フィトケミカル
中学生のころ家庭科の授業で、「五大栄養素」について勉強しました。炭水化物と脂肪はエネルギー源に、タンパク質は身体を作る材料に、また、ビタミン、ミネラルは少量で身体の調子を整え、潤滑油のような働きをすると勉強したように覚えています。そして試験で「ほうれん草」の栄養素を問われ、当時ポパイの漫画が流行っていて、筋肉隆々のポパイが何か難題に直面すると必ずほうれん草を食べていたことから、「タンパク質」と解答したこと、ビタミンを最初に発見したのは日本人の鈴木梅太郎だったが、世界に知られるのが遅れ第一発見者になれなかったという話しに、悔しい思いをしたことなどが懐かしく思い出されます。「食物繊維」についても勉強し、女の先生が「サツマイモなどに多く含まれ腸の運動を活発にします。だからサツマイモを食べるとオナラがよく出ます」と、恥ずかしそうに教えてくれたのを覚えています。ただ当時は食物繊維に栄養素と云う認識はなく、単に大腸の運動を促して便秘を防ぐ物質という程度の捉え方でした。しかしその後この食物繊維に血中コレステロールや血糖値を正常に保ち、心筋梗塞、糖尿病、脂質異常症、動脈硬化など、生活習慣病の予防に効果のあることが認められるようになり、いまでは「第6の栄養素」と呼ばれる様になっています。
ところで最近、第7の栄養素として「フィトケミカル」という物質が注目されるようになってきました。いつまでも若々しく、美しく生きたいというアンチエイジングの研究と共に発見されるようになったのですが、フィトケミカルのフィト(phyto)はギリシャ語の「植物」で「植物由来の化学成分」を意味しますが、「植物性生理活性物質」とも呼ばれたりしています。食物繊維と同様に5大栄養素とは異なり、これを摂らないと特有の欠乏症を起こして最終的に死に至るといった、「生命の元」となるような栄養素ではありませんが、健康増進とか病気予防に極めて有効と云われ、カテキン、ポリフェノールなどがよく知られています。植物は動物と違って自分の好きなところへ移動することができず、過酷で変化の激しい環境でも生きていかねばなりません。だから動物とは違った自己防衛力を授かっていると云われます。つまり強い紫外線や風雨に耐え、細菌や害虫、あるいは動物から身を守るためには、「抗酸化力」、「抗菌力」の他に、色素や香り、アク、渋み、苦みなどで身を守る必要があるのです。そうした防御物質は1万種はあると云われ、今現在1,000種類ほどが確認されているそうです。中でもその抗酸化作用は老化や万病の元と云われる「活性酸素」を除去するのに有効で、アンチエイジングやガンなど生活習慣病の予防に大きな効果が期待されています。私たちは酸素を吸って生活しているので、放っておくと鉄が錆びるように酸化して朽ち果てる運命にあります。ミトコンドリアが活性酸素を発生し、他にも紫外線や食品添加物、タバコ、油分の多い食品などが活性酸素を発生させて身体を体内から虫食むからです。だから生命を維持するためには活性酸素を還元してやる必要があり、フィトケミカルがその重要な役割りを担っているのです。
野菜の優れた点は、各種のビタミン、ミネラルの他に食物繊維、フィトケミカルを豊富に含んでいることで、それを十分に食べると体内の代謝を活性化し、タンパク質など他の栄養素の吸収も良くなり、免疫力が高まってガンなどの病気予防だけでなく、いつまでも若く、美しく生きる身体づくりができるのです。ただしそうした栄養素は皮の部分に多く含まれると云われ、だからよく洗って丸ごと食べるのが理想的です。私たちが生ごみ堆肥の露地栽培で、無化学肥料・無農薬・無畜糞堆肥にこだわった野菜づくりを進めているのも、健康な野菜を丸ごと食べてほしいからです。なお、和食は糖質のご飯を中心に、タンパク質中心の主菜、野菜中心の副菜、それに味噌汁と云う献立で、5大栄養素の他に食物繊維やフィトケミカルがバランスよく摂れるようにできています。和食が世界で注目されるようになった理由が理解できます。
中村丁次;けんこう325、NPO全日本健康自然食品協会
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