2016年12月28日水曜日

この1年を振り返って

 気がつけば今年もあと数日で年の瀬を迎えます。歳を取ると時間の進みが速いと言いますが、特に最近、そのように感じます。やらねばならないことは一杯あっても、若い時のようにテキパキことが進まず、はやる気持ちがそのように感じさせるのかもしれません。
 
さて、私たちは「エコの環」事業の自立を目指しています。しかし野菜を栽培してくれる人たちに出来るだけ多くの分配金を渡し、一方で生ごみ処理のアルバイト費、作業場の家賃を捻出しようとすると、どうしても月に最低12万円(年額にして1,440千円)ほどの野菜の売り上げが必要となります。右図は野菜販売額の推移ですが、まだまだ自立には程遠い状態です。そこで今年度は何とか月に10万円の売り上げ(年額1,200千円)を達成しようと、少し厳しい目標を立てスタートしました。京都府のソーシャル・ビジネスプログラムの支援を受けている間に、自立体勢を整える必要があるからです。
 そして6~8月と何とか目標額を上回る売り上げを達成しました。正直、この3ヶ月間は野菜の袋詰めにウンザリするほどの出荷量がありました。しかし8月の後半から出荷量が減り始め、例年9月は端境期で出荷量が落ちるのでその影響と思っていたのが、10月になっても回復しません。「あれッ?」と思っている内に9~10月の販売額が、前年度を大きく割り込んでしまいました。丁度そんな頃テレビが天候不順による全国的な野菜の高騰を盛んに報じるようになり、私たちの「エコの環」野菜も天候の影響を受けていることを知りました。かといって野菜の値段を急に上げることもできず、しかもシカやイノシシ、カラスなどによる獣害が重なり、年額1,000千円の達成も厳しい状況になってしまいました。
 もちろん私たちも野菜の他にギンナンを拾いに行ったり、ブルーベリーや甘夏を栽培者に代わって採取したり、黒ニンニクを作ったり、あるいはコロッケ、巻き寿司などをもって市に出かけたり、いろいろ努力もしましたが、野菜出荷量の減少には追い付かず、天候次第の農業の難しさを思い知りました。
 しかしそうした中にも、「このあいだの〇〇〇、メッチャおいしかったよ」、「△△△、もっと欲しいんだけど」、「他の野菜とは味が違う」といった声をよく聞くようになり、また、「この野菜を食べ始めて体調がよくなった」という声も3人ほどの人から寄せられ、そうした声が本当に大きな励み、支えとなって頑張ることが出来ました。

 ちーたび「昭和40年頃の味探訪シリーズ」も2回実施し、来年1月に3回目を予定しています。こうした料理教室を実施するなかで、私たちも健康について随分学ぶことができました。そしてアメリカで発表されたマクガバン・レポート(1977)が、なぜ現代病は「食源病」であると言ったか、なぜ日本食を世界で最も理想的な食事として推奨したかが分かるようになりました。日本食はご飯を主食にダシを使った野菜の煮物が中心で、肉、油をあまり使いません。そうした一汁三菜の食事なら腹いっぱい食べてもメタボにならないのです。がん、心臓病、糖尿病などの現代病になりずらいのです。これからも健康を考える料理教室を再々開催し、「1日350グラム以上の野菜と200グラム以上の果物を食べる」ことを呼びかけていきたいと思っています。
 
 ところでへどろヒートポンプですが、目の前に現物が無いとなかなか理解してもらえません。実験費用がなく長く足踏み状態が続いていましたが、幸いここに来てある業者が「養殖魚の生けすの水温低下」にへどろヒートポンプが利用できないか実験し、可能性のあることを実証してくれました。また、府立海洋高校が授業の一環としてへどろヒートポンプの実験に取り組み始めました。温暖化対策が急がれるなか、来年こそ何とか実用化装置の開発に取り組みたいと考えています。

 良い年をお迎えください。

 

 

2016年12月14日水曜日

楽市楽座

 宮津市由良のある民家で、月に一度「楽市楽座」という市が開かれています。これに家内と小西さん(すゞ菜の女将)が、「エコの環」野菜の宣伝をかね、野菜、コロッケ、巻き寿司などを持って販売に出かけました。私はたまたまその日はある行事と重なり、出かけられませんでしたが、家内は大根、かぶ、里いも、白菜菜、小松菜などの野菜、小西さんは「エコの環」野菜を使って下準備をしたコロッケ、そして小松菜、ごぼう、ゴーヤの佃煮などの入った巻き寿司をもって出かけ、コロッケは現場で揚げながら販売したそうです。


楽市楽座の様子

 この市、実は私も昨年だったか一度、「エコの環」野菜の販売に出かけたことがありました。その時は参加料の1,000円をケチり、民家の外で買い物に来たお客を相手に販売を行ったのですが、全然立ち寄ってもらえず、チラシ配りに終わった苦い、寂しい経験があり、今回は参加料を払って民家の中で販売するとはいえ、果たしてどれほど売れるか心配でした。

野菜とコロッケ、巻き寿司などの販売

 後で状況を家内に聞くと、コロッケは全部で40個、巻き寿司は全部で10本持って行ったものが完売で、野菜についても半分ほどが売れたそうです。「すゞ菜」のお客さんが結構訪ねてきて買ってくれたようで、小西さんの事前の呼びかけが大きかったのと、コロッケは揚げ立ての温かいものが魅力的だったのかもしれません。改めて女性の行動力というか底力に感心させられました。

そして参加料はやはりケチるべきではなかったと反省させられました。

2016年12月4日日曜日

ふるさと産品

 ふるさと納税という制度があります。具体的内容はあまり詳しく知りませんが、財政的に比較的ゆとりのある都会と、苦しい田舎の税収格差をなくすため、都会に住む人たちが自分の納める住民税を自分のふるさとや、あるいは好きな地方の町に収めることを可能にした制度だったと思います。
 こうした都会からのふるさと納税を集めるのに、本来は地方の町が「こうした政策にお金を使わせていただきます」と、魅力的な政策をアピールして納税獲得を目指すべきなのでしょうが、地方の特産品を送って喜ばれる方が効果的なため、いまはいかに豪華な特産品で税金をかき集めるかの競争になっているようです。

 ところで私たちが進める「エコの環」ですが、本来、その目指すところは地域の生ごみを栄養豊富な野菜に変え、地域で消費して健康増進に役立てる「地域完結型の循環」です。したがってこれまで地域外の人から野菜を譲ってほしいと言われても、あまり積極的な対応はとってきませんでした。しかし販売量を増やそうとする一方で、なかなか地域での購買者開拓が進まないなか、いつまでも正論に固執しているわけにもいかず、今年から欲しい人がいたら宅配を使っても対応するようにしました。

 こうしたこともあり今年の9月、宮津市の「ふるさと産品」に申し込んでみました。少しでも「エコの環」野菜の良さが外部に伝わり、それが地域に跳ね返ってくることもあるのでは、といった淡い期待もあってのことでした。そして3,000円相当の野菜の詰め合わせが、6~8月、10~12月の間にそれぞれ3箱づつ提供可能と申請しておきました。例年9月は端境期で野菜の出荷量が少なく、9月を外しておいたのですが、今年は天候不順の影響か10月、11月になってもなかなか出荷量が伸びず、正直、注文が来たらどうしようとひやひやしていました。そんな11月22日、「野菜の詰め合わせ」の送付依頼が3箱、Faxで送られてきました。
 やっと少し出荷量が上向き始めていたときだったので、その点は助かりましたが、通常の出荷日の翌日であり、今度は送る野菜の品揃えに生産者の皆さんに無理を頼み、また、送る野菜に問題があっては大変と、家内と2人でピリピリしながら袋詰め、梱包を行いました。何とか大根、かぶ、ピーマン、パプリカ、いんげん、水菜、ニンジン、ごぼう、里いも、さつまいもの10品の詰め合わせができ、価格的には問題ないと思っていますが、果たしてどんな感想を持っていただけたか、いまは不安と期待の入り混じった気持ちでいっぱいです。

2016年11月21日月曜日

野菜販売の集計

 いま、全国的に野菜が非常に高騰しているようです。その影響で三重県鈴鹿市では、学校給食の2日間休止を決めたそうです。その後その決定は撤回されましたが、1日分は災害時用の備蓄食で対応するといいます。休止はしないまでも、献立の変更や野菜の変更はかなりの学校で行われているようです。この異常事態の原因には、台風や秋雨前線による天候不順の影響が大きいようです。そういえば私たちの「エコの環」野菜も、例年9月は端境期で出荷量が落ちるのですが、今年はいまに至っても出荷量が全然回復せず、やはり天候の影響が大きいのかなと思っています。栽培者の皆さんに聞いても、「ニンジン、小松菜の種をまいたが発芽しない」、「全然大きく育たない」、「大根、白菜が虫にやられ全滅だ」などといった声が返ってきて、出荷量の回復が心配されます。

 ところでいま、従来の野菜販売の集計方法を大きく見直しています。というのも野菜販売額が大きく伸びてきたのは有難いのですが、それに伴って毎月の集計作業量が増え、特にこの夏の販売額が10万円を超えた2ヶ月間は、野菜の出荷準備、販売もさることながら、その集計に大変な労力を要したからです。

 いまやっている集計作業を簡単に紹介すると、毎週木曜日の販売日に合わせ、前日の夕方から野菜が集まってきます。そこでそれを洗ったり、不良部分を取り除いたりしながら計量、袋詰めをします。そして京都生協のチラシを参考に、家内ともう一人の女性とで販売単価を決め、栽培者、野菜名、出荷個数、販売単価を記した「価格表」を作成します。木曜日当日も早朝から同様の作業を続け、その後その「価格表」を持って訪問販売に出かけます。販売から帰ると家内はすぐに出荷伝票、メモを頼りに、販売先ごとに野菜名、栽培者名、販売個数、販売額をノートに記帳し始めます(「販売表」)。在庫管理も含めたこの作業が結構大変で、1回の販売につき2~3時間かけています。
栽培者の集計表
1ヶ月経ったところで、今度は私が家内のノートをパソコンに転記します(「集計表」)。そして販売額、手数料、栽培者分配金、NPO収益などを同時に計算します。この表を基にピボットテーブルというエクセルの集計ソフトを使って、掛け売りの販売先には日付、野菜名、販売個数、販売額の集計表を作成し、請求書を作ります。栽培者には日付、野菜名、販売個数、分配金の集計表を作成し(右図)、領収書を作ります。この作業も結構大変で、5~6時間かかります。

