2026年4月10日金曜日

へどろから見た持続可能な世界ートウガラシの知恵

 突然ですが、トウガラシがなぜあんなに辛いか、分かりますか? 

 トウガラシの辛みは、カプサイシンという化学成分によるもので、昆虫を含め多くの生物は、この成分を痛みや熱さと同様に、「体にとって危険なもの」と知覚し、忌避しようとするそうです。「エコの環」野菜の栽培でも、病害虫対策にトウガラシを使っています。


 ところが、このカプサイシンの辛みに全く反応しない生物が、一種だけ存在するそうです。鳥類です。鳥類はどういうわけか進化の過程で、知覚センサーを作る遺伝子に突然変異が起き、温度や痛みなどは識別できても、カプサイシンの辛みには全く反応しないのだそうです。

そこでトウガラシは必死に考えたのでしょう。もし動物に食べられたら、実をかみ砕くとき種子を潰してしまいます。しかし鳥なら実を丸呑みするので種子は傷つかず、しかも遠くまで飛んで、種子を糞と一緒にばらまいてくれます。つまり繁殖のためには、鳥類だけに食べて貰った方が好都合です。そこでトウガラシは、カプサイシンを合成する術を身に付けたといいます。


鳥類の知覚センサーの突然変異については、二人のアメリカの大学教授によって発見され、ノーベル賞が授与されたそうです2021。それにしてもノーベル賞に匹敵するようなことを、トウガラシはどうやって学んだのでしょう。

 植物は海から陸に上がって以来、陸上の過酷な環境に曝されながら懸命に生き、それに耐えるべく自らを作り替え、しかもカプサイシンのような化学成分(人間にとって有用なものが多い)を、一種当たり平均して4.7個も作り出してきたのです。植物の生存戦略は、我々が考えている以上にしたたかで、すごく賢いのです。

 

ウクライナやガザ、そして最近のイランへの強国による無差別な戦争を目の当たりにすると、人間はその出現以来、何も変わることができていないと、つくづく虚しさを感じます。もっと植物から、忍耐力とか生きるための知恵を、学ぶべきではないでしょうか。

 

*一石英一郎;すごい野菜の話、飛鳥新社



2026年3月20日金曜日

へどろから見た持続可能な世界ー花粉症

 花粉が飛ぶ季節になりました。いま日本人の半数近くは花粉症だといわれます。しかしそれが最初に報告されたのは1961年、第1回東京オリンピックのわずか数年前のことだったようです。何がこれほどまでの激増につながったのでしょう?


 一つは私たちの体に備わった免疫という仕組みの「誤作動」にあると言われます。私たちの体を病原体などから守る免疫には、二種類あるといわれます。一つはウイルスや細菌に対するもの、もう一つはもっとサイズの大きい寄生虫などに対するものです。前者ではIgGという抗体が作られ、ウイルスや細菌を排除します。後者ではIgEという抗体が作られ、それが「肥満細胞」(丸く膨れた形をした免疫細胞)にくっつきます。寄生虫などが侵入してIgE抗体と結合すると、肥満細胞から「ヒスタミン」などの物質が放出され、くしゃみ、鼻水、涙、皮膚のかゆみなどを引き起こします。かゆみは皮膚をかくことで寄生虫を払い落とし、鼻水や涙は寄生虫の卵を洗い流すためのものだといいます。こうした仕組みが本来無害である花粉に対して誤作動すると、アレルギー反応が起きるといいます。


 誤作動を起こす原因には、衛生環境が良くなったこと、食生活の変化などが挙げられています。生活水準が良くなったことで、土に触れたり、不衛生なものを食べる機会が減り、一方で抗菌剤や抗生物質などが多用され、感染症は減りました。しかし人間は長く土壌微生物と接しながら生きてきました。だから微生物に触れる機会が減ると免疫系の発達が未熟になり、肥満細胞が過敏になるといいます。

 一方の食事では、動物性の食べ物や加工食品が増え、食物繊維や発酵食品が減ったことで腸内細菌の多様性が減り、腸の免疫調節が弱くなったといいます。いずれもノーベル賞受賞の坂口博士が発見された、Tレグの不足を招くことになるのです。

スギ花粉

 スギは1970年以降に大量に植林されたそうです。それが花粉症増加のもう一つの原因です。温暖化による夏の気温の上昇も花粉の飛散量を増加させ、都市部では花粉に付着したディーゼル粉塵や大気汚染物質も、花粉症の症状を悪化させているといいます。


マスクや眼鏡などで花粉を防ぎ、野菜をしっかり食べて「腸活」に努めましょう!


