2025年8月25日月曜日

へどろから見た持続可能な世界ーごみ屋敷

  1リットルのペットボトル飲料水には、平均24万個の微小なプラスチックが入っていると、米コロンビア大の研究チームが発表したそうです。以前、プラスチックの海洋汚染についてお伝えしましたが、いまやその汚染は私たちの住む陸上や空気中にも及んでいるのです。実際、私たちの脳、心臓、肺、血液、母乳、便などからもプラスチックは検出されるといい、私たちはプラスチックの「ごみ屋敷」に住んでいると言って過言ではないのです。

 プラスチック自体は毒ではなく、過度に恐れることはないそうですが、プラ製品に加えられているさまざまな添加物が炎症を引き起こす可能性があり、プラ容器に入った食品を電子レンジで温めるときは、耐熱ガラスや陶器製の食器に移し替えるなど、できることはするに越したことはないそうです。


 環境問題とは結局はごみ問題です。温暖化現象にしても、日中に蓄えられた地球上の熱(太陽から得た熱や人間活動から出た様々な廃熱など)が、夜間にうまく宇宙に捨てられないことから起きる現象です。よく晴れた夜の翌朝が寒いのは、地球から宇宙へ放熱するときに遮る雲がないからです。CO2は雲と同じように放熱を遮るため、捨てられるべき熱が捨て切れず、ごみとして地球上に残ってしまうのです。環境問題を解決するには自然の力(仕組み)をうまく利用するしかないのです。プラスチックなら自然が分解できるものに替えることです。リサイクルも自然の力を利用しない限り解決策にはなりません。焼却処理も同じです。有害なガスや灰がごみとして残るからです。

 CO2については、気温の上昇を1.5℃に抑えるには下図のバケツ1杯分しかCO2を増やせないのですが、バケツにはすでに85%ほどが溜まっていて、あと4,000億トン分しかなく、いまのペースでCO2が排出され続けると2030年ごろには満杯となり、後戻りできないといいます。いかに化石燃料からの排出を抑えるか、いかに大気中のCO2を減らすか(例えばCCSという技術を使って強引に地下に閉じ込めるか、CO2を吸収した植物を地中に埋め、自然の力を利用して有機炭素として固定する)、他に手はないのです。




 「エコの環」では自然の力を使って生ごみを分解処理し、できた肥料で有機炭素の固定化を進めています。


2025年7月28日月曜日

へどろから見た持続可能な世界ー小学校での環境授業

 阿蘇海の環境について、吉津小学校で授業を行ってきました(6/27。これまで5年生とか4年生が相手であったのが、今回は3年生と聞き、最初はビビりました。3年生に環境の話なんて分かるだろうかと思ったのです。

 しかし先生からクラスには阿蘇海の生き物を調べる班と環境を考える班とがあり、調査で揃って阿蘇海に出かけたとき、いないと思っていた魚を見つけ大騒ぎになった話や、私の話をみなが楽しみにしていると聞き、決心がつきました。


教室に行くと、これまで67人が当たり前だったクラスに児童が15人もいて、揃って待ち構えている姿にまず圧倒されました。そして先生が「これまで調べたことで分からないことを聞いてみましょう」というと、堰を切ったように次々と手が上がり、一生懸命に質問してくるのです。その迫力には本当に圧倒されました。

                   授業風景

もちろん質問の内容は幼稚なものが多いのですが、なぜそうしたことを聞くのか、どう説明したら理解してもらえるかなどを考えながら答えていると、声はかすれ頭はふらつき、本当に疲れました。

質問に「へどろをやっつける土壌微生物を元気にするにはどうしたらいいか?」というのがあり、これにはびっくりしました。どうやって土壌微生物というものを知ったのか、そもそも土壌微生物をイメージできるのかなど、考えさせられたからです。そこで土壌微生物はどこにでもいること、我々の手、足、顔や体の中にもいっぱいいること、我々が生きている間は好意的に働き、死ぬと我々の体を分解して土に還してくれること、土壌微生物も生き物なので元気にするには水や空気が必要なことなどを説明しました。

授業後、私の話を分かってくれたか心配でしたが、先生からは「説明内容はおおよそ理解していると思う」と言って頂き、ホッとしました。


今回の授業で驚いたのは、児童が手に持つタブレットの内容が黒板横のスクリーンに映しだされることです。こちらが見せたいものも、先生がタブレットを近づけるとスクリーンに大写しされ、子供たちは席にいながら観察できるのです。授業風景もすっかり近代化しているのですね!