 以上のやり方では野菜の出荷量が増えてきたとき、作業量が膨らむばかりで大変です。作業量をもっと減らすにはどうしたらよいか、たまたま帰ってきた子供たちの知恵も借りながら、以下の方法を考えました。

 まず、予め栽培者ごとに野菜名を列挙した表を作っておきます。そして野菜の販売単価が決まったとき、パソコン上のこの表の所定欄に出荷個数と販売単価を入力します。この作業量は現在の作業量と大差ありません。入力し終わったら表をフィルターにかけ、未入力の行を削除すると出荷野菜についての「価格表」ができあがります。

 次にこれを販売先を縦列に配した下表の左端にコピーすると、販売先A、B、C・・・ごとの「販売表」ができるので、あとは販売先ごとに野菜の「販売個数」だけを入力すれば、販売額、販売残の個数、栽培者の分配金、NPOの収益などが計算され、「販売表」の作成時間は大幅に削減され、「集計表」は作る必要がなくなります。



 早速、家内にパソコンの「販売表」に「販売個数」だけの入力を試してもらいました。しかしここで大きな問題の発生することが分かりました。折角苦労して決めた「価格表」の販売価格が変わるのです。どういうことかというと野菜が売れ残ったときとか、つり銭や買い手に細かいお金がないような場合、どうしても販売価格を下げるようなことが発生するのです。また、先週、先々週からの在庫(サツマイモとかカボチャなど)を持って行って販売することもあり、すると販売価格を変えるごとに、また、在庫の野菜を売るたびに「販売表」に新たな行を加え、新たな価格、野菜名を入力する必要が生じるのです。この新たな入力が結構多く、パソコンに不慣れな家内には結構大変な作業でしたが、それでも40分ほどで「販売表」を作ることができました。これで時間の短縮はかなり改善されましたが、新たな行を作成すると在庫の計算が難しくなり、それをどうするかいま思案しているところです。


 
 

2016年11月1日火曜日

一汁三菜

 「一汁三菜を作ってみよう」のちーたびを行いました。昭和40年頃の味探訪シリーズとして、当時私たちは日常的にどんなものを食べていたかを思い出し、味わってみようという試みで、参加者は6名でした。

 最初に「ほしいもの会」(丹後アレルギーを考える会)代表の青木さんから、「なぜ昭和40年頃の味?」と題してお話をして頂きました。青木さんはアレルギーがまだそれほど認知されていなかった1988年頃、同じ悩みを持つ親御さん同士の交流を始められ、周囲の無理解とも闘いながら、懸命に子供さんのアレルギーと闘ってこられました。そして長い歴史の中で創られた身体の消化吸収の仕組みが、高度成長期以後のわずか40年間に起きた食生活の激変について行けず、悲鳴を上げていると感じ、だから食生活の改善が最も大切で、激変が始まる前の昭和40年頃に立ち戻る必要があると話されました。また、いまはあらゆるものに化学物質・電磁波が利用されているため、そうしたものへの過敏症が増えており、「衣食住」全体の見直しも必要と話されました。

 次にすゞ菜の女将、小西さんより、一汁三菜の調理法を学びました。汁はサツマイモの味噌汁、主菜は焼き魚(いしもち)、副菜は野菜の煮物(里芋、ごぼう、にんじん、いんげん、こんにゃく、油揚げ)、副副菜は白和え(春菊、小松菜、ヒジキ、にんじん、こんにゃく、豆腐、ごま、味噌)で、ごはんは白米に丸麦を5%ほど混ぜて炊きました。小西さんからは特に「ダシ」の取り方に力を注いでもらいました。味噌汁を作るとき、じゃことコンブを入れたザルをサツマイモと一緒に鍋に入れると、サツマイモをゆでながらダシが取れる裏ワザには、皆さん感嘆の声を上げておられました。ダシは洗い物などをしながら2日分ほどを作り、冷蔵庫に入れるようにすれば、作るのが全然負担にならないと説明されていました。インスタントのダシも皆さんに味わってもらいましたが、「味が後に残る」というのが共通の声で、小西さんによれば「ダシをしっかり取れば砂糖が減らせ、塩も減らせる」ということでした。
サツマイモを煮ながらのダシ取り

 丁度お昼の時報と共に料理の盛り付けが終わり、全員で料理を頂きました。私の方から「本日使った野菜はすべて生ごみ発酵肥料で作った「エコの環」野菜である」と紹介しましたが、「ダシの味がさっぱりしていて野菜の味がよく出ている」との声を聞くことができました。愉快だったのは2歳の子供さんが2人、1歳の子供さんが1人、2人のお母さんに付いて来ていたのですが、その子供さんたちが白和えをパクパク食べたり、「ごぼうがおいしい」と野菜の煮つけをおかわりしたり、味噌汁も「おいしいんだもん」といって何杯もおかわりしてくれたことです。普通子供は野菜を嫌がるだけに皆さんもビックリで、青木さん、小西さんからも「こんな小さい子供がおいしいと感じるのは本能的な感覚であり、やはりダシはしっかり取ってあげてほしい」と呼びかけがありました。


 昼食後に交流会を持ちました。始めに私の方から「いま食べた昼食で、魚の頭や骨の食べ残し、野菜の調理屑が大分発生しましたが、それが全部発酵肥料になり、また新たな「エコの環」野菜に変わります」と説明すると、皆さん大きく頷いておられました。次にスライドを使って「玄米菜食の食事をしておれば、ガンを始め生活習慣病の心配はまずないそうです。しかしそうした食事では早く枯れた仙人タイプになりやすいので、もう少し逞しく活力ある身体を望むなら、魚を加え、たまに肉を食べるぐらいが良いそうです。昭和40年ごろ日常的に食べていた「一汁三菜」はまさにそうした食事であり、腹いっぱい食べても代謝が活発でメタボになりづらく、健康的に最も優れた長寿食と言えそうです。私たち人間も結局は動物であり、あまり美食に走らず、身体を常に動かすことでよい汗をかき、体温を上げ、酸素を十分に取り込む生活をしておれば、健康長寿は間違いないそうです」と話しました。皆さんからは「ダシの大切さを再認識した」、「短時間に簡単にできるので、今日から始めたい」、「食事の大切さを知った。さらに学びたい」、「持続可能な「エコの環」野菜に興味を持った」などの感想が寄せられました。

2016年10月17日月曜日

昭和40年頃の食事

 昭和40年頃の味探訪シリーズ「カレーを作ってみよう」(7月)に続き、第2弾「一汁三菜を作ってみよう」を計画しています(10/29)。日本の医療費は「食の欧米化」に伴い急激な膨張を始め、いまでは40兆円を超え、医療制度の破たんが心配されていますが、医療費の推移から判断すると、昭和40年頃の食事が一番良かったのではと考えたからです。

 そんなとき「昭和50年の食事で、その腹は引っ込む」という本を知りました。早速読んでみると、厚労省が毎年アンケート調査をしている一般家庭の平均的食事から、昭和35年(1960)、昭和50年(1975)、平成2年(1990))、平成17年(2005)の食事を選び、それを実際に作ってマウスに8カ月間食べさせ、そのときの健康状態を調べた結果が記されています。それによると体重、老化度、肝がん発症数、糖尿病リスク、認知症リスク、いずれにおいても昭和50年の食事(下図右側から二番目)が最もよく、それ以降(左側)は急速に悪化が進行し、一方、昭和35年(1960)の食事(一番右側)も結果はよくなかったといいます。そしていずれのグラフも見事なくらいに同じ傾向を示したそうです。


肝がんの発症数

 著者によると昭和35年(1960)の食事はまだ戦後の影響が抜け切らず、ごはん中心の食事でおかずの数が少なく、しかも塩辛いものが多く、貧栄養で健康的にはよくなかったといいます。しかし昭和50年(1975)になると洋風料理が少し取り入れられるようになり、栄養が大幅に改善され、バランスも良く、それが健康に非常に良い影響を与えたといいます。しかし洋風化がさらに進むと健康的には却って悪い影響が出始めると説明しています。医療費の推移から見ると、昭和50年(1975)にはすでに急激な増大が始まっており、もう少し年代を細かく区切れば、むしろ昭和40年頃の食事が一番良かったのではと考えています。

 ところである免疫学の先生によると、免疫力が最も発揮されるのは食事のタンパク質の量が10%ぐらいのときだそうです。その食事はがんや他の大病から免れやすく、治りも早いといいます。ではタンパク質10%ぐらいの食事はどういうものかというと、「玄米菜食」を厳しく行ったときの食事で、肉や魚をほとんど食べない食事だそうです。肉や魚を食べなくても大豆やキノコからタンパク質は補え、栄養バランスはよく、しかも食物繊維が十分に摂れるからです。ただしこうした食事は長寿ではあっても早めに枯れた感じになりやすく、つまり「仙人タイプ」の体形になりやすく、だからがんに罹っているわけでなく、気迫や活力がもっと欲しい場合は、魚(できれば丸ごと食べられるもの)の量を増やし、たまに肉を食べるくらいがよいそうです。肉料理はタンパク質の量がすぐに40%くらいになってしまうからです。つまり洋風料理をわずかに取り入れた和食(昭和40年頃の食事)が、健康には一番良いということになります。

 昭和40年頃の私たちは一体どんなものを食べていたか、それを知るためのちーたび「”一汁三菜”を作ってみよう」を10月29日(9:30~14:00)に計画しています。場所は吉津地区公民館(宮津市須津1031)で、参加費は1,200円、定員8名です。ほしいもの会(丹後アレルギーを考える会)代表の青木伸代さんから「なぜ昭和40年頃の味?」の話を聞いた後、地産地消の店”すゞ菜”の女将の指導を受けながら料理を作り、試食したいと考えています。奮ってご参加ください。

昭和50年の食事で、その腹は引っ込む;都築 毅、講談社+α新書、2015
大往生できる生き方 できない生き方;阿保 徹、PHP文庫、2013

2016年10月4日火曜日

身体のひずみ

 2週間ほど前、突然目まいがして吐き気を催しました。経験したことのないことでびっくりすると同時に、「何だろう?」と不安な気もちで倒れ込むように横になりました。そのとき家内が身体をさすってくれましたが、そうした中で肩が非常に凝っていることが分かり、整骨院に出かけました。整骨院は腰痛で2度ほど行ったことがありますが、肩こりでは初めてのことでした。診断は「首がストレートネックになっており、その影響で首と肩がかなり凝っている」とのことでした。ストレートネックとはパソコンなどで長時間同じ姿勢を取っていると、首の反り(クッション)が無くなり、それが首や肩に負担(ひずみ)を与え、凝りを起こすのだそうです。首を揉んでもらうと目にジンジンと痛みが走り、相当凝っているのが感じられました。結局、長時間身体に同じひずみ(ストレス)を与えることで血流が阻害され、それが目まい、吐き気につながったと考えられました。改めてリラックス(身体のひずみの解放)の大切さを実感しました。

