流会では皆さんすっかり打ち解けた感じで、和やかな雰囲気で意見交換をすることができました。


2025年5月5日月曜日

へどろから見た持続可能な世界ーエッセンシャルワーカー

 「エコの環」野菜の販売額が、累計で1,006万円と1千万円を超えました(2012年度~)。

               

 「エコの環」は生ごみで野菜が作れたらよいくらいの軽い気持ちで、自家菜園を楽しむ地域の高齢者たちと、週に1回の出荷を原則に始めた事業です。しかし栽培者は全員が元サラリーマンの素人集団であり、生ごみ肥料による野菜の栽培法も、野菜の販売法も何も分からないところからの出発で、正直、ここまで来られるとは全く思ってもいませんでした。多くの方々のご支援、ご協力の賜物です。

また、試行錯誤を重ねる中で多くのことも学びました。

    生ごみによる野菜作りは永遠に持続が可能である。

    生ごみは土壌中の腐植(黒い土)を増やし、温暖化対策になる。

    生ごみはキログラム当たり250円ほどの価値を持つ。

    生ごみで育てた野菜は栄養価が高く、病気や老化予防に有効である。

    ゼオライトは肥料の損失を減らし、微生物を増やし、陸の豊かさを守る。

    ゼオライトをへどろから合成すれば、海の豊かさを守れる。


ところで昨年の日本の総人口(含む外国人)は12380万人で、前年から55万人減り、14年連続の減少になったそうです。この人口減少の影響は、いま多方面で人手不足の問題を引き起こしています。都会ではごみ収集の人材が集まらず、一般家庭のごみ回収に頭を悩ませる自治体が多いそうです。先日もある自治体のごみ収集の様子をテレビで放映していましたが、作業員は車に乗らず、走って先にある、あるいはコース外のごみを回収していて、大変な重労働の様子でした。


しかしこうした問題はいずれ地方の自治体においても起きる可能性があります。そのときの解決策は生ごみの有効利用かもしれません。生ごみが無ければ、可燃ごみを出す頻度は1/41/5に確実に減るからです。「エコの環」はエッセンシャルワーカーの問題解決にも役立ちそうです。





2025年4月22日火曜日

へどろから見た持続可能な世界ー遠方からの来訪

 滋賀県の東近江市で、生ごみ発酵処理の普及活動を行っておられる方々が、私達の生ごみ処理法を見学に来られました。私たちはいま「夏原グラント」(平和堂財団)から助成金を頂き、生ごみ処理機の改善を進めていますが、その関係で私たちの活動を知られたようです。

 お話を聞くと、彼らの生ごみ処理法はヤシがらチップとモミがら燻炭を基材に、段ボール箱を使って行うもので、私たちとは全く違う方法のようでした。段ボール箱では発酵時に発生する蒸気で箱が持たないのでは、と思いましたが、箱は二重にしたものを使い、生ごみの分解反応は大体3か月すると進まなくなるので、そのときに新しい箱に交換するので問題ないようでした。彼らが東近江市で活動を始めると、聞きつけた市役所の人が直ぐにやってきて、いろいろ普及活動のサポートをしてくれたとか。1,500円のコンポストセットに1,000円の補助金を出してくれるのもその一つで、我々からすると非常にうらやましい話でした。


私たちが行う「宮津方式」は、発酵材にゼオライトを、処理機に回転式のものを使う極めてユニークなものです。

ゼオライトを使う理由は、生ごみを分解する土壌微生物が棲みやすいのと、生ごみ分解時に発生するアンモニアとかカリウムなどの肥料成分を吸着し、その揮散や雨などによる流失を抑えてくれるからです。

回転式処理機を使う理由は、かき混ぜが難しい内容物の底の方を、回転させて上に持ってくることでかき混ぜをしやすくするためです。処理機には固定式じゃま板が付いており、処理機を回転させると自ずと内容物がかき混ぜられる仕組みにもなっています。処理機の蓋にはまた多くの穴が開けてあり、醗酵時に大量に発生する蒸気を底蓋から侵入する空気が追い出すことで、内容物が濡れるのを抑え、作業環境、作業効率を著しく改善する仕掛けにもなっています。

 「宮津方式」の実演

こうした私たち独自の処理法は、「非常にいい勉強になった」と喜んで頂きました。

いま生ごみは全国的に焼却処理されていますが、生ごみを価値のあるものとして有効に活かし、お互いに地域の活性化や温暖化対策に貢献していくことを誓い合いました。



2025年3月27日木曜日

へどろから見た持続可能な世界ー土

 私たちが花や野菜を育てる「土」は、あらゆる所に当たり前に存在しますが、土って何かご存じでしょうか?

 土は岩石や石ころ、砂とは違います。土には植物が生えますが岩や砂の上に植物は育ちません。土は岩石が単に細かくなっただけのものではなく、一度雨水に溶け、化学変化をして新たに生まれた「粘土」を主成分にできています。肥料成分を保持し、土壌微生物が棲みやすい性質をもっています。しかし粘土だけでも土とは呼びません。土の最大の特徴は生き物の「死がい」でできた腐植(黒い物質)を含んでいることなのです。だから土は黒っぽい色をしており、生物が存在するこの地球上にしか存在しないものなのです。

粘土の生成

地球上のあらゆる生き物はこの土を介して命の循環をしています。腐植には窒素やリンなどの栄養素が含まれており、その養分を吸収して植物が成長します。やがて植物は枯れ、枯死した植物や落ち葉、植物を食べた動物のフンや死がいが土の上に積み重なり、それを土の中の土壌微生物が分解して腐植を作ります。それを養分にしてまた植物が成長します。

