2014年2月5日水曜日

リケジョ

 日本のリケジョ(理系の女性)が世界を驚かすスゴイ発見をしてくれました。山中教授のIPS細胞とは全く違う手法で、STAP細胞と呼ばれる万能細胞を「より安く、より早く、より安全」に作れるというから驚きです。山中教授に続く快挙に何も分からないわれわれもすっかり興奮し、私の末娘もリケジョであることから、つい心で万歳を叫んでいました(何の関係もありませんが)。山中教授がIPS細胞の開発に成功されたのは確か40歳を過ぎたばかりのころで、ずい分若いなーと思っていましたが、今度の小保方さんはまだ弱冠30歳とか。自分が30歳だったころのことを思うと、全く使命感が異なり恥ずかしくなります。それにしてもカッポウギを着て実験したり、実験室の壁をピンク色に塗り替えたり、実験器具にお気に入りの漫画キャラクターを貼ったり、スッポンを飼ったり、ずい分奔放な気がしますが、それを許している研究所や上司の方々の度量にも感心します。もっとも小保方さんは最初、STAP細胞はこれまでの万能細胞と異なり、眠っていた力を呼び覚まして自ら万能化することから、それを王子様にキスされて目覚めるお姫様になぞらえ、「P(プリンセス)細胞」と名付けようとしたようですが、さすがにそれはボツにされたとか。学校時代の友達や、先生、大学時代の恩師たちによると、とにかく頑張り屋だったということですが、それにもまして発想力がずい分他の人とは違っていたようです。テレビでどなたかが「五感が違う」と云っておられましたが、理屈の積み重ねである理系分野においても、斬新な発想にはやはり「五感」とか「感性」が非常に重要なことが分かります。その点は女性の方が理屈やメンツを重んじる男性より優れており、また、忍耐力でもずっと優れることから、今後のリケジョの活躍が大いに期待されます。

ところで今回の発見にはIPS細胞と同様、再生医療、新薬の開発などに多くの期待がかかります。それはそれで大変に喜ばしいことですが、ただ細胞を操作するということは「神の領域」に足を踏み入れることでもあります。今回の大発見に世界はただ驚いて見ているだけでなく、間違いなく猛烈な開発競争が始まるはずです。小保方さんの論文が英科学誌ネイチャーに発表された日に米メディアは、小保方さんを指導したハーバード大の教授たちの研究チームが、「すでにSTAP細胞を使って脊髄損傷をしたサルの治療を始めている」ことを伝えています。こうした競争の激化が倫理問題を置き去りにして、神の領域を冒すことにつながっていかないか非常に心配します。私も理系の人間の端くれとして思うのは、どんなに優れた薬にも副作用があるように、どんなに優れた技術にも必ず負の面があるということです。それが事前に予測できて対策が打てればよいのですが、多くはそれがごく微量の不純物の中に隠れていたり、想定外のことが起きないかぎり現れなかったり、開発段階では見逃してしまうことが多いのです。例えば福島第一原発の事故がそうです。事故が起きてはじめて「ああしておけばよかった」、「こうしておけばよかった」ということが云えるのであって、なかなか事前にはそれが分からず、あるいはそれを問題視せずに見すごし、事故が起きてはじめて負の面の重大さに気付くのです。しかし人間の技術力は想定外のことには全く無力で、泥縄式のことしかできず、解決するには天文学的なお金と多くの人の犠牲を必要とします。このように生産活動によって引き起こされる環境破壊や人的被害を「外部不経済」と呼ぶそうですが、本来はこれを内部化して生産できるようにしないかぎり経済は成り立たず、社会に甚大な不利益、不幸をもたらすだけになってしまいます。神の領域に入り込む医療活動が、今後こうしたとんでもない外部不経済をもたらす結果にならないことを願っています。

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