 そんなときある本で、食事でも「偏食」は内臓に大きなストレス(ひずみ)を与えることを知りました。内臓による食べ物の消化・吸収には非常に細かい役割分担があり、バランスの良い食事の場合は消化・吸収するのに内臓全体が均等に使われ、身体への負担は小さいのですが、偏食の場合は一部の吸収機構しか利用されず、負荷のかかる内臓に大きなストレスがかかり、利用されない吸収機構は退化するため、身体にひずみが溜まっていくのだそうです。

 ところでいま日本ではサプリメントが大流行で、市場規模は1兆5000億円にもなるそうです。本来は食事からとるべき栄養が、サプリメントで手っ取り早く補えると考えるからだと思います。しかし例えばナッツ類に多いビタミンEの場合、その吸収にはナッツに含まれる良質な脂肪が必要不可欠であり、ビタミンEだけを飲んでもほとんど吸収されないといいます。だからサプリメントでビタミンEを摂るよりアーモンドを食べる方がずっとよく、こうしたことはすべての栄養に言えることだそうです。つまり食事から栄養を摂る方がはるかに効率的なのです。そんなサプリメントに対しサプリメント先進国のアメリカで、ある大学の研究チームが12年間にも及ぶ追跡調査より、「サプリメントに健康効果はなく、十分な栄養を摂っている人にはむしろ害になる可能性がある」と発表し、物議をかもしているそうです。しかし考えてみればサプリメントは「偏食」の最たるものであり、薬の副作用と同じで、身体にストレスを与えないと考える方がおかしいかも知れません。

 コカの葉は南米では古くからお茶として飲まれています。しかしそれを精製するとコカインという麻薬になります。つまり不純物を取り除き純度を高めることは、身体にとって相当なストレス(ひずみ)を与える物質に変わることが考えられます。その意味では純度99.9%以上の食塩、あるいはグラニュー糖などもそうした危険性があるといえます。ある本に、食塩を得るとき取り除くミネラル量は、他の食品から得られるミネラル量よりはるかに少なく、高純度の食塩を使うことに何ら問題はないとありました。しかし私自身は自然塩の方が不純物のミネラル分が一種の「オブラート」として働き、身体へのストレスを和らげてくれるように思うのですが、どうでしょうか。

都築 毅;昭和50年の食事で、その腹は引っ込む、講談社+α新書(2015)

2016年9月19日月曜日

タネ取り

 この自然界には異なる種の間では生殖できない、「種の壁」というのがあります。しかしいまのバイオテクノロジーは簡単にこの壁を破り、自然界では決して交じり合わない品種同士から、全く新しい品種を作り出すことができます。そして多収穫で成長が早いとか、甘くてやわらかいといった生産者の都合や、消費者の嗜好に合わせた品種がドンドン作られています。
熟成したトマト


 いまの野菜がまるで工業製品のようにサイズが揃い、収穫も一度にできて、早く次の作付けに移ることができるのは、まさにこうした技術に負っています。しかしこうした野菜は自ら次世代のタネを残すことができず、一代限りのタネ(F1)であるため、タネは毎年種子会社から買わなければなりません。つまりいまの農業は完全に種子会社に支配されていて、市場に出回っている野菜もほとんどが採種のできない(生命の継続がない)野菜ばかりで、果たしてこうした野菜を食べ続けて私たちの身体は大丈夫なのだろうか、そんな疑問からここ数年、ナス、トマト、キュウリ、いんげんなどの固定種のタネ(味や形が固定された雑種化してないタネ)を買い求め、その野菜からタネを取り続けることで、「エコの環」野菜固有のタネづくりを目指してきました。しかしいざ野菜が育つと、その出荷・販売に気を取られ、うっかりタネ取り用のよくできた野菜を残すことを忘れ、タネ取りができないまま過ごしてきました。
タネのもみ出し

 そんなときトマトの茎に一つ大きく成長したのを見つけ、それを熟成させてタネを取ることにしました。トマトは熟成しすぎたのか一部腐りかけていましたが、タネの入っていた袋に書いてある採種法にのっとり、早速タネ取りにチャレンジしました。


 まず器にタネをもみ出します。大きな割にタネが少なく少々がっかりでしたが、そのまま放置すると発酵が始まるので、その状態で2~3日保持します。その後に水洗いしてタネを新聞紙に広げ、太陽光で乾燥すると完了ですが、タネ取りの後は曇天や雨の日が続き、太陽光での乾燥は十分に出来ていません。ただ、タネ取りは思っていた以上に簡単で、これなら来年からも継続して出来そうです。いまはこのタネによるトマト作りが楽しみです。
採取したタネ



2016年9月8日木曜日

獣害事件(つづき)

 今年のお盆はおばあさん(家内の母)の初盆ということで、遠方の親戚も集まり、久々ににぎやかなお盆となりました。そのとき家内が「エコの環」野菜を持って行き、それで料理を作って皆に食べてもらったのですが、いつも「玉ねぎは淡路産に限る」といっていた義兄が突然、「この玉ねぎ、うまいナ-」と大きな声でいいます。家内が「私たちが作ったものだ」というと、「ヘー」とびっくりしていました。そこでお盆明けに玉ねぎのほか、数種類の「エコの環」野菜を送ってあげると、「ナスが無茶苦茶おいしかったワー。また送ってほしい」とうれしい返事をしてきてくれました。

 こんな声を聞くと獣害で凹んでいた気持ちもすっかり癒え、また何かを育てようという気持ちになるから不思議です。早速、荒らされた畝をはじめ他の畝に、いんげん、葉大根、レタス、ほうれん草などの種をまきましたが、するとそれら野菜の成長が、新たなわくわくした期待感となって、待ち遠しく感じられました。

 次に獣が通ったと思われる鉄筋防御柵の下の穴の部分には、トタンを内側、外側の両側に置き、それを10mmφの鉄筋を打ち込んで両側からガッチリ固定しました。中央部のわずかに残る凹み部分にも鉄筋を打ち込み、潜れないようにしました。対策にはかなりの執念がこもっており、サル以外は大丈夫ではと思っています。

 ブログをここまで書き終えたとき、家内が野菜の販売から帰ってきました。そして2軒の家から前回売ったキュウリに対し、「ムッチャクチャおいしかった」と全く同じ表現での感想があったと、うれしそうに報告してくれました。特に1軒の家では「一週間置いてもシャキシャキ感が変わらず、本当においしかった」といわれたそうです。家内も最近の私の口癖に倣い、「ミネラルが多いからだと思います」と応えておいたそうですが、実際、長持ちしたりおいしいのは、ミネラル分の影響が大きいと思います。

 今夏もキュウリ、ピーマンのガチンコが多く、販売では正直、随分悩み苦しみましたが、しかしそうしたうれしい便りは、そんな悩み・苦しみを一瞬に吹き飛ばしてくれるから愉快です。

2016年8月30日火曜日

宮津方式

 いまから6~7年前になりますが、京都府の委託事業「宮津エコの環構築研究事業」に取り組みました。丁度、ゼオライトを使った生ごみ発酵処理法(宮津方式)を開発したばかりのころで、「たいぞう君」という生ごみ処理機を全部で22台作成し、市内の旅館、料理屋、農家などに置かせてもらい、月に2トン近い生ごみを処理しました。そしてできた発酵肥料を集めてある専業農家で野菜を作ってもらい、その野菜を市内で販売消費する「エコの環」を検討しました。
 
撹拌機をつけたたいぞう君
しかし①生ごみ処理は個人差が大きく、また継続的な処理が難しいこと、②専業農家による無農薬野菜の栽培は難しいこと、③「エコの環」は小さな環の方が回しやすいことなどが分かり、事業終了後の2012年度からは、いまのような地域の高齢者の力を借りた「エコの環」づくりに取り組み始めました。そして22台のたいぞう君の内、その後使われなくなったもの(約14台)を少しづつ引き上げ、それに耕運機の羽根で撹拌機を装着し、再利用するようにしてきました。

 今年も放置されていた2台を引き上げて改造し、たいぞう君は全部で7台になりました。するとそれを納める小屋の拡張が必要となり、盆明けの暑いさなかに汗でドロドロになりながら、その拡張工事をしました。
小屋の拡張作業

 ところで私たちの生ごみ発酵処理法(宮津方式)では、発酵に「ゼオライト」を使います。ゼオライトってなに? なぜゼオライトを使うの? と疑問に思われる方も多いので、簡単にゼオライトについて説明させて頂きます。

 ゼオライトというのは粘土の一種で、その埋蔵量と質において日本は、世界でも抜群の国といえます。ゼオライトの優れた性質としては表面が強くマイナスに帯電していて、プラスイオンを非常に吸着し易いことと、多孔質で臭気性ガスや水蒸気、空気などを吸着し易いことがあります。福島第一原発事故ではセシウム(Cs+)の吸着除去に利用されました。こうした性質は土壌微生物が繁殖しやすい、肥料成分を吸着しやすいといったことにも威力を発揮するため、発酵材としては最高の資材と考えられ、私たちが生ごみの発酵に利用する理由であります。実際、ゼオライトを畑に入れると、化学肥料や農薬で傷んだ畑の土が土壌微生物が繁殖しやすい生きた土に若返り、肥料成分の雨や風による流失が抑えられることから、政令指定の土壌改良資材にもなっています。しかし生ごみの発酵処理に利用しているのは多分私たちだけであり、「宮津方式」と呼んでいる理由であります。

 私たちの「エコの環」野菜は甘くておいしいとよくいわれます。植物は根から栄養分を吸収して成長しますが、実はそのとき根の先にいる土壌微生物の働き(栄養分の橋渡し)が重要で、土壌微生物がいっぱいいる生きた土でこそ、元気で美味しい野菜は育つのです。ゼオライトにより「エコの環」野菜の畑には土壌微生物と生ごみからのミネラル分がいっぱいあり、これが野菜がおいしい理由だと考えています。なお、このゼオライトは阿蘇海のへどろから作ることが可能であり、そもそもはそれが生ごみの発酵にゼオライトを使い始めた第一の理由です。





2016年8月22日月曜日

またまた獣害事件!

