2014年9月22日月曜日

ピンきら

 先日義兄が、「これは老舗のお茶でおいしいぞ」と抹茶入りお茶をくれました。何気なく裏の表示を見ると、調味料として「アミノ酸」、「砂糖」などが入っています。「おいしい」といってもそれはお茶本来の味によるものではなく、添加物のアミノ酸や砂糖でごまかされた味であって、何でこんなものを老舗が発売するのかと不思議に思いました。しかし考えてみれば1年程前、阪急阪神ホテルズを始めとするほとんどの老舗ホテルが、赤肉に牛脂を注入した加工肉を「霜降り肉」と称して料理に使用し、大きな食材偽装問題になりました。そのとき加工肉には「アミノ酸」もうま味成分として添加されており、老舗ホテルで食事を楽しむような食通の人も、添加された牛脂やアミノ酸の味を「おいしい、おいしい」と味わっていたわけです。行列のできるラーメン店とか中華料理店では、味付けに決まってアミノ酸などの化学調味料を入れるそうです。天然の昆布や魚を使って得られる「だし」の旨みはグルタミン酸によるものと云われますが、だしを取るには手間暇がかかるため、いまではグルタミン酸ナトリウムを主成分とする化学調味料が、料理を始めあらゆる加工食品に「調味料(アミノ酸など)」という表示のもとに添加されています。現代人はそうした味に慣らされ、アミノ酸や砂糖の入ったものでないと物足りなさを感じるのでしょう。しかし塩や砂糖でもそうですが、そのエキスを得るために周りの不純物をドンドン取り除き純度を上げていくと、得られるものは自然品から化学物質に変化し、身体にとって有害性を帯びてきます。しかもその多くは麻薬性を有し、依存症を引き起こします。南米ではコカの葉をお茶として飲んでいるそうですが、それを精製するとコカインという麻薬になるのと同じです。自然の旨みでは中毒になりませんが、グルタミン酸ナトリウムでは依存症を引き起こすのです。だから店に行列ができるようになるのですが、しかしそれは味覚障害によるものなのです。化学調味料は人によって動悸や吐き気、めまいを引き起こすことがあるので、特に子供には極力、摂らせないようにすることが大切だと云います。
 ”ピンと活き生き”宮津ライフでは高齢者ビジネスとして、宮津独自の料理の開発を進めていこうと考えています。そしていまある自然食料理屋の奥さんに頼んで、身体を温める料理として「ピンきら」(「きんぴら」ですが、ピンと活き生きのピンを取り込んで命名)の開発に取り組んでいます。私としてはできるだけお袋の味となるように、素材の味を生かしたシンプルな調理をお願いしているのですが、自然食料理屋でさえ万人向けを考えると、どうしても甘みを少し加えたがる傾向にあります。一度アミノ酸とか砂糖とかの味に慣れ親しむと、その味覚を変えるのはなかなか難しいようです。
試食用のピンきら
ピンきら試食会
 













南雲吉則;空腹が「生き方」を教えてくれる、サンマーク出版、2013

2014年9月11日木曜日

老人介護(つづき)

 前回は私の家内の母親で、103歳になるおばあさんの介護について少し触れました。おばあさんのことは家内と、「いずれ自分たちも同じことになるのだから」とよく話し合っています。そんなこともあってか家内も最近はほとんどイラつくこともなく、黙々とおばあさんの世話をしていて、傍から見ていても頭の下がる思いです。ただ、肝心のおばあさんが最近、「なかなかお迎えが来ない」とか、「施設に入った方が早く死ねるのでは」とか、巡回に来るお医者さんに「早く死ねるような薬をください」などとよく口にするようです。やはり一日テレビを見ているだけでは詰まらないのだろうと思います。私も何か暇を潰せる仕事がないかと、「野菜の種取りはできないか」、「新聞の切り抜きはできないか」、「ハガキの敷物が作れないか」などと家内に持ちかけるのですが、「目が見づらいから無理」とか「力が入らないから難しい」などとその都度却下される始末です。2~3年前に比べると視力、聴力、筋力などに相当衰えがきているようです。残念ながらいまできることといえば、テレビを見ること、食べること、寝ることだけで、そうなったとき人間は一体どうしたらよいのかと考え込んでしまいます。おばあさんは自尊心の強い人であるだけに、何もできないいまの状態に人一倍悔しい思いをされているであろうし、自尊心がズタズタになっているのではと思うからです。私の近所に、やはり母親の介護を6~7年やっておられるご夫婦がいます。そのお母さんの場合はずっとこん睡状態にあり、胃ろう(胃に開けた口)を通して栄養補給を行っておられます。ご夫婦ともに憔悴された顔を見ると、長年の介護でかなり疲れておられるように感じます。そのお母さんも昔は結構しっかりした方であっただけに、一体どんな気持ちで毎日毎日眠っておられるのだろう、良かれと思ってやっている処置が却ってお母さんの自尊心を傷つけ、「早く止めて楽にしてくれ」と思っておられるのではないかと、他人事ながらつい考えたりします。
 
長生きするには肉を食べるな? 食べろ?で述べましたが、日本人の平均寿命が顕著に伸び始めたのは、ほんの昭和(1926年)に入ってからのことです。それまでは腸チフスとか結核など細菌感染による死亡が多く、男女とも「45歳」がせいぜいの寿命であったのです。それがパスツールから始まる「病原菌退治」の近代医学の発達のお陰で、いまでは男女とも平均寿命が80歳を超えるまでになりました。他の先進諸国も状況は大体似たようなものだと云います。このことは私たちは50歳以上の生き方をあまりよく知らないとも云え、これからは「健康寿命」(日常生活が支障なく送れる寿命)をいかに平均寿命に近づけるか、つまり「ピンピンコロリ」が非常に重要な課題であると云えます。おばあさんにしても2~3年前までは、ハラハラすることはあってもガスを使って何とか自炊ができ、風呂にもトイレにも自分で入れたわけで、自尊心が傷つくことはなかったと思うからです。介護は単に家族に大きな負担をかけるだけでなく、本人にとっては尊厳を損なうことにもなるわけですから、健康寿命を意識して自重しながら余生を楽しみたいと考えています。