2013年9月24日火曜日

不純物

 宝石に興味があるわけではありませんが、私の誕生石(7月)はルビーです。ルビーは酸化アルミニウム(Al2O3)の結晶であるコランダムという無色透明の鉱物に、不純物としてクロムが1%ほど混ざったもので、色鮮やかな赤色を帯びた宝石です。しかしクロムも含有量が5%を超えるとエメリーという灰色の研磨剤になってしまい、価値は大幅に落ちます。このコランダムに鉄とチタンが微量含まれると、こんどはサファイアというブルーの宝石(9月の誕生石)に変わります。このように純粋なものより、それに不純物が少し加わることで価値が大きく高まるものが多くあります。ノーベル物理学賞を受賞された江崎玲於奈氏は、高純度のゲルマニウムに少し不純物を混ぜたところに特異的性質が現れるのを発見され(トンネル効果)、それが江崎ダイオードの発明につながったと聞きます。水も蒸留水はまずくて飲めませんが、カルシウムやマグネシウムを微量含むと見違えるように美味しくなります。鉄も純鉄は柔らかくてそのまま使われることはなく、普通は炭素を1~2%含有させ焼き入れして使用します。

サファイア
ルビー
以上、不純物について触れたのは、海の塩は主成分はNaClですが、そのほかに数十種類ものミネラルを10数%含んでいて、「塩」の場合はこのNaCl以外のミネラルが、不純物として絶妙な役割を担っているのではと考えるからです。まして血液や赤ちゃんがお母さんのお腹の中で浸かっている羊水などが、海水塩と非常に似たミネラル構成をしていることを考えると、われわれにとって必要な「塩」とはNaClだけでなく、それ以外のミネラルを含んだものと考えられます。しかし減塩レシピで触れたように、いま「食塩」という名で売られている塩は、この数十種類のミネラルを不純物として完全に取り去った「NaClという化学試薬」であって、これはとても食用に用いるものでなく、なぜ「食塩」と称するのか不思議に思います。自然塩のpHは普通7~8で中性に近いのですが、精製されたNaCl塩はpHが10以上もある強アルカリ性と云われ、こんなものを調味料や梅干し、漬け物に使ったのでは、「減塩」を叫ばざるを得ないのも当然だと云えます。
 塩分の取りすぎは高血圧につながるとよく云われます。しかしあるテレビ番組で20代から50代のモニター5人に、自然塩を厚労省のすすめる1日10グラムの倍、20グラムづつ2週間摂取してもらい血圧を測定したところ、血圧の上がった人は1人もおらず、むしろ3人は血圧が下がったと云います。一方、世界の長寿郷の長寿者の中には、血圧が200ミリハーゲを超す人も大勢いるそうです。しかしみな血管が若く弾力性に優れていて、いたって元気に生活しているそうです。つまり少し血圧が高くなったぐらいで切れてしまう血管のもろさが問題であって、それには塩分というより食事の質、肉食とか農薬・食品添加物などからの化学物質(食塩も同じ)の過剰摂取が大きく関わっているのだそうです。わが家も自然塩を長く使っていますが、使用量に気を使ったことはなく、果物にも料理にもたっぷり塩を振りかけて食べています。私(70代)自身の血圧はこれまで大体120ミリハーゲ前後で推移しており、政府も医療費や介護費の増加を気にするのなら、自然塩をもっと安く作ることにも気を使って欲しいと思います。

2013年9月11日水曜日

ど根性「メランポジウム」

 わたくしの隣組では町内を走る市道沿いに、年間を通してプランターに花を植え、生ごみ堆肥で育てています。ちょうどいま時分は「メランポジウム」も育てていますが、駐車場の塀わきに置いたプランターから塀の反対側、距離にして20~30cmも離れていないコンクリート上に、昨年のこぼれ種からと思われるメランポジウムが一株、見事に花を咲かせました。

イキイキした「ど根性メランポジウム」
萎れるプランターのメランポジウム
今年の夏はここ宮津も酷暑続きで、うっかり水やりを忘れると、プランターのメランポジウムはぐったり萎れてしまうのに対し、こぼれ種から育った方は、水を全くやらなくてもイキイキと元気に咲いています。コンクリートの厚みを3~4cmと考えると、種から発芽したとき必死にそれ以上の根を伸ばし、生命を勝ち得たものと思われます。まさに「ど根性メランポジウム」です。