2025年7月7日月曜日

へどろから見た持続可能な世界ー精白した食べ物

 今回の「令和の米騒動」では、小泉農水大臣による思い切った備蓄米の放出が行われました。しかしお米の流通にはかなりの時間がかかり、値段もなかなか下がらず、コメ不足の問題はかなり深刻なようです。背景には政府の減反政策があるようですが、温暖化による影響もかなり大きいといわれます。


この騒動で「エッ!」と思ったのは、お米の流通に「精米作業」が非常に大きなネックになっていることでした。家に精米機があったり、アチコチに精米所があるなか、なぜ玄米のまま放出しないのだろうと思ったりしましたが、今はそれほど「コメ=精白」が当たり前になっているのでしょう。しかし精白するとお米が有する栄養素(ビタミン、ミネラル、食物繊維、ファイトケミカルなど)はほとんどが失われてしまいます。食物繊維は血糖値の急上昇を抑えてくれる大切な栄養素です。それを取り除いておいて、一方で糖質制限をするのも可笑しな話です。


ところで豊臣秀吉の死因は「脚気」だったというのが、最近の新説だそうです。脚気はビタミンB1の不足から発症する病気で、「江戸患い」としても有名です。第14代将軍徳川家茂は脚気が原因で21歳という若さで亡くなっています。白米中心の食生活が引き起した病気です。秀吉といえば足軽から身を立てた人物で、前半生は玄米や雑穀を食べていたはずです。しかし天下を統一して地位と名声を手に入れると、生活がすっかり貴族化し、当時としては非常に贅沢な白米ばかりを食べるようになり、それが原因で脚気になったというのです。


晩年の秀吉といえば下痢や失禁に悩まされていたようですが、これらはビタミンB1の欠乏から起こりえる症状だそうです。また、ビタミンB1の欠乏状態が長く続くと脳が委縮する脳症にかかる場合があり、それが原因で精神が錯乱状態になり、突如、身内の秀次や千利休に切腹を命じたり、朝鮮出兵といった暴挙に出たりしたというのも、可能性として十分にあり得る話だそうです*


いずれにしても精白した食べ物はあまり身体に良くなく、とくに育ち盛りの子供の場合は学業にも影響します。しっかり野菜を食べて栄養を補うようにしましょう。


*  一石英一郎;すごい野菜の話、飛鳥新社、2024

2025年6月12日木曜日

へどろから見た持続可能な世界ー農業体験ツアー

  「エコの環」事業を知ってもらうための農業体験ツアーを、5/10(土)に実施しました。今回のツアーには、綾部市にある農業大学校の生徒さんも一人参加してくれ、大変嬉しく思いました。私たちのやっていることをとくに若い就農希望者に伝え、引き継いで貰いたいと願っているからです。

 最初の座学ではまず、生ごみの発酵にゼオライトを使う理由について詳しくお話ししました。「エコの環」の最大の特徴であり、独自の技術だからです。ゼオライトは肥料成分を吸着して畑での揮散や流失を抑えてくれること、土壌微生物が棲みやすく生ごみの発酵を促進してくれることを説明後、非常に優秀なゼオライトが阿蘇海のへどろから作れること、将来、へどろから作りたいことをお伝えすると、皆さんびっくりされていました。


 次に、天然ゼオライトを使った生ごみ処理法を、実機を使って説明しました。これも全く独自の技術(宮津方式)で、処理機の構造や扱い方、発酵肥料の取り出し方などを説明すると、皆さん大変熱心に聞いて下さいました。


 その後、実際に野菜を栽培している畑に移動し、まず私たち独自の農法である、生ごみ肥料の使い方を学んで頂きました。そして23の野菜の種まき、苗植えを行った後、キャベツ、大根などの収穫を体験し、それをお土産に持って帰って頂きました。


 最初、座学の前にお互いの自己紹介をしたときは、かなり緊張した雰囲気でしたが、最後の交流会では皆さんすっかり打ち解けた感じで、和やかな雰囲気で意見交換をすることができました。


2025年5月5日月曜日

へどろから見た持続可能な世界ーエッセンシャルワーカー

 「エコの環」野菜の販売額が、累計で1,006万円と1千万円を超えました(2012年度~)。

               

 「エコの環」は生ごみで野菜が作れたらよいくらいの軽い気持ちで、自家菜園を楽しむ地域の高齢者たちと、週に1回の出荷を原則に始めた事業です。しかし栽培者は全員が元サラリーマンの素人集団であり、生ごみ肥料による野菜の栽培法も、野菜の販売法も何も分からないところからの出発で、正直、ここまで来られるとは全く思ってもいませんでした。多くの方々のご支援、ご協力の賜物です。

また、試行錯誤を重ねる中で多くのことも学びました。

    生ごみによる野菜作りは永遠に持続が可能である。

    生ごみは土壌中の腐植(黒い土)を増やし、温暖化対策になる。

    生ごみはキログラム当たり250円ほどの価値を持つ。

    生ごみで育てた野菜は栄養価が高く、病気や老化予防に有効である。

    ゼオライトは肥料の損失を減らし、微生物を増やし、陸の豊かさを守る。

    ゼオライトをへどろから合成すれば、海の豊かさを守れる。


ところで昨年の日本の総人口(含む外国人)は12380万人で、前年から55万人減り、14年連続の減少になったそうです。この人口減少の影響は、いま多方面で人手不足の問題を引き起こしています。都会ではごみ収集の人材が集まらず、一般家庭のごみ回収に頭を悩ませる自治体が多いそうです。先日もある自治体のごみ収集の様子をテレビで放映していましたが、作業員は車に乗らず、走って先にある、あるいはコース外のごみを回収していて、大変な重労働の様子でした。


