2026年1月19日月曜日

へどろから見た持続可能な世界ーカレーライス

 新聞によると舞鶴市は今年から「海の日」に合わせ、小中学校の給食に「海自カレー」、「海保カレー」を出すそうです。日本の海を守る重要組織のあるまちに誇りを持ち、社会貢献に尽力する志を醸成するための食育だそうです。

 舞鶴市といえば「カレー発祥の地」をめぐって呉市と争うほど、カレーが有名です。どちらも明治期に海軍鎮守府が置かれたまちで、実は日本のカレーは海軍発祥の料理だからです。

 

 明治期の日本の軍隊では大勢の兵士が脚気になり、海軍は陸軍に先駆けて食事に麦飯を取り入れ、脚気撲滅に成功したと前回、お伝えしました。

 食事の重要性に気づいた海軍では西洋式の食事を取り入れるようになり、料理の教科書「海軍割烹術参考書」1908には、100種を超える西洋料理やお菓子のレシピが載っていたそうです。その中でも人気だったのが「カレーライス」だったそうです。


 イギリス海軍の「カレーシチュー」を米飯に合うようにアレンジしたもので、調理が簡単で大量に作ることができ、海軍内では大層好評だったといいます。それが除隊兵士を通じて全国に広まり、国民食の一つになったのです。海軍鎮守府は横須賀、佐世保にもあり、その意味では4つの市のどこにも発祥の地としての権利はありそうです。


 カレー発祥の地インドでは、「カレー」ではなく「スパイス煮込み」と呼ばれていたそうです。鶏レバーを玉ねぎやにんにくなどと煮込み、黒コショウとターメリック(ウコン)で香りをつけた素朴な料理で、肝心なのはスパイス(香辛料)でした。

 香辛料は食べ物の臭みを消し、香りや辛味、色合いを加え、食欲増進や消化を助けるものですが、それは植物が自らを害虫や病原体から守るために作った化学物質(ファイトケミカル)です。それが人間にとっては新陳代謝の活性化・肝機能向上・疲労回復・整腸作用・健胃・解毒など、様々な効果をもたらしてくれるのです。

 市販のカレールーには2030種類もの香辛料が入っているといわれ、カレーは美味しいだけでなく、万能食と言えるほど栄養バランスもよいそうです。


一石英一郎;すごい野菜の話、飛鳥新社(2024)



2025年12月18日木曜日

へどろから見た持続可能な世界ー精白食品

 日本の病院の7割が赤字経営に陥っているそうです。ある大きな病院の院長さんが、「雨だれを直したいが、お金が無くてできない」とテレビで嘆いておられました。世界に冠たる医療制度を擁する日本の病院が、そんな状態にあるとはビックリです。政府も補正予算で緊急支援を考えているようですが、少子高齢化の進む中、いまの医療体制を維持するのは簡単ではないようです。これからはセルフメディケーション(軽度な体の不調は自分で手当てする)、各自が自らの健康に責任を持つ必要性に迫られそうです。

 

 現代人は洋の東西を問わず、あらゆるものを精白して食べています。すると下表から分かるようにビタミン、ミネラル、食物繊維がそぎ落とされ、糖質の濃縮した食品に変わります。これがいかに危険な食べ物であるかは江戸患い(脚気)からも知ることができます。白米を食べるようになった江戸時代に流行った病で、将軍を始め多くの人が命を落としたのです。

精白で失われる栄養素

脚気については明治になってもその原因が分からず、軍隊では大勢の兵士が脚気になって死亡することから、大問題であったようです。海軍では軍医高木兼寛が主張する「栄養の偏り」(白米中心説)を取り入れ、実験的に食事を麦飯、野菜、肉に切り替えたところ、1884年の遠洋航海において脚気の患者がほとんど発生せず、そこで麦飯を食事に正式採用し、脚気の撲滅に成功したと言います。

