へどろから見た持続可能な世界ー温暖化対策
住んでいる自治体にもよりますが、日本では多くの家庭が11~15種類のごみ分別に協力しているそうです。ごみの分別ルールがこれほどまでに徹底されているのは、世界を見回しても日本ぐらいだそうです。だから日本のごみのリサイクル率は世界のトップクラスにあると信じておられる方も多いでしょう。
下図はOECD(経済協力開発機構)加盟国(いわゆる民主的先進国)のごみのリサイクル率を比較したものです。残念ながらこれによると日本はお尻から数えた方が早い位置にいます。リサイクル率の定義は国により大きく異なるため単純な比較は難しいようですが、しかし日本はごみの8割を焼却処理しており、それがリサイクル率に大きく影響しているのです。中でも影響の大きいのが、ごみの30~50%を占める生ごみの焼却です。ただ生ごみは燃やしてCO2を発生させても、そのCO2を吸収して作物が成長することから、これまで温暖化対策としてもあまり問題視されてこなかったのです。
いま畑の作物に10kgの窒素肥料を与えたとすると、7.5kgは土壌微生物の活動に消費され、残りの肥料成分も多くを雑草に取られ、作物が得るのはわずか1kgだといいます。微生物活動では多くのCO2が放出され、しかも肥料成分のアンモニアや硝酸が微生物により分解されると、CO2の310倍もの温室効果を有する亜酸化窒素(N2O)を放出するため、農業の温暖化に及ぼす影響は極めて大きいのです。
私たちは生ごみを微生物処理するときにゼオライトを使用します。ゼオライトは土壌微生物が棲みやすい上に発生するアンモニアを吸着し、その消耗を抑える性質があるからです。つまりN2Oの発生を抑えてくれるのです。前に生ごみの炭素を土の中に固定できそうな実験結果をお伝えしましたが、これもゼオライトのアンモニア吸着の効果と考えられます。つまりゼオライトを使った生ごみ発酵肥料による農業は、CO2やN2Oの発生を抑え、温暖化対策に有効なことが分かってきました。