しかしこうした問題はいずれ地方の自治体においても起きる可能性があります。そのときの解決策は生ごみの有効利用かもしれません。生ごみが無ければ、可燃ごみを出す頻度は1/41/5に確実に減るからです。「エコの環」はエッセンシャルワーカーの問題解決にも役立ちそうです。





2025年4月22日火曜日

へどろから見た持続可能な世界ー遠方からの来訪

 滋賀県の東近江市で、生ごみ発酵処理の普及活動を行っておられる方々が、私達の生ごみ処理法を見学に来られました。私たちはいま「夏原グラント」(平和堂財団)から助成金を頂き、生ごみ処理機の改善を進めていますが、その関係で私たちの活動を知られたようです。

 お話を聞くと、彼らの生ごみ処理法はヤシがらチップとモミがら燻炭を基材に、段ボール箱を使って行うもので、私たちとは全く違う方法のようでした。段ボール箱では発酵時に発生する蒸気で箱が持たないのでは、と思いましたが、箱は二重にしたものを使い、生ごみの分解反応は大体3か月すると進まなくなるので、そのときに新しい箱に交換するので問題ないようでした。彼らが東近江市で活動を始めると、聞きつけた市役所の人が直ぐにやってきて、いろいろ普及活動のサポートをしてくれたとか。1,500円のコンポストセットに1,000円の補助金を出してくれるのもその一つで、我々からすると非常にうらやましい話でした。


私たちが行う「宮津方式」は、発酵材にゼオライトを、処理機に回転式のものを使う極めてユニークなものです。

ゼオライトを使う理由は、生ごみを分解する土壌微生物が棲みやすいのと、生ごみ分解時に発生するアンモニアとかカリウムなどの肥料成分を吸着し、その揮散や雨などによる流失を抑えてくれるからです。

回転式処理機を使う理由は、かき混ぜが難しい内容物の底の方を、回転させて上に持ってくることでかき混ぜをしやすくするためです。処理機には固定式じゃま板が付いており、処理機を回転させると自ずと内容物がかき混ぜられる仕組みにもなっています。処理機の蓋にはまた多くの穴が開けてあり、醗酵時に大量に発生する蒸気を底蓋から侵入する空気が追い出すことで、内容物が濡れるのを抑え、作業環境、作業効率を著しく改善する仕掛けにもなっています。

 「宮津方式」の実演

こうした私たち独自の処理法は、「非常にいい勉強になった」と喜んで頂きました。

いま生ごみは全国的に焼却処理されていますが、生ごみを価値のあるものとして有効に活かし、お互いに地域の活性化や温暖化対策に貢献していくことを誓い合いました。



2025年3月27日木曜日

へどろから見た持続可能な世界ー土

 私たちが花や野菜を育てる「土」は、あらゆる所に当たり前に存在しますが、土って何かご存じでしょうか?

 土は岩石や石ころ、砂とは違います。土には植物が生えますが岩や砂の上に植物は育ちません。土は岩石が単に細かくなっただけのものではなく、一度雨水に溶け、化学変化をして新たに生まれた「粘土」を主成分にできています。肥料成分を保持し、土壌微生物が棲みやすい性質をもっています。しかし粘土だけでも土とは呼びません。土の最大の特徴は生き物の「死がい」でできた腐植(黒い物質)を含んでいることなのです。だから土は黒っぽい色をしており、生物が存在するこの地球上にしか存在しないものなのです。

粘土の生成

地球上のあらゆる生き物はこの土を介して命の循環をしています。腐植には窒素やリンなどの栄養素が含まれており、その養分を吸収して植物が成長します。やがて植物は枯れ、枯死した植物や落ち葉、植物を食べた動物のフンや死がいが土の上に積み重なり、それを土の中の土壌微生物が分解して腐植を作ります。それを養分にしてまた植物が成長します。

生物が海から陸に上陸したのは5億年前です。以来、上記循環が脈々と繰り返され、土は作られてきたのです。このようにして作られた土は、地球の表層にわずか1メートル厚ほどしか存在せず、その厚みの比率は私たちの体を覆う皮膚の比率の1万分の1ほどで、極めて薄く、貴重なものなのです。

腐植の多い肥沃な土に恵まれたメソポタミア、エジプト、インダス、黄河地域では、地域を流れる大河から水を引いて豊かな古代文明が栄えました。しかしいずれも乾燥地域にあり、塩類の集積などで土を失い、文明は滅びました。現代は化学肥料、重機を使った大規模農業により土を酷使し、腐植を失って砂漠化が起きています。地下水の過剰汲み上げによって塩類の集積も起きており、土を守らないと人類は滅亡を迎えることになります。

私達が発酵材に使っているゼオライトは非常に優れた粘土です。生ごみは植物・動物の死がいです。両者を組み合わせた「エコの環」は、理想的な持続が可能な農法と言えます。

* ニュートン、3月号(2025)