 一方の陸軍は軍医森鴎外の「細菌感染症」説を採用し、白米中心の食事を維持しましたが、日清戦争では脚気による死者が、戦死者をはるかに上回る結果になったと言います。精白食がいかに健康に悪いかが分かります。


 野菜にはこの精白によって失われるビタミン、ミネラル、食物繊維が多い上に、抗酸化物質のファイトケミカルが豊富です。前田浩熊本大名誉教授は、「旬の野菜を数種類煮詰めたスープを毎日飲んでおれば、がんもウイルスも怖くない」と言っておられます。政府は生活習慣病対策として、11350グラム以上の野菜の摂取を奨励しています、しかし350グラムというのは結構な量で、現実の日本の成人の摂取量は250グラムほどだそうです。それほど現代人は栄養失調になっているとも言えます。意識して野菜を食べましょう。



2025年11月18日火曜日

へどろから見た持続可能な世界ー金属有機構造体

 今年のノーベル化学賞に選ばれた北川博士たちが開発された「金属有機構造体」(MOF)は、無数の孔を持つ物質で、狙った気体を大量に孔に貯蔵したり取り出したりできるといいます。これまで細かい孔の空いた物質といえば、「エコの環」で使っているゼオライトや活性炭がよく知られ、脱臭剤などに使われています。臭いを孔の中に閉じ込めてくれるからです。MOFはこれらの材料より、はるかに多くの気体を入れられる画期的なものなのです。


 とくに北川博士が開発されたMOFは軟らかく、まるで呼吸をするように目的の気体を吸い込んだり吐き出したりできるといいます。北川博士は「空気は酸素と窒素、水、二酸化炭素から出来ており、これらの材料があれば、資源のない国でも燃料やたんぱく質を作ることができます。資源の争いは無くなるでしょう。また、二酸化炭素を分離すれば、温暖化対策の大きな切り札にもなります。気体(キタイ)はますます期待(キタイ)されていくでしょう。」と夢を語っておられます。

柔軟なMOF

 北川博士の座右の銘は「無用の用」だそうです。何の役にも立たないようなものが、実は大切な役割を果たすことを意味しています。実験中に偶然見つけた何でもない構造物の孔が、それに興味を持ったことでMOFの開発につながったのです。


 「無用の用」と言えば私たちの行っている「エコの環」も、まさにそれに相当するといえるのではないでしょうか。

 何の役にも立たないと燃やしている生ごみが、200円以上の価値を持つ野菜に生まれ変わるのです。かつて野菜は「一汁三菜」という日本の料理に、必ず副菜として副えられていました。しかし近年は食生活の変化から野菜離れが進み、いま野菜は、がんや生活習慣病対策として、改めてその栄養素、抗酸化作用が見直されています。

 また、ゼオライトを使った生ごみ発酵肥料は、非常に大きな温暖化対策になることも分かってきました実験によれば1トンの生ごみが、灯油2缶分の温暖化ガスを無にしてくれるのです。次世代を担う若者に、ぜひ引き継いでいってもらいたいと考えています。

 「エコの環」による生ごみ処理が進めば、阿蘇海のへどろからゼオライトを生産しようという機運も高まります。生ごみ、へどろといった無用に思われているものが、非常に価値のあるものに変わるのです





2025年10月23日木曜日

へどろから見た持続可能な世界ーノーベル賞ダブル受賞

 今年のノーベル賞は大阪大学特任教授の坂口志文さんと、京都大学特別教授の北川進さんがダブル受賞されることになりました。おめでとうございます。

         
         坂口教授
北川教授
         

 








坂口さんが発見された「制御性T細胞」については、以前、このブログでも「Tレグ」という名称でお伝えしています

 免疫細胞といえばそれまで、ウイルスや細菌などの外敵を攻撃するものだけが知られていたのに対し、その攻撃にブレーキをかける役目の免疫細胞Tレグ)が新たに発見され、それが不足すると従来の免疫細胞が暴走してアレルギー疾患や、自分自身の細胞を傷つけてしまう自己免疫疾患(関節リウマチや1型糖尿病など)を引き起こすこと、Tレグを増やすには大腸の腸内細菌のバランスを整える(善玉菌を増やす)ことが大切なこと、などをお伝えしました。