 小学生か中学生のころ先生から、「むかしスパルタの国では、生まれて間もない赤ん坊をボートから水中に放り投げ、投げたロープにしがみついた赤ん坊だけを、見込みがあるとして助けた」という話しを聞き、そこから「スパルタ教育」という言葉が生まれたことを教わった記憶があります。最近この「スパルタ教育」という言葉はあまり耳にしませんが、ただ、スポーツの世界ではむかしからスポ根として、「しごき」とか「根性入れ」とか、言葉は違ってもこうした教育/指導?はずっと行われていて、それが最近大問題となり、柔道界、相撲界、教育界などを揺るがす大事件になったことは、記憶に新しいところです。
 最近の風潮ではいささか分の悪い「スパルタ教育」ですが、この「ど根性メランポジウム」はさしずめ、ボートから投げたロープに必死に取りついた赤ん坊と云ったところでしょうか。それに引き替えプランターで育てたメランポジウムは、なんとも根性がないというか甘えた感じで、こうしたことを考えると種からの育苗時、苗のプランターへの移植時の水の与え方、肥料の与え方というのが非常に大切なことがよく分かります。植物においてもまさに「三つ子の魂百まで」で、過保護はよくないと云えそうです。





2013年9月2日月曜日

はだしのゲン

 松江市教育委員会が漫画「はだしのゲン」を閲覧制限し、その後撤回した問題が大きな話題になっています。一市民からのゲンの撤去を求める陳情に対し、市議会の教育民生委員会で審査を行った際、「作品に目を通して判断しよう」と5人の市教委幹部がゲンの全巻を通読し、5人全員が共通して、10巻にある旧日本軍の戦場での行為に係わる描写を問題視したそうです。最も敏感に反応したのが当時の女性教育長で、「こんな描写を発達段階の子供に見せていいのか」と、児童の目から遠ざけることしか考えられなくなり、市議会が「議会が判断することではない」と、陳情を全会一致で不採択したにもかかわらず、市教委幹部の独断で小中学校の校長に閲覧制限を要請したというのが真相のようです。作者の故中沢啓治さんの奥さんもご主人がこの場面を描くとき、「残酷すぎるのでは」と忠告されたようですが、「きれいな戦争というのはないんだ」と相当の覚悟をもって描かれたと云います。新聞には問題視されたコマも掲載されていましたが、戦争の実態とはこうしたものなのではないでしょうか。私も先の戦争で軍艦に乗っていた人の話しを聞いたことがありますが、戦いが始まると甲板は肉片、血のりでベトベトになり、足を取られて走れないのだそうです。戦争は決して映画で見るような華々しいものではなく、その現場は見るに堪えない狂乱地獄で、みな錯乱状態に陥ってしまうのです。
以前、あるテレビのドキュメンタリー番組で、どこかの農業高校だったと思いますが、先生の指導の下に生徒たちがニワトリを育て、大きく成長したところでそのニワトリをつぶして解体し、その肉でカレーライスを作って食べるまでの教育実習を放映したことがあります。ニワトリの世話をよろこんでやっていた生徒たちが、いよいよそのニワトリをつぶし解体する段になると、みなそれまでとは打って変わった真剣な表情になり、血にまみれた現場を見た女子生徒などは、恐怖で泣き出したりしていました。そしてカレーライスを食べるときはみな涙をポロポロとこぼし、泣きながら食べていました。実習終了後はどの生徒も真剣な表情で、「いままで何も考えず食事をしてきたが、食事とは命を頂くことだというのがよく分かった。これからは感謝して食べるようにしたい」と語っているのが印象的でした。
 我々が生きていくにはきれいごとだけではことは進みません。かならず見るに堪えないイヤなこと、つらいことが付随します。まして戦争においてはみな狂乱状態にあり、そうしたことは何十倍にも増幅されると思います。しかしそうしたイヤなこと、むごいことを直視することで人間は真面目になれるのであり、どうしたらよいかを真剣に考えるようになるのだと思います。松江市教育委員会の今回の行動は、いささか事なかれ主義に走ったと云われても仕方がないのではないでしょうか。