2017年7月28日金曜日

野菜たっぷり

 ”昭和40年頃の味探訪シリーズ” 第4弾として、ちーたび ”「季節の幸」汁を作ってみよう” を実施しました(7/23)。

 前回のブログで触れましたが、アメリカは1970年代、医療費の削減に国家ぐるみで取り組み、食事改善レポート(マクガバーンレポート)(1977)、がん予防と食生活(1982)、(1992)、がん予防15ヶ条(1997)などを次々と発表し、国民に食生活の改善を訴えました。そうした働きかけは「5 a Day 運動」(肉から野菜への運動)に発展し(1991~)、特にがんの罹患率、死亡率の削減に大きな成果を上げ、世界に多大な影響を与えました。日本でも厚労省や農水省が、「1日に350グラム以上の野菜と、200グラム以上の果物を食べる」ことを推奨するようになりましたが、なかなか成果は上がらず(上図)、日本人の2人に1人ががんに罹り、3人に1人が亡くなっているのが現状です。そこで忙しい現代人にどうしたら野菜たっぷりの食事を摂ってもらえるか、それを提案するのが今回のちーたびの目的でした。そして7人の方に参加して頂きました。

 最初に私の方から、自然界は循環の仕組みができていてゴミ・ムダが発生しない。しかし人間社会は一方通行の仕組みのため必ずゴミが発生し、それがムダ(害)を発生させている。生ごみの焼却処理も有害ガス、有害物質を発生させる。しかし「エコの環」は生ごみ処理に自然の力を利用し、循環の仕組みを取り入れているのでゴミが発生せず安全で、だから「エコ」;環境にやさしい、「環」;循環という名前にしていると話し、その後ゼオライトを使った生ごみ処理法(宮津方式)について説明しました。数人の方から「ぜひやってみたい」と申し入れがありましたが、処理箱がないのでお断りしました。しかし1人の方はバケツで挑戦してみるとゼオライトを買って帰られ、その熱意には頭が下がりました。

 続いてゲストの青木さんより、昭和40年頃に比べいまの食品には添加物が当たり前のような顔をして入っており、それが健康被害をもたらしていると話されました。これに対し「生醤油という名前にひかれ使っていたが、原料に脱脂加工大豆が使われていることを知り、ショックだった」とか、「近所の醤油屋さんから醤油を買っていたが添加物が入っているのを知り、気まずかったが購入をやめた」とか、いまの食品の材料、添加物に対し不満や意見が噴出しました。私の方からいまは「ごく普通の食事をしていても、年間に1人当たり4キログラム以上の添加物を摂取している」といわれることを説明しましたが、その量を小麦粉に置き換えて想像すると恐ろしくなります。
一汁一菜とドリンク

 料理教室では小西さんの指導のもと、野菜たっぷりの「季節の幸」汁(一汁)と、じゃがいもの短冊切り・片栗粉・チーズで使ったガレット(一菜)、そしてゴーヤ・バナナ・豆乳で作ったスムージーを作りました。非常に簡単に作れる「一汁一菜」とドリンクでしたが、幸汁だけでも180グラムの野菜が摂れ、全体ではほぼ1日分に相当する野菜が摂れると考えられました。

 参加者にはおばあさんに連れられた野菜嫌いの小学4年の男子がいましたが、彼の幸汁の感想は「これはいける」というものでした。ダシの素などとは違う、じゃことコンブと野菜だけで作り出す本来の味を感じてくれたのかと嬉しく思いました。参加者からは「ありあわせの野菜だけで栄養豊富でおいしい幸汁の作れることを知り、とても勉強になった」という声が聞かれました。
食後の交流会
食後の交流会のなかで小西さんが、「生ごみ処理は大変だという人がいる。いま自分は腰を痛め生ごみ処理をしていないが、ゴミ出しの日まで生ごみを保管する苦労の方がよほど大変である」と述べておられましたが、ゴミ問題の核心を突いた含蓄のある言葉に感じられました。

2017年7月11日火曜日

食原病

 日本の医療費は東京オリンピック(昭和39年)のころは1兆円にも届かない額でした。しかしオリンピック以降、急速に膨張し始め、2015年にはついに40兆円を突破してしまいました。

 アメリカでも1970年頃、生活習慣病(がん、心臓病、糖尿病、高血圧、動脈硬化、脳卒中など)の患者の急増、医療費の急膨張が大問題になり、「アメリカは戦争ならどこにも負けないが、自国民の病気で滅んでしまう」と心配され、業を煮やしたフォード大統領が、「これだけ医学が進歩し、お金もかけているのに、なぜ患者が減らず増え続けるのか?」と、1975年に上院に特別委員会を設置し、世界中から3,000人以上もの医師、生物学者、栄養学者などを呼び寄せ、国・地域別、人種別、宗教別に、人々の食生活と病気や健康状態について徹底的に調べ、5,000ページにも及ぶ膨大なマクガバーンレポートを完成しました(1977)。

 その概要は、①現在の食事は不自然で全くひどいもので、この間違った食事が現代病(生活習慣病)といわれる病気を生んでいる(食原病)。②特にビタミン、ミネラルの不足が目立つ。③現代医学はパスツールに始まる「病原菌退治」の医療に取りつかれ、病気をクスリで治そうとするが、生活習慣病はコレラやチフスなどと違い、菌が原因の病気ではない。④食原病を治すのはクスリではなく「身体の治癒力」であり、それを高める栄養学重視の医療こそ重要であるといったものでした。そして世界で1ヶ所だけ理想的な食生活の国があるとして、元禄時代の日本食が紹介され、日本食ブームを引き起こしました。

 このレポートはアメリカの医学界、薬学会、関連する業界から猛烈な反発を喰らい、このレポートをまとめたマクガバーン議員は翌年の上院議員選挙に敗れ、政治的に恵まれない歳月を過ごしたといわれます。しかしこのレポートはやがてアメリカに栄養学を学んだ医者を増やし、「5 a day」(1日に5皿以上の野菜を食べる)運動に火をつけ、「がん予防15ヶ条」などの提言につながり、世界的に大きな影響を与えました。そして何よりアメリカのがん罹患率・死亡率の減少につながりました。


 いま私たちは「昭和40年頃の味探訪シリーズ」と題して料理教室のちーたびを行っています。東京オリンピックのころに私たちが食べていたものを探ることで、いまの食生活を考え直してみようというもので、マクガバーンレポートの考えに通じるものがあると自負しています。

 今月の23日(日)に、”「季節の幸」汁を作ってみよう”の料理教室を計画しています。

 場 所;吉津地区公民館(宮津市須津1031)
 時 間;9:30~14:00
 参加費;1,200円
 定 員;8名
です。奮ってご参加下さい。お待ちしています。

森山晃嗣;アメリカはなぜ「ガン」が減少したか、現代書林、2010