へどろから見た持続可能な世界ーアニマルウェルフェア
「アニマルウェルフェア(動物福祉)」という言葉をご存じでしょうか? 日本ではこの制度導入に反対する鶏卵業界が、農水相に賄賂を贈ったことが昨年発覚し、この言葉が知られるようになりました。しかし欧米ではすでに厳しい法制化が進み、国際基準も作られているそうです。
動物福祉とはペットはもちろんのこと、実験動物や家畜のように最終的に殺したり食べてしまう動物に対しても、同じ感受性を持つ生き物として心を寄り添わせ、誕生から死を迎えるまでの間はできる限りストレスの少ない、行動要求の満たされた健康的生活が送れるように配慮した、飼育方法を指します。
しかし残念ながらいまの日本ではまだまだそういった認識は乏しく、ペットでさえ簡単に捨てられたり虐待されたりしています。家畜に至っては、産卵用ニワトリは身動きのできない狭いケージに閉じ込められ、エサを与えられるだけでタマゴを生み続けることを強要されています。ニワトリは当然、強いストレスにさらされて病気になります。するとエサに抗生物質を混ぜ、病気にならないような予防処置がとられます。ブロイラー(食肉用若鶏)の飼育も同じです。
牛や豚の畜産も似たような状況です。安い食肉を供給するには生産効率を高める必要があり、1頭当たりの居住スペースは狭く、飼育環境は悪くなります。しかも「霜降り」という高級肉を生産するには、牛に本来の牧草の代わりに栄養豊富な大豆やトウモロコシを与え、運動を制限して強制的に「メタボ」にする必要があります。当然、牛は病気になりやすく、抗生物質による予防措置が取られます。
抗生物質とは「細菌を殺す薬」で、病原菌の増殖や機能を阻止するものです。病気の治療に抗生物質を使うだけなら少量で済みますが、病気になってもいないのに予防目的で過剰に抗生物質を与え続けると、抗生物質に耐える「耐性菌」を生む危険があり、この耐性菌に感染して病気になった場合は抗生物質が効かないことになります。つまり動物を奴隷のように扱うことにより、家畜から人への耐性菌の感染が広がり、治療も拡散制御も不可能な伝染病を発生させる危険があるのです。だからアニマルウェルフェアが非常に大事であり、「有機野菜」といっても耐性菌を含んだ鶏糞、牛糞、豚糞を使った野菜はお勧めできないのです。
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