2017年7月11日火曜日

食原病

 日本の医療費は東京オリンピック(昭和39年)のころは1兆円にも届かない額でした。しかしオリンピック以降、急速に膨張し始め、2015年にはついに40兆円を突破してしまいました。

 アメリカでも1970年頃、生活習慣病(がん、心臓病、糖尿病、高血圧、動脈硬化、脳卒中など)の患者の急増、医療費の急膨張が大問題になり、「アメリカは戦争ならどこにも負けないが、自国民の病気で滅んでしまう」と心配され、業を煮やしたフォード大統領が、「これだけ医学が進歩し、お金もかけているのに、なぜ患者が減らず増え続けるのか?」と、1975年に上院に特別委員会を設置し、世界中から3,000人以上もの医師、生物学者、栄養学者などを呼び寄せ、国・地域別、人種別、宗教別に、人々の食生活と病気や健康状態について徹底的に調べ、5,000ページにも及ぶ膨大なマクガバーンレポートを完成しました(1977)。

 その概要は、①現在の食事は不自然で全くひどいもので、この間違った食事が現代病(生活習慣病)といわれる病気を生んでいる(食原病)。②特にビタミン、ミネラルの不足が目立つ。③現代医学はパスツールに始まる「病原菌退治」の医療に取りつかれ、病気をクスリで治そうとするが、生活習慣病はコレラやチフスなどと違い、菌が原因の病気ではない。④食原病を治すのはクスリではなく「身体の治癒力」であり、それを高める栄養学重視の医療こそ重要であるといったものでした。そして世界で1ヶ所だけ理想的な食生活の国があるとして、元禄時代の日本食が紹介され、日本食ブームを引き起こしました。

 このレポートはアメリカの医学界、薬学会、関連する業界から猛烈な反発を喰らい、このレポートをまとめたマクガバーン議員は翌年の上院議員選挙に敗れ、政治的に恵まれない歳月を過ごしたといわれます。しかしこのレポートはやがてアメリカに栄養学を学んだ医者を増やし、「5 a day」(1日に5皿以上の野菜を食べる)運動に火をつけ、「がん予防15ヶ条」などの提言につながり、世界的に大きな影響を与えました。そして何よりアメリカのがん罹患率・死亡率の減少につながりました。


 いま私たちは「昭和40年頃の味探訪シリーズ」と題して料理教室のちーたびを行っています。東京オリンピックのころに私たちが食べていたものを探ることで、いまの食生活を考え直してみようというもので、マクガバーンレポートの考えに通じるものがあると自負しています。

 今月の23日(日)に、”「季節の幸」汁を作ってみよう”の料理教室を計画しています。

 場 所;吉津地区公民館(宮津市須津1031)
 時 間;9:30~14:00
 参加費;1,200円
 定 員;8名
です。奮ってご参加下さい。お待ちしています。

森山晃嗣;アメリカはなぜ「ガン」が減少したか、現代書林、2010



 

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