生物が海から陸に上陸したのは5億年前です。以来、上記循環が脈々と繰り返され、土は作られてきたのです。このようにして作られた土は、地球の表層にわずか1メートル厚ほどしか存在せず、その厚みの比率は私たちの体を覆う皮膚の比率の1万分の1ほどで、極めて薄く、貴重なものなのです。

腐植の多い肥沃な土に恵まれたメソポタミア、エジプト、インダス、黄河地域では、地域を流れる大河から水を引いて豊かな古代文明が栄えました。しかしいずれも乾燥地域にあり、塩類の集積などで土を失い、文明は滅びました。現代は化学肥料、重機を使った大規模農業により土を酷使し、腐植を失って砂漠化が起きています。地下水の過剰汲み上げによって塩類の集積も起きており、土を守らないと人類は滅亡を迎えることになります。

私達が発酵材に使っているゼオライトは非常に優れた粘土です。生ごみは植物・動物の死がいです。両者を組み合わせた「エコの環」は、理想的な持続が可能な農法と言えます。

* ニュートン、3月号(2025)





2025年2月20日木曜日

へどろから見た持続可能な世界ーJPCZ

 2月に入り春も近いと思っていたら、「 10年に1度程度」という強烈な「立春大寒波」が日本列島を襲い、北日本から西日本の広い範囲で大雪となり、鹿児島市などにも雪を降らせました。今回の降雪量は雪国の人達も驚くほどで、平年の3倍以上に達したところもあったようです。幸い当地は大雪を免れましたが、しかし雪は少量でも積もると農作業に多大な影響を及ぼし、私たちも野菜の収穫に大きな損失を被りました。

 これまでも日本海側は再々大雪に見舞われてきました。しかし近年は温暖化の影響で日本海の海水温が上昇しており、そこに北朝鮮の長白山脈で二分された北風が合流すると、水蒸気をたっぷり含んだ雪雲のラインが発達し易くなり、北国に「ドカ雪」をもたらすようになったといいます。これをJPCZ(日本海寒帯気団収束帯)というそうです。

JPCZのできるメカニズム

最近の夏は各地を凄まじい豪雨が襲い、「線状降水帯」という言葉がすっかり馴染みになりましたが、JPCZは「雪の線状降水帯」といえるものです。温暖化が影響する異常気象は、これまで豪雨や熱波、干ばつ、山火事など、主に夏の問題と捉えられがちでしたが、JPCZが冬の言葉として市民権を得るのも、そんなに遠くないかも知れません。

世界気象機関(WMO)は昨年の世界の平均気温が、産業革命前に比べ1.55℃上回ったと発表しています。単年とはいえパリ協定の「目標1.5℃」を超え、私たちはいま後戻りできるかどうかの正念場を迎えています。温暖化は食料の生産に大きな影響を及ぼすといわれますが、冬の豪雪は農業活動そのものをストップさせる危険があります。

生ごみのたい肥で空気中のCO2を炭素として土壌中に固定できることを、前にお伝えしました。日本は生ごみをほとんど焼却処理していますが、たい肥にして使用すれば大きな温暖化対策になる可能性があります。これからも「エコの環」の活動にご支援をよろしくお願いします。



2025年1月17日金曜日

へどろから見た持続可能な世界ー健康

 新しい年が明けました。今年もよろしくお願いします。

若い頃は年が改まると何かすべてのものが清々しく感じられ、気持ちも改まる気分になりました。しかし後期高齢者、それも80歳を過ぎた近年は、「年を重ねる」ことが不安を覚えるものになりつつあります。年々、物を忘れたり、重力を感じたり、簡単に行えていたことが難しくなったりと、老化は確実に進行しており、とくに独り身にとって健康であることは、一時も油断できないものになっているからです。


「老化」とは私たちの体が酸化され、サビついていくことだといわれます。これに対して野菜など植物が有する色や臭い、あく、渋み、苦みなどにあるファイトケミカルは、「抗酸化物質」として極めて有効だといわれます。

私たちの体液は常に「弱アルカリ性」に保たれています。しかし酸性食品(甘い菓子類、小麦粉製品、肉・魚、乳製品、アルコールなど)を多く食べたりストレスにさらされると、酸性側に傾きやすく、疲れやすくなったり免疫力が落ち、慢性病や虫歯のリスクが高まります。これを防ぐにはミネラルの補給が大切で、ミネラル分を大地から吸収する野菜などの力に頼るしかありません。また、カリウムは微量の放射性同位元素を含んでおり、体内のエネルギー生産効率を高めてくれます。

野菜には食物繊維も豊富で、これは腸内細菌のエサとなって善玉菌を増やし、免疫機能を高めて病気に強い体にしてくれます。

野菜にはビタミンや酵素も豊富で、これらは身体のイキイキした働きをサポートしてくれます。

野菜には体にとって非常に優れた栄養素が多く含まれており、私は「具たくさん」というより「具だらけ」味噌汁を毎日、朝と昼に食べています。

 

一方、私たちが生きていくうえで必要な体の働きは、すべて「酵素」が担っています。酵素の働きは温度が高いほど活発で、36.537.1℃の範囲が健康体の体温だといわれます。しかしいま平熱が36℃以下の「低体温」の人がとても多いと言います。原因はストレスだそうです。低体温はがんを始め、あらゆる病気の原因になります。体温を1℃上げるだけで免疫力は56倍も高くなるそうです。体温を上げるには一時的に上げたり、恒常的に高い状態を保つ努力が必要です。恒常的に保つには「筋肉を鍛える」ことだそうです。筋肉は最大の熱産生器官だからです。

私は年中腹巻をし、真夏でも41℃の湯船に10分間は浸かるようにしています。そしてできるだけ筋肉を使うことを意識し、掃除・洗濯などのチョコ活に努めています。お陰でこれまでのところ、医者とクスリには無縁の生活を送っています。