ニンジン畑
栽培者から出荷された「エコの環」野菜の販売準備をしていると、一緒に畑仕事をしている人から、「また、畑がやられた。」と連絡がありました。あとで出かけてみると、出荷できるばかりに成長していたニンジンが、見事なほどに全部食べられていました。私たちの畑のニンジンは甘くておいしいと好評であり、出荷を楽しみにしていただけに、ショックというか強い脱力感に襲われました。この畑はこれまでにも3度ほど獣に荒らされ、その都度いろいろ防御対策をしてきたのですが、まさにイタチごっこというか、これだけ何度も荒らされると、気力も失せてしまいます。


害にあったニンジン畑
これまでは相手をシカと見て、もっぱらネットやビニール紐・針金を高く張る対策をしてきました。しかし今回の荒らされようはどうもシカではなく、そこで畑の周りを注意して調べると、一か所、鉄筋防御柵の下の方が折り曲げられ、すき間の出きている所が見つかりました。どうもそこから潜って入ったようで、そうなるとイノシシということになりますが、つい1ヶ月ほど前、近所に小熊が現れたこともあり、小熊の可能性も否定できません。いずれにしてもイノシシやクマが相手では、鉄筋防御柵もあまり役に立たず、どうしたものかと思案していると、すぐ横をサルがゆうゆうと通っていきました。我が家から200mも離れていない場所ですが、まるで野生動物園さながらの状況で、人口減少の影響か、野生動物がジワリジワリと私たちの周りに、押しよせて来つつあるのを感じます。
壊された鉄筋防御柵




2016年8月1日月曜日

50℃洗い

 最近、新聞やテレビで「酵素」に関する話題や広告をよく目にします。酵素というと私たちはすぐに「消化酵素」を思い浮かべます。しかし酵素には「代謝酵素」というものもあり、吸収した栄養を細胞内で有効活用したり、毒素を排出したり、身体の悪い部分を修復したり、免疫力を高めたり、まるで身体の中の小人のように、あらゆる生命維持活動に関わっています。しかしこの酵素も病気になったり歳を取ると、体内で作る力が弱まり、身体の活動に対し酵素を作るのが追いつかなくなります。病気になると少食になったり、消化しやすいものしか食べられないのは、体内で作る酵素を免疫力や自然治癒力の方に回そうとして、消化酵素が不足するからなのだそうです。だから体外から酵素が補給できれば、その分体内で作る仕事が軽減され、元気に活動できるというわけです。
 
 では酵素は何に含まれているかというと、生野菜や果物、生の肉や魚など、「新鮮な生の食べもの」と「発酵食品」です。これらには動・植物が生きるのに必要な酵素がいっぱい詰まっているのです。しかし酵素はタンパク質からできており、タンパク質は熱に弱く変質しやすいので、加熱した食べ物ばかりでは酵素は補給できません。だから毎朝の野菜・果物のジュースなどが、酵素を摂るのに非常に効果的と言えるのです。

ある酵素の活性変化
ところで右図はある酵素の活性変化を示しています。酵素の活性は温度と共に大きく上昇し、しかしある温度を過ぎるとタンパク質が壊れ、失活することが分かります。こうした酵素の性質を上手く利用したものに、「50℃洗い」というのがあるそうです。活性限界ギリギリの50℃ほどのお湯に、しおれた野菜を1~2分浸けて出しておくと、酵素の働きでみるみるシャキシャキした状態になり、美味しくなるそうです。私も一度試してみましたが、そのときは使用したレタスがまだ元気が良かったせいか、はっきりした違いは認められませんでした。今度、もっと萎れた野菜を使って実験してみようと思っています。こうした効果は魚や肉にもあるそうです。
 
 また、健康のためには身体は冷やさないように、常に温めるようにと言いますが、この図を見れば高体温の方が酵素の活性が高まり、病気に対する自然治癒力が増すことが分かります。特に「がん細胞」は低温を好むそうですから、運動、食事、お風呂などで体温を上げることは、がんを防ぐのに非常に効果的だと言えます。

 根菜を中心とした野菜のうまみを引き出すには、やはりこの酵素の働きをうまく利用するのがコツだそうです。野菜を水から煮立てると、お湯の温度が37~40℃の間に酵素が働き、野菜のでんぷん質を糖に変化させるので甘みがすごく出るそうです。こうした調理法は味噌汁を始め、多くの料理に利用できそうです。

滝野清;酵素と熱の関係、奈良からの便りNo.181、2016
南雲吉則;空腹が生き方を教えてくれる、サンマーク出版、2013


 
 
 

2016年7月18日月曜日

酸性体質

 私たちの体温は常に36度~37度、わずか1度の幅の中に維持されています。この温度幅をはずれると病気になります。血液のpH(ぺーハー)も弱アルカリ性の7.35~7.45という非常に狭い範囲に維持され、この範囲を外れると命の危険にさらされると言います。これは大きく変動する外部環境にさらされて生きるなか、私たちの身体が内部環境を常に生存に適した状態に保持しようとする働きによるもので、生体恒常性(ホメオスタシス)と呼ばれます。体液も7.2~7.3という弱アルカリ性に保持されていますが、生活習慣によりかなり酸性側に傾くといわれ、最近はこうした酸性体質の人が増えているそうです。

生体恒常性
食べ物は消化吸収される過程で、未消化のものや新陳代謝によってできる老廃物は糞尿や汗となって排せつされ、また、炭酸ガスとなって呼気として排せつされます。このとき体内にP(りん)、S(硫黄)、Cl(塩素)が多く残れば、これらは酸性イオンですから体液を酸性にします。特にP(りん)の影響が大きいそうです。一方、Ca(カルシウム)、Na(ナトリウム)、Mg(マグネシウム)、K(カリウム)が多いと、体液を弱アルカリ性にします。食品では肉、牛乳、魚、卵はP(りん)、S(硫黄)が多いので体液を酸性にしやすく、野菜、果物、海藻はK(カリウム)、Ca(カルシウム)、Mg(マグネシウム)が多いので、体液を弱アルカリにしやすいといわれます。
 体液は食べ物だけでなく、例えば肉体労働によってもエネルギーを消費するときに乳酸(疲労素)が作られ、これが体液を酸性にします。頭脳労働や騒音、悪臭といったストレス、不安とか心配事のストレスによっても、ATPという生体エネルギーが非常に多く消費され、それが体液を酸性化するといいます。たばこやアルコール、それにチョコレートやケーキなど砂糖の多い食べ物も体液を酸性化しますが、同時にビタミンBやCの異常消費、またCa(カルシウム)、Mg(マグネシウム)、Na(ナトリウム)などミネラルの溶脱を引き起こすことが知られています。

 体液がこのように酸性化して陰性になると、考え方が消極的で引っ込み思案となり、行動も鈍く、物事を悪いように悪いように考えるようになるといいます。逆に弱アルカリ性で陽性になると何事も積極的となり、行動も早く、物事の判断も良い方に、また善意に解釈するようになるそうです。病気に対する抵抗性も酸性になると体内にウィルスやバクテリアが増殖しやすくなり、糖尿病、肥満、がん、アレルギーなどの慢性病にかかりやすくなるといいます。
 こうした傾向を知ると極力アルカリ食品だけを食べ、あるいはそれを補うサプリメントを飲んだらよいと考えがちですが、身体は生体恒常性を保つため必死に体内バランスをとっているのであり、偏った食事、サプリメントの摂取はかえって身体に負担をかけ、歪を作ることが考えられます。やはり食事はバランスよく、できるだけ農薬、食品添加物などのないものを摂取し、その上で常にストレス解消を図ることが大切と言えそうです。

中嶋常允;土といのち、地湧社、1997

2016年7月7日木曜日

昭和のカレー味は?

 東京オリンピック(昭和39年)以降、日本人の食生活は大きく変わり、それに伴ってアレルギー性疾患・がん・生活習慣病などが急増したと考えられることから、青木伸代さん(丹後アレルギーを考える会代表)を再びゲストにお招きし、昭和40年ころの「カレーを作ってみよう」というちーたびを実施しました(7/3)
 
 青木さんとは事前に2度ほどレシピについて相談をしました。たまたま青木さんの家に「家庭料理全集」(昭和45年)という本があり、そこにカレーのレシピがあったことから、まずそれを参考に青木さんと我が家でそれぞれにカレーを作り、それを試食した後で再度レシピの相談をしました。そして肉は我が家でサバ缶を試したところおいしかったのと、当時牛肉はまだ庶民の手に届きづらかったと思われたことから、サバ缶を使ってみることにしました。また、野菜炒めの菜種油はいまは化学的に抽出されたものがほとんどなので、当時の低温圧搾に近いものとして、エキストラバージン・オリーブオイルを使うことにしました。そして青木さんの「味が少し物足りない」との意見から、ニンニクとしょうがを少し加えてみることにしました。

 当日は4人の参加者がありました。まず青木さんから「なぜ昭和40年ころの味なのか」ということで、「いまのカレールーは原材料名の最初に脂肪がくるほど脂っこい」、「当時は食べ物全般に脂質の量は少なかった」、「いまの食用油は化学的抽出法のものがほとんどで、身体によくない」などといったお話をして頂きました。そのあと若干アレンジを加えたカレーのレシピと、ニョッキ入りサラダの作り方の説明があり、早速、料理にかかりました。2歳の坊やを連れてきたお母さんがおられ、その坊やを片隅で私と家内がおもちゃで遊ばせながらの実習でしたが、少人数であり、ワイワイ楽しく調理作業は進められ、丁度お昼の音楽が鳴ると同時に料理を頂くことができました。

 料理はボリュームたっぷりで、食べきれるか心配しましたが、皆さんからは「非常にあっさりしていて、お腹にもたれない感じ」、「サバの味がよく合っておいしい」、「お母さんが作ってくれたツナ缶カレーを思い出した」などといった声が聞かれ、2歳の坊や(かぼちゃを使った特別メニューのカレー)親子を始め、ほとんどの方が完食されたのにはびっくりしました。
カレーライスとニョッキ入りサラダ

 食後は青木さん特製の米粉のカップケーキとコーヒーを頂きながら、交流会を持ちました。最初に私の方からスライドを使って、食事の内容は国民の生活レベルで大きく変わり、先進国になるほど脂質が増え、その分糖質が減るが砂糖が増え、タンパク質は植物性から動物性に変わる傾向にあり(下図)、それと共にビタミン・ミネラル・食物繊維は減る方向に向かう。カルシウムとりんは1対1で摂取するのが理想的といわれるが、肉はカルシウム:りん=1:15~40もあり、動物性たんぱく質が増えるとカルシウムはロスしやすい。食品添加物にもりんが多く、カルシウム摂取量の倍量も摂取する可能性があるので、注意が必要である。一方、野菜はりんが少なく、カルシウム含有量も牛乳より多いものが多く、カルシウム源としてもっと注目してよい。牛は草を食べて大量の牛乳を作り、象は立派な象牙を作っている。昭和40年頃の日本人の食事は経済力に比べると最貧国並みで、脂質、砂糖、動物性たんぱく質が非常に少なく、その分ビタミン・ミネラル・食物繊維は豊富であったと考えられる。因みにアメリカでは脂質、糖質、タンパク質、ビタミンより、ミネラルの重要性が注目されているなどを説明し、その後皆さんと意見交換しました。