 そのときTレグはノーベル賞級の発見と感じ、大阪大の坂口教授が発見されたと書き加えたことを覚えています。ただしそのときは、実際にノーベル賞がこんなにも早く与えられるとは思ってもいませんでしたが。


また、別のブログでは、花粉症対策として政府が行おうとしている花粉発生量の半減対策、すなわち現在のスギ人工林を無花粉、少花粉のスギや他の木に置き換える計画に対し、そんなことに膨大なお金をかけるより、Tレグの研究にお金を使った方が有意義であり、はるかに安上がりになるとお伝えしました。

今回の受賞が決まり、文部科学大臣から祝福の電話があったとき、坂口さんも「自分たちの研究費はドイツの13ほどだ」と、早速、自分たちの窮状を訴えられたそうです。

 

 腸内細菌のバランス改善には食物繊維が大切です。成人では124グラム以上の摂取が必要とされるのに対し、現代人の摂取量は15.0グラムと慢性的に不足しているのが実情で、政府も1350グラム以上の野菜を食べることを奨励しています。



2025年10月1日水曜日

へどろから見た持続可能な世界ー温暖化対策(修正版)

 前回、生ごみの発酵時に得られるふるい上(ガラ)とふるい下を、それぞれ畑の土に10%づつ混ぜると、いずれも土の炭素量を2.02%から2.5%ほどに上昇させ、4パーミルイニシアティブ(土壌中の炭素量を毎年0.4%アップ)を達成できること、すなわち生ごみ量にして20%ほどを土に混ぜると、炭素量を0.4%アップできることをお伝えしました。

 しかしその後、炭素量の0.4%の解釈に誤りのあることが分かり、改めてここに正しい実験の結果についてお伝えしたいと思います。


 今年の実験では炭素量が2.02%の土を使いました。この土の炭素量を0.4%アップさせるということは、2.02+0.4=2.42%にするというのではなく、2.02×1.0042.028%にすればよいということです。つまり2.5%になったということは、2.5/2.02=1.238、すなわち23.8%0.4%の約60倍)も炭素量がアップしたことを意味します。昨年の場合なら、1.30×1.0041.305%になれば十分であるのに対して2.03%に、つまり56.2%0.4%の約140倍)も炭素量がアップしていたことを意味します。しかも土をそのまま放置すると、1年経っても炭素量はほぼ全量が保存していたのに対し、土を頻繁に攪拌して空気を入れると、炭素量は大きく失われてしまうことも分かりました。

生ごみ肥料による土壌中有機炭素量の変化


 土壌にとって有機炭素は非常に大切です。土壌微生物が棲みやすく、肥料成分の宝庫となり、干ばつにも耐えやすくなるからです。昨年・今年と続けて行った実験から、生ごみを肥料に使うことは土壌中の炭素量を大幅にアップし、土を肥沃にし、非常に大きな温暖化対策になることが分かりました。しかしせっせと耕して畑に空気を入れると折角の炭素量を失ってしまうので、出来るだけ耕さない「不耕起栽培」が大切になってきます。国連も温暖化対策、砂漠化対策として不耕起栽培を推奨しており、農業先進国では20%以上導入しているところもあるようです。しかし日本はいまのところ不耕起栽培に関して後進国であり、ほとんど導入されていません。実践を重ねることで独自の農法を見つけていきたいと考えています。



2025年9月19日金曜日

へどろから見た持続可能な世界ー温暖化対策

 今年の夏は群馬県の伊勢崎市で歴代最高の41.8℃を記録し、また全国25の観測地点で最高気温が40℃を越すなど、命に係わるような猛暑が連日、日本列島を襲い、まさに温暖化(沸騰化)が身近に迫っているのを感じました。