*ニュートン

      

2026年3月19日木曜日

第7回ツアーのご案内

 第7回ツアーの参加申し込み

  「温暖化対策とSDGsな野菜作り」の体験ツアーに参加を希望される方は、下記事項をメールにてお知らせください。

 連絡事項;お名前、住所、電話番号、メールアドレス

 連絡先メールアドレス;toyomi-714@ezweb.ne.jp

*お送りいただいた個人情報は、本イベントの運営のほか、今後のイベント情報などのご案内以外には、利用いたしません。

 

 集合場所

宮津市須津787

KTR(丹後鉄道)岩滝口駅の裏側で、徒歩5分の位置です。

2026年2月22日日曜日

へどろから見た持続可能な世界ー植物の生存戦略

 雪が峠を越えたと思ったら、花粉の季節になりました。私たちにとっては大迷惑でも、これは植物にとっては非常に大切な生存戦略の一つなのです。 

 植物は約45千万年前、光合成に必要な光と二酸化炭素を求めて、海から陸上に進出しました。以来、陸上の乾燥や重力、紫外線などと戦いながら様々な変化を遂げ、高度な適応能力を身に着けたといわれます。やがて陸上に動物が現れると、今度は動物から身を守ったり、動物の力を上手く利用する新たな生存戦略を、展開してきたのです。

植物の陸上進出

 植物は動物のように身を隠したり、逃げたりすることができません。そこで身を守るため、また繁殖を促すために様々な化学成分を作り出し、その成分の一つ一つに多くの機能を持たせるようにしてきました。

 例えばブルーベリーやナス、紫キャベツなどに多く含まれるアントシアニンという色素は、花や果実を赤や紫に発色させて昆虫や鳥をおびき寄せ、受粉をさせたり、鳥や動物に実を食べさせ、糞として種子をばらまくのに使われます。さつまいもが赤いのもアントシアニンによるものですが、この場合は抗菌作用を持たせ、土壌の雑菌から身を守るのに使っています。アントシアニンのとりわけ重要な機能の一つに、紫外線から守る抗酸化作用があります。紫外線は細胞内に活性酸素という強酸化性の物質を発生させ、私たちの体をサビさせ、老化や皮膚がんなどの原因になります。しかし日光を避ける術を持たない植物は、アントシアニン(ポリフェノールの一種)以外にもカロテノイド、クロロフィル、フィコシアニンなど、様々な抗酸化物質(ファイトケミカル)を作り、がんにならないのです。南洋に生育する作物や果実に赤みを帯びたものが多いのは、アントシアニンが多いからです。また長寿の人達の多いのは亜熱帯など紫外線の強い地域に集中しているそうですが、これもアントシアニンのお陰かも知れません。

 植物は平均すると一種当たり4.7個のアントシアニンのような化学成分を、作り出しているそうです。植物のこうした様々な成分を動物は作ることができず、植物から摂取するしかないのです。


 野菜をしっかり食べ、病気に負けない体を作りましょう。

 

*一石英一郎;すごい野菜の話、飛鳥新社





2026年1月19日月曜日

へどろから見た持続可能な世界ーカレーライス

 新聞によると舞鶴市は今年から「海の日」に合わせ、小中学校の給食に「海自カレー」、「海保カレー」を出すそうです。日本の海を守る重要組織のあるまちに誇りを持ち、社会貢献に尽力する志を醸成するための食育だそうです。

 舞鶴市といえば「カレー発祥の地」をめぐって呉市と争うほど、カレーが有名です。どちらも明治期に海軍鎮守府が置かれたまちで、実は日本のカレーは海軍発祥の料理だからです。

 

 明治期の日本の軍隊では大勢の兵士が脚気になり、海軍は陸軍に先駆けて食事に麦飯を取り入れ、脚気撲滅に成功したと前回、お伝えしました。

 食事の重要性に気づいた海軍では西洋式の食事を取り入れるようになり、料理の教科書「海軍割烹術参考書」1908には、100種を超える西洋料理やお菓子のレシピが載っていたそうです。その中でも人気だったのが「カレーライス」だったそうです。


 イギリス海軍の「カレーシチュー」を米飯に合うようにアレンジしたもので、調理が簡単で大量に作ることができ、海軍内では大層好評だったといいます。それが除隊兵士を通じて全国に広まり、国民食の一つになったのです。海軍鎮守府は横須賀、佐世保にもあり、その意味では4つの市のどこにも発祥の地としての権利はありそうです。


 カレー発祥の地インドでは、「カレー」ではなく「スパイス煮込み」と呼ばれていたそうです。鶏レバーを玉ねぎやにんにくなどと煮込み、黒コショウとターメリック(ウコン)で香りをつけた素朴な料理で、肝心なのはスパイス(香辛料)でした。

 香辛料は食べ物の臭みを消し、香りや辛味、色合いを加え、食欲増進や消化を助けるものですが、それは植物が自らを害虫や病原体から守るために作った化学物質(ファイトケミカル)です。それが人間にとっては新陳代謝の活性化・肝機能向上・疲労回復・整腸作用・健胃・解毒など、様々な効果をもたらしてくれるのです。

