へどろから見た持続可能な世界ー金属有機構造体
今年のノーベル化学賞に選ばれた北川博士たちが開発された「金属有機構造体」(MOF)は、無数の孔を持つ物質で、狙った気体を大量に孔に貯蔵したり取り出したりできるといいます。これまで細かい孔の空いた物質といえば、「エコの環」で使っているゼオライトや活性炭がよく知られ、脱臭剤などに使われています。臭いを孔の中に閉じ込めてくれるからです。MOFはこれらの材料より、はるかに多くの気体を入れられる画期的なものなのです。
とくに北川博士が開発されたMOFは軟らかく、まるで呼吸をするように目的の気体を吸い込んだり吐き出したりできるといいます。北川博士は「空気は酸素と窒素、水、二酸化炭素から出来ており、これらの材料があれば、資源のない国でも燃料やたんぱく質を作ることができます。資源の争いは無くなるでしょう。また、二酸化炭素を分離すれば、温暖化対策の大きな切り札にもなります。気体(キタイ)はますます期待(キタイ)されていくでしょう。」と夢を語っておられます。
柔軟なMOF
北川博士の座右の銘は「無用の用」だそうです。何の役にも立たないようなものが、実は大切な役割を果たすことを意味しています。実験中に偶然見つけた何でもない構造物の孔が、それに興味を持ったことでMOFの開発につながったのです。
「無用の用」と言えば私たちの行っている「エコの環」も、まさにそれに相当するものではないでしょうか。
何の役にも立たないと燃やしている生ごみが、200円以上の価値を持つ野菜に生まれ変わるのです。かつて野菜は「一汁三菜」という日本の料理に、副菜として必ず副えられていました。しかし近年は食生活の変化から野菜離れが進み、いま野菜は、がんや生活習慣病対策として、その栄養素、抗酸化作用が改めて見直されています。
また、ゼオライトを使った生ごみ発酵肥料は、非常に大きな温暖化対策になるのです。実験によれば1トンの生ごみは、灯油2缶分の温暖化ガスを無にしてくれるのです。次世代を担う若者に、ぜひ引き継いでいってもらいたいと考えています。
「エコの環」による生ごみ処理が進めば、阿蘇海のへどろからゼオライトを生産しようという機運も高まります。生ごみ、へどろといった無用に思われているものが、価値あるものに変わるのです