世界における食事の内容と生活レベルとの関係

 皆さんの意見・感想をまとめると、「今日作ったカレーはシャバシャバでこってり感がなく、お腹に全然負担がかからない」、「脂肪が少ないため洗剤が無くてもお皿が洗える」、「今回は味付けにニンニク、しょうがを使ったが、当時はソースをよくかけた」などといったものでした。

 「昭和のカレー」を実際に作り、食べることで見えてきたことは、今のカレールーは脂肪がたっぷりで、濃い味付けがなされているということでした。それと具を炒める食用油にしても、ノルマルヘキサンという化学薬品を使って抽出したものや、遺伝子組み換え原料を使ったものが多く、テレビコマーシャルや値段につられ、知らず知らずの内に身体に負担をかける食事内容になっていることを教えられました。

2016年6月19日日曜日

昭和のカレーを作ってみよう

 日本の医療費は年々増加の一途にありますが、2014年度にはついに40兆円の大台を突破してしまいました。40兆円と聞いてもピンと来ないかも知れませんが、1万円札で積み上げると400km、富士山を106個積み上げた高さになりますから驚きです。その医療費の36%は75歳以上の後期高齢者によるものといわれ(一人当たり93万円)、2025年には団塊の世代がこの後期高齢者の仲間入りをすることを考えると、日本の社会保障制度の将来が本当に心配になります。

 
 新聞によると自民党の麻生副総理兼財務大臣が、「90歳になって老後が心配とか、わけの分かんないこと言っている人がこないだテレビに出てた。オイいつまで生きてるつもりだよと思いながら見てました」と例によって過激な発言をし、物議をかもしているそうです。麻生さんとしては高齢者層が抱える1,700兆円を超える個人資産をタンス預金として眠らせず、もっと消費にまわしてほしいとの思いからの発言でしょうが、高齢になれば一番の心配は「健康」、アベノミクスに乗って踊れるわけがありません。麻生さんも75歳の後期高齢者、自らの発言がそっくりそのまま自分に返されることを知るべきでしょう。


医療費の推移
日本の医療費は右図から明らかなように、東京オリンピックが開かれたころ(昭和39年)は1兆円にも届かないレベルでした。しかしオリンピックを契機に生活環境、特に食生活が急激に変化し、それと共に医療費が急速に増え始めたといわれます。肉・牛乳など食事の洋風化の他に、インスタントラーメンをはじめとする加工食品の普及が急速に進み、ビタミン・ミネラル・食物繊維の摂取が著しく不足するようになったのです。その挙句はこれらを補うサプリメントの大流行です。本来、楽しい食事から摂るべき栄養を薬で補うようになっているのです。

 「なにか変ですね」と前回のちーたびで講演をしていただいた青木さんにお話したところ、「いま昭和40年頃の食事のレシピを集めてみたいと考えていたところです」とおっしゃいます。「だったらぜひそのレシピを紹介してください」ということで、「昭和40年頃の味探訪シリーズ」のちーたびを計画することにしました。その第一弾として「まずはカレーを作ってみよう」を
  日  時;7月3日(日)、9:30~14:00
  場  所;吉津地区公民館(宮津市須津)
  参加費;1,200円
  定  員;8名
で実施します。昭和の味を思い出すと同時に、一緒に健康について考えてみませんか。奮ってのご参加をお待ちしています。

2016年6月5日日曜日

マイクロプラスチック

 先日のテレビで、東京湾で捕れたカタクチイワシの8割近くの内臓から、微細なプラスチック片が見つかったと報道していました。
マイクロプラスチック

 実はいまペットボトルやレジ袋など海に流れ出たプラスチック製品が、日光の紫外線に当たって劣化し、波と風により5ミリ以下に細かく砕かれて「マイクロプラスチック」となり、世界の海を汚しているのだそうです。特に日本の近海は中国、インドネシア、フィリピンなどの国から流れ出たごみが海流に乗って集まりやすく、マイクロプラスチックの濃度は世界平均の27倍にもなっているのだそうです。だから日本の近海の魚はエサと間違えて飲み込む頻度も多いと考えられますが、それにしても「8割」とは驚きです。東京湾の釣り人も「いつも天ぷらにして食べているのに」とびっくりしていました。
 
 今回、国内で初めて魚の体内からマイクロプラスチックを見つけた東京農工大の教授によると、プラスチックを人が食べても排出されるので直接的な影響はないそうです。しかし微細なプラスチックは有害な化学物質を吸着して最大100万倍にも濃縮する性質があり、実際にマイクロプラスチックを食べた海鳥の脂肪や肝臓から、食べた量に比例してPCBという、かつてカネミ油症事件を引き起こし、その後製造が禁止された有害物質が見つかっており、魚でも有害物質の汚染が心配されるのだそうです。
 
 これまで魚への化学的有害物質の汚染は食物連鎖によって起きるので、マグロのような大型の魚だけに注意すればよいと思っていました。例えば有害物質DDT(1971年に使用禁止)の場合、太平洋表層水の濃度は1キログラム当たり0.00014マイクログラムだそうです。しかしそれを取り込む動物プランクトンではその濃度は1.7マイクログラム(1万倍)になり、プランクトンを食べるイワシでは43マイクログラム(30万倍)、小魚を食べるイルカでは5,200マイクログラム(370万倍)になるといわれ、まあイワシくらいまでの小魚ならよいだろうと思っていました。それに食べ物は植物にしろ動物にしろ、「一物全体」を頂く方が栄養的バランスが取れており、魚は丸ごと食べられる小魚の方が健康的にもよいといわれるからです。しかし今回の東京農工大の調査では、その小魚ですら危ないことが分かってきました。人類は便利さ・快適さを追い求め過ぎた結果、自らの首を絞めつつあるように感じます。

2016年5月20日金曜日

グルテン不耐症

 イタリアのローマで開催されていたテニス「イタリア国際」準決勝で、錦織圭選手(6位)がジョコビッチ選手(1位)に6-2、4-6、6-7のフルセットの末、きん差で敗れました(5/14)。その1カ月ほど前にあったアメリカの「マイアミ大会」では、決勝でやはりジョコビッチ選手に当り、あっさり負けていただけに本当に残念でした。ジョコビッチといえば昨年の年間獲得ポイント数;16,585、獲得賞金;22百万ドルで、2位のマレー選手(獲得ポイント数;8,670、獲得賞金;8百万ドル)をダントツで引き離す選手であるだけに、本当に残念でした。ちなみに錦織選手は獲得ポイント数;4,235、獲得賞金;3百万ドルで8位でした。
 いまテニス界で圧倒的な強さを誇るジョコビッチ選手ですが、民族紛争の続く旧ユーゴスラビアから彗星のごとく現れた2006年のころは、試合中に不明の呼吸困難や腹痛に突然襲われ、試合放棄することが再々あったそうです。それでも何とかトップ10入りをし、2008年には全豪オープンで初のグランドスラム優勝を果たしたものの、翌年の同大会ではまたも棄権に追い込まれ、周りから散々たたかれたようです。翌々年(2010年1月)の同大会は周到に事前準備をし、順調に準々決勝まで勝ち進んだものの、またも試合中に呼吸困難になり敗退してしまったそうです。しかし非常に幸運だったのは、たまたまその試合を遠く離れたキプロスで、テレビで見かけた栄養学者(同じセルビア人)がいて、大方が「また例の喘息発作が起きた」と考えたのに対し、「これは食べ物が原因だ」と見抜いたというのです。
 二人はその後クロアチアであった大会時(7月)に会い、そのときその栄養学博士から簡単なテストを受けたそうです。博士はジョコビッチに左手を腹に当て右腕を横に真直ぐ伸ばさせ、その右腕を下に押したときの彼の腕の抵抗力をまず調べたそうです。次に一切れのパンを左手に持ってそれを同じように腹に当てさせ、真直ぐ伸ばした右腕を再度下に押したそうです。すると不思議なことに今度は力が抜け、博士の押す力に全く抵抗することができなかったといいます。以前ブログで紹介した京都市のある医師が行うO-リングテストに似ています。そして博士から「グルテン不耐症」であると診断されたそうです。
 グルテンとは小麦、ライ麦、大麦に含まれるたんぱく質で、これがパンの柔らかさを出す働きをするのですが、人によってはこのグルテンをうまく消化できず、結果として肉体が苛烈な反応を示すのだそうです。症状的には穏やかなものから深刻なものまで幅は広く、グルテン不耐症の人は5人に1人くらいいるそうです。しかし実際は気付かないだけでほとんどの人が、身体が重かったり、疲れたり、気弱になったりのグルテン反応を起こしているといわれ、「小麦は食べるな!」(日本文芸社)という本まで出版されているほどです。長年人類が食してきた小麦なのに一体なぜ?という疑問が沸きますが、実はそこには大きな問題があったのです。それは現在、とくにアメリカ、カナダで栽培されている小麦のほぼ100%は、1960年代の小麦とは似ても似つかぬ別物で、病気や日照りに強く、生産性を高めるために開発された遺伝子組み換えのもので、そのグルテンは自然界に存在するものとは構造的に異なり、小麦の含有たんぱく量はヒトの耐性限度を超えているのだそうです。改めて人間の開発したもの、あるいは技術力の脆弱さを知り、それを過信する恐ろしさを知る次第です。
 博士から「2週間でよいからパンを絶ちなさい」と言われたジョコビッチ選手ですが、最初はつらかったそうです。しかし日が進むにつれ体が軽くなり、活力が湧き、長年悩まされていた夜間の鼻詰まりが消え、1週目が終わるころにはパンが欲しくなくなったそうです。そして翌週に入ると毎日、最高の目覚めを迎えることができるようになったといいます。2週間経ったとき博士は、「これが本当のテストだ」といってベーグルを食べるように言ったそうです。すると再びグルテンを体内に取り込んだジョコビッチ選手は、まるで1晩中ウィスキーを飲んで二日酔いになったような状態になり、ベッドをはい出るのがやっとで、めまいを覚え、鼻詰まりも再発していたそうです。それを知った博士から、「グルテン不耐症の何よりの証拠だ」と告げられたといいます。
 それ以来ジョコビッチ選手は、食べ物に対する自分の身体の叫びを細心の注意を払って聞くようになり、絶対的強者である今日の身体を築き上げたといいます。