 市販のカレールーには2030種類もの香辛料が入っているといわれ、カレーは美味しいだけでなく、万能食と言えるほど栄養バランスもよいそうです。


一石英一郎;すごい野菜の話、飛鳥新社(2024)



2025年12月18日木曜日

へどろから見た持続可能な世界ー精白食品

 日本の病院の7割が赤字経営に陥っているそうです。ある大きな病院の院長さんが、「雨だれを直したいが、お金が無くてできない」とテレビで嘆いておられました。世界に冠たる医療制度を擁する日本の病院が、そんな状態にあるとはビックリです。政府も補正予算で緊急支援を考えているようですが、少子高齢化の進む中、いまの医療体制を維持するのは簡単ではないようです。これからはセルフメディケーション(軽度な体の不調は自分で手当てする)、各自が自らの健康に責任を持つ必要性に迫られそうです。

 

 現代人は洋の東西を問わず、あらゆるものを精白して食べています。すると下表から分かるようにビタミン、ミネラル、食物繊維がそぎ落とされ、糖質の濃縮した食品に変わります。これがいかに危険な食べ物であるかは江戸患い(脚気)からも知ることができます。白米を食べるようになった江戸時代に流行った病で、将軍を始め多くの人が命を落としたのです。

精白で失われる栄養素

脚気については明治になってもその原因が分からず、軍隊では大勢の兵士が脚気になって死亡することから、大問題であったようです。海軍では軍医高木兼寛が主張する「栄養の偏り」(白米中心説)を取り入れ、実験的に食事を麦飯、野菜、肉に切り替えたところ、1884年の遠洋航海において脚気の患者がほとんど発生せず、そこで麦飯を食事に正式採用し、脚気の撲滅に成功したと言います。

 一方の陸軍は軍医森鴎外の「細菌感染症」説を採用し、白米中心の食事を維持しましたが、日清戦争では脚気による死者が、戦死者をはるかに上回る結果になったと言います。精白食がいかに健康に悪いかが分かります。


 野菜にはこの精白によって失われるビタミン、ミネラル、食物繊維が多い上に、抗酸化物質のファイトケミカルが豊富です。前田浩熊本大名誉教授は、「旬の野菜を数種類煮詰めたスープを毎日飲んでおれば、がんもウイルスも怖くない」と言っておられます。政府は生活習慣病対策として、11350グラム以上の野菜の摂取を奨励しています、しかし350グラムというのは結構な量で、現実の日本の成人の摂取量は250グラムほどだそうです。それほど現代人は栄養失調になっているとも言えます。意識して野菜を食べましょう。



2025年11月18日火曜日

へどろから見た持続可能な世界ー金属有機構造体

 今年のノーベル化学賞に選ばれた北川博士たちが開発された「金属有機構造体」(MOF)は、無数の孔を持つ物質で、狙った気体を大量に孔に貯蔵したり取り出したりできるといいます。これまで細かい孔の空いた物質といえば、「エコの環」で使っているゼオライトや活性炭がよく知られ、脱臭剤などに使われています。臭いを孔の中に閉じ込めてくれるからです。MOFはこれらの材料より、はるかに多くの気体を入れられる画期的なものなのです。


 とくに北川博士が開発されたMOFは軟らかく、まるで呼吸をするように目的の気体を吸い込んだり吐き出したりできるといいます。北川博士は「空気は酸素と窒素、水、二酸化炭素から出来ており、これらの材料があれば、資源のない国でも燃料やたんぱく質を作ることができます。資源の争いは無くなるでしょう。また、二酸化炭素を分離すれば、温暖化対策の大きな切り札にもなります。気体(キタイ)はますます期待(キタイ)されていくでしょう。」と夢を語っておられます。

柔軟なMOF

 北川博士の座右の銘は「無用の用」だそうです。何の役にも立たないようなものが、実は大切な役割を果たすことを意味しています。実験中に偶然見つけた何でもない構造物の孔が、それに興味を持ったことでMOFの開発につながったのです。


 「無用の用」と言えば私たちの行っている「エコの環」も、まさにそれに相当するといえるのではないでしょうか。

 何の役にも立たないと燃やしている生ごみが、200円以上の価値を持つ野菜に生まれ変わるのです。かつて野菜は「一汁三菜」という日本の料理に、必ず副菜として副えられていました。しかし近年は食生活の変化から野菜離れが進み、いま野菜は、がんや生活習慣病対策として、改めてその栄養素、抗酸化作用が見直されています。

 また、ゼオライトを使った生ごみ発酵肥料は、非常に大きな温暖化対策になることも分かってきました実験によれば1トンの生ごみが、灯油2缶分の温暖化ガスを無にしてくれるのです。次世代を担う若者に、ぜひ引き継いでいってもらいたいと考えています。

 「エコの環」による生ごみ処理が進めば、阿蘇海のへどろからゼオライトを生産しようという機運も高まります。生ごみ、へどろといった無用に思われているものが、非常に価値のあるものに変わるのです