へどろから見た持続可能な世界ー有機農業
長期にわたるコロナ禍で疲弊した世界に、突如起きたロシアのウクライナ侵攻により、また新たな暗雲が垂れ込めています。戦争による被害は当事国、周辺国にとどまらず、エネルギー、食糧問題などで遠く離れた国々にも深刻な影響を及ぼしつつあります。ロシアはウクライナの小麦を、また自国の小麦、肥料についても戦略手段に使おうとしており、食糧問題は安全保障上、極めて重要であることが改めて浮き彫りになりました。
農産物のグローバル化は水の枯渇問題につながり、持続可能ではないことに前回触れました。肥料についても全く同じことが言えます。農産物の生産国では大量の化学肥料などが土から奪われ土が痩せていくのに対し、消費国ではそれが糞尿に変わり、富栄養化が進むのです。つまりいまのような一方通行は持続が不可能で、糞尿は生産国に送り返して「循環」させる必要があるのです。
また、化学肥料もいつまでも利用可能ではなく、原料となるリン鉱石やカリ鉱石は限られた国に偏在して政治的に利用されやすく、しかも有限なのです。窒素肥料は空気中の窒素から作ることができるので無限に思われますが、製造には天然ガスが必要であり、やはり有限なのです。
ではこうした肥料問題を一体どう考えたらよいのでしょう? その答えをキューバの挑戦が教えてくれます。1989年にベルリンの壁が壊されソ連が崩壊したとき、同じ社会主義国のキューバはソ連からの石油、肥料、農薬の輸入が突然ストップし、食料危機に直面しました。カストロ政権の崩壊も予想されました。そのときキューバは大規模に工業化された国営農場を民営化すると同時に労働者に分け与え、また、都市部のあらゆる空き地を小規模な菜園にすることを奨励しました。そして生ごみや牛糞を肥料に変えることで、好むと好まざるとに関わらず、持続可能な有機農業に国を挙げて取り組んだのです。そして10年を経ない内にキューバは世界の有機農業先進国となり、食生活は化学肥料・農薬なしで元の水準に戻ったのです。
農業は命に直接関わる産業であり、安全であるとともに持続可能であることが求められます。しかし現実はコスト的問題からグローバルで大規模な集中的生産が進み、水や肥料の枯渇問題、土壌の喪失問題など、真綿で首を絞めつけられるような状況が進みつつあります。
食料自給率を上げ、生ごみなどを活かした小規模な地産地消の農業を、真剣に考えるべきところに来ているのです。
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