ジョコビッチの生まれ変わる食事;ノバク・ジョコビッチ、三五館、2015


2016年5月9日月曜日

加湿器事件

 韓国で加湿器の水に殺菌剤を混ぜて使用し、それが原因で妊産婦や新生児・その母親らが肺に損傷を受け、100人以上が死亡、1,500人以上の犠牲者が出ているとテレビが報道しています。韓国は湿度が低く加湿器が広く使用されているようですが、わが国でもエアコンを使うため加湿器はいまや決して珍しいものではなく、私たちも昨年亡くなった家内の母親のために加湿器を買い、枕元に置いてやっていただけに他人ごとには思えません。韓国の殺菌剤メーカーは「加湿器は掃除をしないと細菌が繁殖しやすく、細菌を吸う危険がある」といって殺菌剤を販売していたようですが、私たちも加湿器を買ったとき、「使用時はこれを水に混ぜるとよいです」と殺菌剤を勧められていたら、なんの疑問も抱かず殺菌剤を使っていたかもしれません。
殺菌剤メーカーの謝罪会見

 それにしてもいまの私たちの暮らしの中には、殺菌剤・抗菌剤といったものが溢れ、私たちも安易にそうした化学薬品に頼る生活をしているように感じます。「菌」というと一般的に悪いもの、汚いものといったイメージがあります。しかし私たちは莫大な数の菌と共生し、その力を借りて生きていることを知らねばなりません。最も多いのは腸内で100兆個以上もの細菌が存在し、他にも口腔内、皮膚表面などに棲息していて、皮膚には1兆個以上の菌が存在するといわれます。これら膨大な数の常在菌は善玉菌、悪玉菌、日和見菌などに分類されますが、それらが常にバランスよく存在することが、健康的に生きていく上でとても大切なのです。今回の韓国の例は異常ですが、いくら殺菌剤・抗菌剤の使用量が安全な許容範囲内であったとしても、それらを使うことは常在菌の棲息バランスを乱すことは間違いなく、安易にそうした化学薬品を用いることには注意が必要といえます。生ごみの発酵処理をしていると、抗菌剤・防腐剤などが多く入った食品は明らかに分解が遅く、微生物に大きな影響を及ぼしていることがよく分かります。

 こうした化学薬品に接すると、私たちの体内には「活性酸素」が発生することも知っておく必要があります。過剰な活性酸素は身体を体内からサビつかせ、ガン・生活習慣病・認知症などの誘因になるといわれるからです。私たちはよく布団を消毒を兼ねて太陽に当て乾燥させますが、これは布団の中の悪玉菌が太陽の紫外線を浴びると、体内に活性酸素が発生し自滅するからです。活性酸素の威力はこれほどに大きいのです。安易に殺菌剤・抗菌剤に頼ることは自らを滅ぼすことにもつながりかねません。

2016年4月25日月曜日

2015年度のまとめ

1.ソーシャル・ビジネスプログラム
  昨年度も京都府の支援を受け、生ごみ処理機「たいぞう君」を2台増やして全部で8台にし、月に700kgほどの生ごみを処理できるようにしました。これで野菜生産者を8人に増やしても、たい肥不足の問題は起きなくなりました。しかし野菜の販売額は週1回の訪問販売だけでしたが、765千円と目標の882千円に届きませんでした。シカやカラスによる被害も大きかったですが、出荷野菜の重複やタイミングの問題、また、小学校や施設、旅館などから注文を受けても、量的に、あるいはサイズを揃えるような問題で、まだ対応できないことがありました。
野菜販売額の推移

 一方、ちーたびは5回実施しました。同じ内容では人集めが難しいので毎回テーマを変えましたが、それがかなりの苦労で、しかも1~3月は端境期のため、「エコの環」野菜の確保にも随分と苦労しました。しかしお蔭で延べ44名の参加者を集めることができ、毎回、「野菜が甘くておいしい」と言って頂きました。その理由を考えるなかで、いまの野菜は40~50年前のものに比べ、ビタミン・ミネラル量が数分の1~10分の1に減っており(日本食品標準成分表)、それは土壌中のミネラル不足によるといわれますが、「エコの環」野菜はビタミン・ミネラルがいっぱい詰まった生ごみを発酵肥料にして使っており、栄養価の高いのは理屈であり、それがそうした評価につながるのだろうと確信するに至りました。また、発酵材として使うゼオライトは土壌微生物が非常に繁殖しやすい粘土で、畑に施用すると土を若返らせる効果があり、それも「エコの環」野菜の美味しさにつながっていると考えています。

2.その他の活動
  昨年度は私たちの活動を知ってもらうため、地元の府立海洋高校に説明に出かけたり、環境イベントに出展したり、いろんな発表会に参加したり、広報活動に努めました。
  海洋高校ではその後、ヒトデのたい肥化に天然ゼオライトを使ったり、各種イベントでへどろからの人工ゼオライトの合成や、へどろヒートポンプ(水蒸気を使った熱の汲出しポンプ)を取り上げてもらっています。その成果は早速現れ、ある地元業者がヒートポンプに関心を持たれ、私も相談を受けたことから、「養殖魚の生けすの水温低下」にへどろヒートポンプが利用できないか、いまその業者と一緒に実験を進めています。業者によると出入りしておられる水産試験場では、真夏になると養殖魚の生けすの水温が上昇し、大量の魚が死んでしまうのだそうです。同様の問題は海洋高校にもあり、やはり悩んでおられるようです。これまでやってきた基礎実験から、へどろヒートポンプに問題解決の可能性があることは分かっていますが、未だ行われたことのない未知の実験であり、稼働装置を作るまでにはいろいろ困難があると思いますが、まずは夢に向かって一歩踏み出せたように考えています。

業者が作った装置

2016年4月7日木曜日

ちーたび(アレルギーの勉強会)

 丹後アレルギーを考える会代表の青木伸代さんを講師にお招きし、「アレルギーから学ぶ食生活」と題したちーたびを実施しました(3/26)。参加者は8名でした。まず最初に1時間ほどアレルギーについてお話をして頂きました。
アレルギーの勉強会
青木さんはいまから30年ほど前、子供さんがアトピーであったことから、同じ悩みを持つ親ごさんたちと交流するなか、「ほしいもの会」(丹後アレルギーを考える会)を立ち上げられました。当時はお医者さんにとってもアトピーは珍しい病気で、処置法がほとんど分かっていないころで、まさに泥沼の中をはい回る状態から、「食事療法」にたどり着いたと言います。1960年代の高度成長期、日本の食生活は大きく変わり、その激変に消化吸収という身体の仕組みがついていけず悲鳴を上げている、アレルギーをそのように感じるそうです。また、アレルギーに対応した生活をする中、本来「食べ物」でないものが「食べ物」の顔をして入っていたり(食品添加物)、本来「こやし」とはいえない化学肥料、農薬で食料が作られたり、住宅がシックハウス症候群を招いたりと、いまは身の回りに様々な化学物質が氾濫し、それに汚染され、そのうえ電磁波や放射線に曝され、「衣食住」のすべてに危険が潜んでいることを知ったと言います。「食べることは生きること、生き方そのもの」という青木さんの結論は、苦しみの中から実践的に学ばれたことだけにとても味わい深く、感銘を受けました。
 
作った料理
この後、主菜(里芋コロッケもどき)、副菜1(白菜の豚肉巻きの蒸し煮)、副菜2(グリーンサラダ)、スープ(野菜とベーコンのスープ)、デザート(米粉の蒸しケーキ、さつまいものリンゴ煮)などの洋風料理の実習をしました。アトピー対策の料理に肉を使ってよいのかと思いましたが、牛乳(牛)、卵(トリ)のくくりに入らない豚肉は許されるようです。作った料理は量が多く、食べきれないのではと心配しましたが、食材の味を活かした塩・コショウだけの薄味のせいか、ほとんどの方が完食されました。感心したのは青木さんの食事のペースです。私も食事はよく噛む方でゆっくりなのですが、はるかにゆっくり食べられ、大切なことを教えられた気がしました。
 昼食後の交流タイムでは、私からもアレルギーについて簡単な説明を致しました。いま分かっているアレルギーの大まかなメカニズムと、しかしそれだけでは説明しきれない別の要因として、現代人の「体質の虚弱化」があるのではないか。それはガン・生活習慣病の急増にもつながるもので、現代人のビタミン・ミネラル・食物繊維不足と、食品添加物・農薬・排気ガス・電磁波・紫外線・ストレスなどで起きる、体内での活性酸素の大量発生が原因とされる。前者は食事の洋風化、加工食品化によりもたらされたもので、後者は便利で快適な生活からもたらされたものである。この虚弱体質を直すには野菜を多く食べることである。野菜にはビタミン・ミネラル・食物繊維が豊富で、しかも最近注目されるようになった第7の栄養素フィトケミカルには抗酸化作用があり、活性酸素を消してくれるからである。私が準備した話は、図らずも青木さんのお話とほとんど重なっていました。
 この後、青木さんを挟んで参加者に質問や感想を述べてもらいました。高1の参加者から「クラスにアレルギー過敏症の子がいたが、あまり気にかけてこなかった。しかしいまの自分たちの周りには危険がいっぱいあることを学んだ。一気に生活を変えることはできないが、できることから変えていきたい」と感想が述べられ、参加者全員から拍手が起きました。
 いま私たちは「エコの環」野菜で地域の健康づくりを目指していますが、青木さんがたどり着かれた「野菜たっぷりの食生活」は、まさにアメリカで行われている「5 a Day」運動や、厚労省が奨励する「1日350g以上の野菜の摂取」に通じるもので、非常に強く背中を押された気がしました。