 温暖化対策として一体どんな選択肢があるでしょうか? よく知られたものに太陽光発電、風力発電、原子力発電などがあります。しかし前2者は国や自治体の助成金制度や、FIT(再エネ賦課金)という電気料金に上乗せされる分担金制度が充分でないと、なかなか元が取れず、また風力発電は個人レベルでは手が届かず、しかも三菱商事のような大企業でも、国の洋上発電プロジェクトから今夏、撤退してしまったような状況にあります。残るは原発しかないのでしょうか?


 4パーミルイニシアティブという運動があります。CO2を吸収した植物を大地に埋め、地球上の土壌表層の炭素量を毎年0.4%アップすれば、いま化石燃料が放出しているCO2を相殺できるというものです。生ごみが炭素量のアップにどの程度寄与するか、昨年に続いて今年も実験をしてみました。


 生ごみの発酵で得られるふるい上(ガラ)とふるい下を、どちらも土に10%づつ混合すると、いずれも炭素量が少なくとも0.5%ほど上昇すること(生ごみ量にして20%を混合すると0.4%アップ)が分かりました。そして土を攪拌せず放置すれば炭素量はそのまま保持されるが、撹拌して土に空気を入れると微生物活動が活発化し、大幅なロスにつながることが分かりました。生ごみを燃やさず肥料用に提供することは誰にでもできることです。「エコの環」の温暖化対策に一層のご協力をよろしくお願いします。



2025年8月25日月曜日

へどろから見た持続可能な世界ーごみ屋敷

  1リットルのペットボトル飲料水には、平均24万個の微小なプラスチックが入っていると、米コロンビア大の研究チームが発表したそうです。以前、プラスチックの海洋汚染についてお伝えしましたが、いまやその汚染は私たちの住む陸上や空気中にも及んでいるのです。実際、私たちの脳、心臓、肺、血液、母乳、便などからもプラスチックは検出されるといい、私たちはプラスチックの「ごみ屋敷」に住んでいると言って過言ではないのです。

 プラスチック自体は毒ではなく、過度に恐れることはないそうですが、プラ製品に加えられているさまざまな添加物が炎症を引き起こす可能性があり、プラ容器に入った食品を電子レンジで温めるときは、耐熱ガラスや陶器製の食器に移し替えるなど、できることはするに越したことはないそうです。


 環境問題とは結局はごみ問題です。温暖化現象にしても、日中に蓄えられた地球上の熱(太陽から得た熱や人間活動から出た様々な廃熱など)が、夜間にうまく宇宙に捨てられないことから起きる現象です。よく晴れた夜の翌朝が寒いのは、地球から宇宙へ放熱するときに遮る雲がないからです。CO2は雲と同じように放熱を遮るため、捨てられるべき熱が捨て切れず、ごみとして地球上に残ってしまうのです。環境問題を解決するには自然の力(仕組み)をうまく利用するしかないのです。プラスチックなら自然が分解できるものに替えることです。リサイクルも自然の力を利用しない限り解決策にはなりません。焼却処理も同じです。有害なガスや灰がごみとして残るからです。

 CO2については、気温の上昇を1.5℃に抑えるには下図のバケツ1杯分しかCO2を増やせないのですが、バケツにはすでに85%ほどが溜まっていて、あと4,000億トン分しかなく、いまのペースでCO2が排出され続けると2030年ごろには満杯となり、後戻りできないといいます。いかに化石燃料からの排出を抑えるか、いかに大気中のCO2を減らすか(例えばCCSという技術を使って強引に地下に閉じ込めるか、CO2を吸収した植物を地中に埋め、自然の力を利用して有機炭素として固定する)、他に手はないのです。




 「エコの環」では自然の力を使って生ごみを分解処理し、できた肥料で有機炭素の固定化を進めています。