2016年3月6日日曜日

共生

 先日テレビで、山梨かどこかのある町にイノシシの大群が住み着き、コメをはじめあらゆる農作物を食い荒らすため、全く農業ができないと報道していました。そうかと思うと昨日はまた、神奈川県のある街にサルが出没し、農作物を全部食い荒らすため、市がエアガンを貸し出してサルの追い払い作戦に乗り出したという報道がありました。
私も数年前、生ごみ発酵肥料でコメを育てようと、ある人に栽培をお願いしていたところ、見事にイノシシに襲われ全滅した苦い経験があります。畑でもこれまで何度かシカに襲われ、その都度トタンやネットをかさ上げして対応してきましたが、昨年秋にまたシカに見事なまでに食い荒らされ、無力感を感じるほどのくやしさを味わっただけに、農家の方たちの苦しみがよく理解できます。
 ところで環境問題を論じるとき、よく「共生」という言葉が使われます。つまり自然界では生物の多様性が重要で、多くの生物が共生することで豊かで美しい自然が守られるという考えです。たとえば海の場合、海には山からの土砂や人間社会からの生活排水などが流れ込み、海を汚します。しかしその汚れは海に生息する微生物(プランクトン)が食べて分解し、そのプランクトンを小魚や浜辺の貝やカニなどが食べ、その小魚を大きな魚が食べ、その大きな魚や貝を人間が食べることで海の汚れは除去され、その美しさが保たれています。だから阿蘇海のように護岸を作って砂浜を無くしてしまうと、貝やカニの生息場所が無くなり、生物の多様性が損なわれ、食物連鎖が断ち切られるため海は汚れ、魚も住めなくなってしまうのです。つまり自然の美しさを守るには多くの生き物が共生する必要があるのですが、ただそこにはお互いに「食うか食われるか」のすさまじい戦い(拮抗)があって、ギリギリ共生しているのであって、決して仲良く共生しているわけではないのです。
 私の近所では散歩でちょっと山道に入るとシカやイノシシに遭遇することがあります。もちろんすぐに引き返しますが、このようにイノシシ、サル、シカなどが私たちの住むすぐ近くまで増えてきた理由には、やはり人口の減少が大きいと考えられます。神奈川県の場合でも兼業農家が多く、日中は人、特に男性の姿がないため、そこをサルに狙われたようです。だからサルを徹底的に駆除するのは間違ってはいないと思うのですが、ただ、エアガンによる威嚇だけで果たして賢いサルを駆除できるのか、テレビでは高齢の婦人たちが市役所の人に教えられ、エアガンの試射をしていましたが、それではかえってサルになめられ、逆に襲われたりすることはないのか、非常に心配に思われました。人間の数が減り、そこを自然界の動物に攻め込まれた感じですが、そうした拮抗のない、一方的な状況下での共生の難しさをつくづく思い知らされた感じです。

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