2016年3月19日土曜日

「エコの環」の発表

 ここ1ヵ月弱の間に京都府庁(2/27)、大阪合同庁舎(3/14)、野田川町の知遊館(3/16)の3か所で、「エコの環」について発表する機会がありました。
 京都府庁での発表は、「公共人材」の応募で選ばれた13団体の発表会に参加したものです。大阪合同庁舎の方は、「関西元気な地域づくり発表会」に選ばれた20団体の一つとして参加したものです。後者は最初、全く応募する気持ちはなかったのですが、国交省近畿地方整備局から誘いがあり、参加した次第です。この辺の事情を説明すると昨年11月、国交省近畿地方整備局が募集する「ゆめづくりまちづくり賞」に「エコの環」を応募しました。すると係官2名が運転手付きの車でやって来て、非常に詳しく内容を聞いていきました。そこでかなり期待していたのですが、結果は落選でした。その後、整備局から前述の発表会がある旨の連絡を受けていたのですが、放置しておいたところ前述の係官の一人から、「できたら参加してほしい」との電話があり、やむなく重い腰を上げて大阪まで出かけて行ったというワケです。
知遊館での発表
両発表会では改めて「エコの環」の説明の難しさを感じました。まず、阿蘇海のへどろ→人工ゼオライト→生ごみの発酵→野菜の栽培→野菜の販売・加工というストーリーは、説明するには長すぎます。しかもゼオライトや生ごみを利用するのも、高齢者が関わり健康づくりに役立てようとするのも、それぞれ絶対に欠かせない理由があります。ゼオライトは発酵を促進しやすいからであり、しかも畑に入れると雨・風による肥料の流失を防ぎ、土壌微生物いっぱいの生きた土を作り、無農薬栽培を可能にするからです。生ごみを利用するのは環境にやさしいからだけでなく、生ごみにはカルシウム、マグネシウム、鉄、マンガン、亜鉛といったミネラルがいっぱい詰まっており、それが甘くておいしい栄養たっぷりの野菜を作るからです。高齢者が活動に関わるのも、あと数年もすると日本経済は高齢者問題で破たんしかねないからです。どこかの中学校の校長先生が、「女性は2人以上の子供を産むことが何よりも大切」と生徒に話しバッシングされていますが、校長先生も高齢者問題を別の面から深刻に考えているからだと思います。健康問題にしても医療費増大の現状は危機的状況にあり、その根本原因に現代人のミネラル不足が考えられるからです。しかしただでさえ長い話にこうした理由を加え、それを「へどろ」も「ゼオライト」も分からない聴講者に、5分とか8分といった限られた時間で説明しようとすると、頭を混乱させかねないのです。そこで極力、高齢者による野菜づくり・健康づくりという単純な話にして発表したのですが、それでも審査委員長から、「ゼオライトと高齢者とどういう関係があるのですか」といった的外れの質問を受ける有様で、やはりこうした不特定多数の人の前の発表では、「子供を相手にこうした活動をやっています」とか、「自治会の活性化にこうした行事を始めました」といった単純明快な活動で、あとは人の集まった写真を次から次へと見せる方が理解されやすいことを痛感しました。つまりイベントで盛り上がる活動は評価されやすいが、イベント性のない活動はどんなに内容に意味があっても評価されないのです。
京都新聞の記事
最後の知遊館での地域力再生事業に関わる10団体の発表会では、こうした反省を踏まえスライドにちーたびの写真を加えました。そうすると活動が積極的に行われている雰囲気がよく出て、なるほどと納得した次第です。意見交換会では聴講者から、「助成金が切れた後の活動をどうするのか」という厳しい質問が出ました。司会者からブルーシー阿蘇が指名され、「助成金を活用して自立を目指している」と答えましたが、他の2団体は「助成金が無いと活動は厳しい」と答えていました。最後に主催者の講評があり、そこでいきなりブルーシー阿蘇が取り上げられ、「目指すべき画がしっかりできていて、それに向かって着実に活動されている」と高く評価してもらいました。講評者は「へどろ」も「ゼオライト」もある程度分かる地元の方なので、その分こちらの説明が理解しやすかったのかも知れません。いずれにしても褒められたのは初めてのことなので、とてもうれしく思いました。翌日の京都新聞の記事でも、ブルーシー阿蘇の活動が大きく取り上げてもらえました。



 



2016年3月6日日曜日

共生

 先日テレビで、山梨かどこかのある町にイノシシの大群が住み着き、コメをはじめあらゆる農作物を食い荒らすため、全く農業ができないと報道していました。そうかと思うと昨日はまた、神奈川県のある街にサルが出没し、農作物を全部食い荒らすため、市がエアガンを貸し出してサルの追い払い作戦に乗り出したという報道がありました。
私も数年前、生ごみ発酵肥料でコメを育てようと、ある人に栽培をお願いしていたところ、見事にイノシシに襲われ全滅した苦い経験があります。畑でもこれまで何度かシカに襲われ、その都度トタンやネットをかさ上げして対応してきましたが、昨年秋にまたシカに見事なまでに食い荒らされ、無力感を感じるほどのくやしさを味わっただけに、農家の方たちの苦しみがよく理解できます。
 ところで環境問題を論じるとき、よく「共生」という言葉が使われます。つまり自然界では生物の多様性が重要で、多くの生物が共生することで豊かで美しい自然が守られるという考えです。たとえば海の場合、海には山からの土砂や人間社会からの生活排水などが流れ込み、海を汚します。しかしその汚れは海に生息する微生物(プランクトン)が食べて分解し、そのプランクトンを小魚や浜辺の貝やカニなどが食べ、その小魚を大きな魚が食べ、その大きな魚や貝を人間が食べることで海の汚れは除去され、その美しさが保たれています。だから阿蘇海のように護岸を作って砂浜を無くしてしまうと、貝やカニの生息場所が無くなり、生物の多様性が損なわれ、食物連鎖が断ち切られるため海は汚れ、魚も住めなくなってしまうのです。つまり自然の美しさを守るには多くの生き物が共生する必要があるのですが、ただそこにはお互いに「食うか食われるか」のすさまじい戦い(拮抗)があって、ギリギリ共生しているのであって、決して仲良く共生しているわけではないのです。
 私の近所では散歩でちょっと山道に入るとシカやイノシシに遭遇することがあります。もちろんすぐに引き返しますが、このようにイノシシ、サル、シカなどが私たちの住むすぐ近くまで増えてきた理由には、やはり人口の減少が大きいと考えられます。神奈川県の場合でも兼業農家が多く、日中は人、特に男性の姿がないため、そこをサルに狙われたようです。だからサルを徹底的に駆除するのは間違ってはいないと思うのですが、ただ、エアガンによる威嚇だけで果たして賢いサルを駆除できるのか、テレビでは高齢の婦人たちが市役所の人に教えられ、エアガンの試射をしていましたが、それではかえってサルになめられ、逆に襲われたりすることはないのか、非常に心配に思われました。人間の数が減り、そこを自然界の動物に攻め込まれた感じですが、そうした拮抗のない、一方的な状況下での共生の難しさをつくづく思い知らされた感じです。

2016年2月23日火曜日

アレルギー

 いま日本人の3人に1人は「花粉症」、「アレルギー性鼻炎」、「アトピー性皮膚炎」などのアレルギーを持っているそうです。ただその発症メカニズムはよく分かっておらず、環境や生活習慣によって免疫システムのバランスが崩れるとアレルギーを発症するらしく、「免疫バランス」を整えることがポイントのようです。その免疫バランスを整えるのにある種の乳酸菌がよいということで、最近ヨーグルトの宣伝がよく行われたりしています。
ちーたびのチラシ
ある本*で読んだのですが、アトピー性皮膚炎に悩む赤ちゃんの40%の便には、大腸菌が全く見つからなかったそうです。赤ちゃんや小さい子供はすぐにアチコチをなめたりしますが、それは腸内に大腸菌を取り込もうとしているのであり、そのときに「バッチイ」といってそうした行為をさせないと、免疫力が付かないのだそうです。パンダは生まれるとすぐに周りの土や母親のウンチをなめるそうですが、それによってササを消化する酵素が腸に取り込まれるのだそうです。私たちの腸には500種類以上の腸内細菌が100兆個以上生息するといわれますが、すべてが善玉菌であってもだめで、善玉菌:悪玉菌:日和見菌=2:1:7くらいのバランスが一番よく、悪玉菌の存在も必要なのです。つまり腸内細菌の上記バランスが免疫バランスのカギを握っているのであり、その意味で整腸に効果のあるヨーグルトが免疫バランスを整えるのによいのかもしれません。いずれにしてもいま私たちの住む便利で清潔で快適な文明社会は、一方で消毒、抗菌、密閉が過度に進み、私たちの身の回りで私たちを守ってくれる「常在菌」をすっかり排除してしまい、それが腸内細菌の構成バランスを悪くし、アトピーなどのアレルギー疾患を引き起こす原因になっているのかもしれません。先ほどの本によると、インドネシアのカリマンタン島の子供たちはウンチの流れる川で遊び、全員が回虫をお腹にもっているそうですが、アトピーやぜん息、花粉症などに苦しむ子供はなく、そうした生活環境が自然と腸内細菌の構成バランスを良くし、免疫バランスをうまく整えているのかもしれません。私たちが子供のころは「検便」といって回虫検査をよくさせられましたが、当時は花粉症とかアトピー性皮膚炎といった話はほとんど聞いたことがなく、あまりに清潔に過ごすのも問題といえます。
 ところで現代社会にはもう一つ大きな問題があります。私たちは常に食品添加物や残留農薬の多い食品、飲み薬、排気ガスやたばこの煙、仕事・人間関係の大きなストレス、電化製品からの電磁波、紫外線や放射線などに曝され、それが体内で活性酸素を多量に発生させ、腸内細菌のバランスを崩す大きな原因になっているのです。住みよい快適な生活が却って住みづらい生活にしてしまっているのであり、ほどほどに不便を楽しむ生活がよいのかもしれません。
 さて来月の3/26(土)、9:30~14:00に、青木伸代氏(丹後アレルギーを考える会代表)を講師にお招きして、ちーたび「アレルギーから学ぶ食生活」を開催します。場所;吉津地区公民館、参加費;1,200円、定員;10名です。参加をお待ちしています。

* 藤田紘一郎:脳はバカ、腸はかしこい、三五館(2013)


2016年2月5日金曜日

ちーたび(お寺とのコラボ)

 「「エコの環」野菜の精進料理を頂き ”命”について考える」という少々固めのちーたびを募集したところ、18名の参加希望者があり、先週の土曜日に江西寺(宮津市須津)と海蔵寺(伊根町平田)の二寺で実施しました。前の週は全国的に強烈な寒波が襲い、沖縄にも雪が降り、どうなることかと心配しましたが、当日は前日からの雨が少し残る程度で寒さも大分ゆるみ、正直ホッとしました。

 江西寺ではまず、ゼオライトと回転可能な箱を使う私たちの生ごみ発酵処理法(宮津方式)について紹介しました。本当は江西寺の横にある「たい肥小屋」へ案内し、現地で説明したかったのですが、足元が悪いうえに寒く、全員を案内するのは難しい考え、模型を使っての説明だけにしました。
尾関住職の法話

 続いて全員で「般若心経」を読経した後、江西寺の尾関住職より「命」についての法話がありました。
 命は自分の力ではどうにもならないもので、生きとし生けるものはすべて「無常」である。仏教は108の「煩悩」を取り除く教えで、一日一日が修行であり、その修行によりあらゆる苦悩・困難を乗り越えようと考える。「輪廻」とは、前世があっていまの自分があり、いまの自分が来世の自分になるという考えで、自分はへびが嫌いだから前世はカエルだったかもしれない、といった話をされました。

風竹図屏風の拝観
次に江西寺所蔵の与謝蕪村の「風竹図屏風」の拝観・説明に移りました。蕪村がまだ修業時代に当地に立ち寄った際に描いたもので、風にそよぐ竹の葉っぱの音が聞こえる感じがすると説明されました。

 そのあと全員が車で約40分の海蔵寺に場所を移し、まず私がスライドを使って、「エコの環」事業とそこから感じる「命」についてお話ししました。
 この自然界ではあらゆる生き物は命を失うが、その命は土壌微生物によって「生きた土」に変えられ、それが新たな生き物を生む「肥し」になる。見事なまでの「命のリレー」(完全なサイクル)が行われている。手塚治虫の作品に「ブッダ」(全8巻)という長編漫画があるが、その中で、この地上のあらゆる生き物は死ぬと「命のかけら」となり、やがてお互いがくっつき合って混然一体となり、宇宙という大きな球体に吸い込まれていく。同時にその宇宙からは無数の命のかけらが飛び出し、この地上に降り注いでありとあらゆるものに命を吹き込むところが描かれている。これは仏教でいう「輪廻転生」であり、あらゆる動物・植物の命はつながっていることを表現している。食事は動植物の「命」を頂く行為であり、感謝して食べる必要がある。生ごみをたい肥にして野菜を育て販売する「エコの環」は、自然の摂理に適っている、といったことをお話ししました。
精進料理の会食

 その後、海蔵寺の天野住職が作られた精進料理を、住職の説明を聞きながら全員で頂きました。料理は9品からなり、そのうちの8品に大根、かぶ、さつまいも、里芋、ニンジン、ごぼう、菜花、白菜、ブロッコリーなど、11種類の「エコの環」野菜を使って頂きました。通常より野菜のうまみを生かす味付けにしたというお話でしたが、しいたけ、コンブでしっかり取ったダシの味付けに、「おいしい」という声が一斉に上がりました。また、「野菜が甘い」といった声もあちこちから聞かれました。住職によると精進料理というと減塩料理と勘違いされる方もいるが、ダシをしっかり取り、塩分も控え目ということはないとのことでした。精進料理では避けるべき食材に動物性食材と、五軍と呼ばれるネギ属の野菜(ネギ、ラッキョウ、ニンニク、玉ねぎ、ニラ)があり、それらは使っていない。しかしそれでは一般の人には物足りないので、大豆で作った「鶏肉もどき」が一品入っているとの説明でした。

 精進料理を頂いた後に交流会を行いました。一人一人に感想を述べて頂きましたが、みなさん普段はあまりお寺とは縁がなく、法話を聞いたり精進料理を頂くといった体験が少ないようで、「気持ちがとても新鮮になった」とか、「日々感謝して生きる大切さを教わった」といった意見が多く出ました。また、普段は胸やけがして多く食べられないという人も、糖尿病で食事制限をしているという人も、今回の精進料理はとてもおいしかったそうで、どちらの人も食材と食材の味を生かした味付けの大切さを述べておられました。私たちの「エコの環」活動については、「非常に理に適った活動で面白い」、「たい肥作りに非常に関心がある」、「多くの人にもっと活動が伝わってほしい」、「野菜が非常に甘くておいしい」といった意見が出され、とても心強く感じました。
 
 参加者の多くから好意的な意見をお聞きし、とても意を強くすると同時に、充実した気持ちでちーたびを現地で散会しました。

2016年1月22日金曜日

小学生への環境学習

 地元の吉津小学校から5年生(19名)の環境学習として、ブルーシー阿蘇が取り組んでいる「生ごみのたい肥化」について学ばせたい、と相談がありました。打ち合わせをする中で、まず事前に小学校で活動内容について話をし、後日、現場を見てもらうことにしました。
小学校での学習風景

 小学校ではスライドを使って家内がゆっくり、話をかみ砕きながら説明しました。内容としては、この自然界には「サイクル(循環)」という仕組みがしっかりできていて、動物にしろ植物にしろ、死ぬと土壌微生物が食べて分解し、生きた土に変わる。そしてそれを「肥やし」にまた新たな動物・植物が生まれ成長するので、「ごみ」が発生しない。しかし人間社会にはそうした仕組みがないので、電化製品にしろ自転車にしろ古くなるとごみとなり、それが大量に発生して捨て場所に困るようになった。そこで自然界に倣ってサイクルさせようと「リサイクル」が始まったが、例えばペットボトルにしても、人間の力(技術力・経済力)では元のペットボトルに戻すのは非常に難しく、背広や作業服、卵入れパック、風呂敷、バスケットなどに作り直すのが精いっぱいで、結局最後はごみになってしまう。つまりサイクルになっていない。だから人間社会の仕組みにも自然の力をできるだけ取り入れ、サイクルさせるようにするのが好ましい。生ごみにしてもいまは焼却処理しているが、そうすると空気や土を汚す危険なもの(ごみ)が発生する。しかし自然の力(土壌微生物)を使えば元の元気な野菜に生まれ変わり、ごみは発生しない。ブルーシー阿蘇が取り組む「エコの環」とは、「環境にやさしい(エコ)サイクル(環)」という意味です、といったことをお話しました。最初は果たして分かってもらえるか、ざわついた授業にならないか心配しましたが、みなさん真剣に前を向いて話を聞き、熱心にメモを取ってくれたのでホッとしました。
ゆで卵の白身

 見学会では当日の朝、「小学校からもらってきた生ごみ」と、ある料理屋さんからもらってきた「ゆで卵の白身」を見てもらいました。小学校の生ごみを見たときは、「これ昨日食べた献立の皮や」、「これはあの切れ端や」などとワイワイ中身を当てあっていました。ゆで卵の白身を見たときは、「これ食べられるゾ」、「食べたいワ」などと叫んでいました。「これをごみとして燃やした方がいいか、肥料にして野菜を作った方がいいか」と聞くと、もちろん全員「野菜にした方がいい」と答えてくれました。次にできたたい肥を見せると、ごみとは全く違う土の姿にみな「ヘー」とびっくりしていました。そのあとでいろいろ作った野菜を見てもらいました。普段あまり見かけない「金かぶ」とか「黒大根」などに歓声が上がりましたが、その声を聞きながら、生ごみから姿を変えた新鮮な野菜に、「自然の恵み」のような何かを感じてほしいと真剣に思いました。

 4~5日経ったとき、5年生担任の先生が生徒たちの感想文をきれいな表にまとめ、届けてくれました。思いがけない贈り物にびっくりすると同時に感激しました。ひとつひとつの感想文を読むと、思っていた以上にみなさん話の内容をよく理解してくれていて、とてもうれしく、大切に部屋の壁に飾っておこうと思っています。
小学生の感想文集

 

2016年1月14日木曜日

新年を迎えての抱負

 あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

 今年の当地は珍しく正月3が日が好天続きで、気持ちの良い新年を迎えることができました。今年はこの天気のようにすがすがしい1年であってほしいと願っています。


来年度予算案
さて昨年の末、来年度(2016年度)予算案が閣議決定されました(右図)。総額96.7兆円と過去最大規模になるそうです。このなかで気になるのが「社会保障費」(年金・医療・介護・福祉費など)です。高齢化と連動し、いまや財政ひっ迫の大きな原因になっているからです。高齢化の進むなか、今年度より0.4兆円増え32.0兆円と、歳出の実に1/3を占めています。医療費抑制のため、診療報酬の切り下げが断行されましたが、焼け石に水です。国債の利払い・償還に充てられる借金返済用の「国債費」も、今年度より0.2兆円増え23.6兆円となり、社会保障費と国債費だけで55.6兆円と歳出の6割近くを占め、税収の57.6兆円をほとんど使い切っています。消費税を8%に引き上げ、また、円安で好調な企業業績により税収が3兆円余り増えても、国の財政は新たな国債に頼らない限り、何もできない状態にあります。しかもあと10年もすると団塊の世代が後期高齢者の仲間入りをし、介護の爆発が起きると懸念されています。果たしてこの先、国の財政はいったいどうなるのか心配されます。しかしこうした状況を打破し、次世代への負担を軽減できるのは結局、高齢者自身です。努めて健康に留意し、少しでも社会に貢献すべく努めることは高齢者の責任でもあります。私たちも「エコの環」事業により高齢者、そして地域の健康づくりのため、頑張っていきたいと考えます。

水温の低下実験
やはり昨年末、京都議定書(COP3)に代わる温暖化対策の新たなルールが、フランスのパリで196の国と地域の全会一致により採択されました(COP21;パリ協定)。京都議定書ではアメリカが離脱するなか、先進国にのみ温室効果ガスの削減義務が背負わされましたが、パリ協定では全参加国・地域が削減義務を負うことになりました。当初、果たしてうまくまとまるか心配されましたが、温暖化はもはや世界共通の課題になったと言えます。そして産業革命前からの気温上昇を「2℃よりかなり低く抑える」と共に、「1.5℃未満に抑えるよう努力する」という文言が盛り込まれました。一見、2℃とか1.5℃は小さな数値に見えますが、いまの地球の平均気温は産業革命前に比べ0.85℃上昇したに過ぎず、最近、世界中で起きている温暖化が原因とされる異常気象を考えると、1.5℃なら0.65℃、2℃なら1.15℃、さらに気温上昇を許すことになるわけですから、1.5℃でも決して小さな数値目標とは言えないのです。しかもこれは平均気温ですから、日本の気温に直せば数倍の大きさになるといえます。また、いったん気温の上昇を許すと、後で温暖化ガスの発生をゼロに抑え込んでも、なかなか気温の低下に結びつかなくなると言われるだけに、一刻も早い取り組みが望まれます。
 ところで前回のブログで、へどろヒートポンプを使って「養殖魚生けすの水温低下実験」を始めたとお伝えしました。へどろのすぐれた吸湿/放湿特性を利用すると、電力(化石燃料)に頼らない蒸気吸着式の優れたヒートポンプが造れるのです。何とか今年中に実用化への目途をつけ、それを真夏に高温となる家屋の屋根、壁の温度低下につなげていきたいと考えます。